【社説①・12.27】:世界選挙イヤー 分断の拡大 与党に逆風
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.27】:世界選挙イヤー 分断の拡大 与党に逆風
今年は世界中で重要な選挙が相次ぐ「選挙イヤー」だった。
世界人口約80億人の半数近くが住む90以上の国と地域で行われ、史上最大とされた。
最も注目された米大統領選は現職が推した候補が敗れ、トランプ前大統領の返り咲きが決まった。英国では与党が大敗して政権交代が起きた。
日本はじめフランスや韓国は少数与党となりインドや台湾も与党が大幅に議席を減らした。
総じて政権与党に逆風が吹き、厳しい結果になったところが目立ったと言える。
一方で極端な主張やポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策を掲げる新興政党が躍進した。自国第一主義も拡大している。
助長しているのが交流サイト(SNS)の積極的な活用で、偽情報の拡散も問題になった。
経済格差や移民問題を背景に、各国で分断が進んで政治的な意見が真っ二つに割れる分極化が深刻になっている。
このままでは民主主義が土台から崩れかねない。分断や格差の解決策を探り、真剣に取り組むことが急務である。
各国で与党が苦戦したのは、暮らしを直撃している物価高の影響が大きい。
コロナ禍で物流が滞った上、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻で石油や天然ガスの輸出が制限され、エネルギー危機が深刻化した。黒海経由での穀物輸出も滞り、食料価格が高騰した。
ウクライナへの「支援疲れ」が与党に逆風となり、自国第一主義を勢いづかせた形だ。
中東の戦火も、世界経済の不安定要因となっている。各国の市民生活を安定させるためにも戦闘の終結を急ぐ必要がある。
新興政党の伸長は、既成政党に対する不信感のあらわれにほかならない。極端な主張が不満の受け皿になっている。
懸念されるのは、こうした新興政党が排外主義やナショナリズムをあおっていることだ。分断の解消策と共に、対立を激化させぬよう粘り強く説得していくほかあるまい。
選挙とSNSを巡っては先月行われた東欧ルーマニアの大統領選が世界の注目を集めた。
泡沫(ほうまつ)と目された親ロシア派の極右候補がSNSを駆使して第1回投票で首位に立ったが、ロシアによる選挙介入の疑いが浮上し、やり直しが決まった。
ロシアなどの介入疑惑は以前から欧米の選挙で問題となってきた。民主国家の根幹である選挙が公正なルールの下で事実に基づいて論争できるよう、日本も含めて対応策が求められる。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月27日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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