【社説・11.02】:自民と国民民主の協議 政治改革置き去り許されぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.02】:自民と国民民主の協議 政治改革置き去り許されぬ
衆院選で示された民意は、「政治とカネ」の問題に向き合わない自公政権への不信任であり、求めたのはまっとうな政治改革だ。置き去りにするなら許されない。
自民党と国民民主党は、公明党を含めた3党で政策協議を始めると合意した。今月中にまとめる物価高での経済対策や2024年度補正予算案、25年度予算案の編成や税制改正を念頭に置く。連立ではなく、政策ごとに連携する「部分連合」を探る。
自民党の狙いは言うまでもなく政権維持にある。過半数を割り込んだ少数与党では、予算案や法案の成立もままならない。まずは11日に召集見込みの特別国会での首相指名選挙で、石破茂首相の続投を決めたい考えだ。政策が比較的近い国民民主党を取り込むことで、立憲民主党の目指す野党連携にくさびを打ち、多数派を維持する道を描く。
なりふり構わぬ数合わせに陥ってはいないか。政権維持を望むなら、最優先で取り組むべきは政治改革のはずだ。派閥裏金事件があっても、抜け穴を残した政治資金規正法の改正にとどまっている。野党第1党の立憲民主党を含めた与野党協議を速やかに進めるべきだろう。「手取りを増やす」とした経済対策を衆院選公約の旗印に掲げた国民民主党に対し、先行して声をかけた手法に思惑が透ける。
政治改革について、石破首相は政策活動費の廃止や、政治資金を監査する第三者機関の設置、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開を速やかに実現したいと述べてはいる。だが、議席を大幅に伸ばした立憲民主党などが訴えた企業・団体献金の禁止は、取り上げる様子が見えない。国民民主党は自民党の考え方に近い。両党の協議で抜本的な政治改革を示せるか、疑問だ。
しかも、自民党は派閥裏金事件に関わった非公認や無所属の当選組を含む6人に、衆院の自民会派に入るよう要請した。衆院選をみそぎに使ったわけで、改革の本気度が疑われる。
そうした自公政権を補完する役割を、国民民主党が担うことにならないか。党を支持した有権者の多くが、政治改革をしないままで自公政権の維持を望んだとは思えない。
国民民主党が公約で示した政策の実現を目指すのは理解できる。しかし、国民からの信頼という土台を築き直すのが先だ。「信なくば立たず」なのは岸田文雄前首相の退陣で思い知ったばかりだろう。「信」のない政権に協力したところで、求めた政策を実行できるだろうか。
玉木雄一郎代表が自民党に真っ先に求めた政策は、長年の政治課題である「年収の壁」対策だ。減税として、年収が103万円を超えると所得税が発生する壁を178万円に引き上げるべきだと訴える。主張通りなら7兆~8兆円程度の減収が見込まれ、国民生活も左右する。3党だけで結論を出す議題ではない。
自民、国民民主の両党とも民意より党利を優先するようでは、国民からさらなる政治不信を招くと自覚すべきだ。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月02日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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