【社説】:②外国人就労拡大 政府主導で支援を強化せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:②外国人就労拡大 政府主導で支援を強化せよ
外国人就労を拡大する新制度の施行が迫る。政府は、受け入れ企業や自治体との調整を急ぎ、混乱が生じないように努めてもらいたい。
4月に始まる制度は、即戦力の外国人に新在留資格「特定技能」を認める。人手不足が深刻な14業種で、初年度は4万7550人の受け入れを見込む。
文化や慣習が異なる外国人が増えれば、職場や地域で摩擦が起きかねない。外国人が社会に溶け込めるよう、政府はきめ細かい支援策を講じることが大切だ。
自治体との調整役として、4月発足の出入国在留管理庁の地方局などに計13人の担当官を置く。2月初旬から、全国で新制度の説明会を開催する方針だ。
省庁の縦割りを排しつつ、自治体や企業と連携する態勢を整えることが求められよう。
政府は2019年度予算案で、受け入れ支援などに約150億円を計上した。全国100か所に生活相談窓口を設置する。
日本語習得や住宅確保など、必要な施策は多岐にわたる。人材の確保が、自治体の課題となっている。政府は、財政面の手当てを含め、後押しすべきだ。
外国人労働者が地方を離れ、大都市圏に集中するとの懸念は解消されていない。
法務省は、衆院法務委員会の閉会中審査で、受け入れ分野ごとに官民で作る協議会が偏在の問題の調整にあたると説明した。大都市圏の企業などに、受け入れ自粛を要請するという。
問題の根底には、都市部と地方との賃金格差がある。新制度は転職を認めている以上、偏在の是正は容易ではあるまい。
新制度の導入とあわせ、技能実習制度の抜本的な見直しが急務である。実習生は、途上国への技術移転を名目に、安価な労働力として利用されてきたのが実態だ。
政府は今月、三菱自動車など4社について、実習計画と異なる作業や長時間労働をさせたとして、計画の認定を取り消した。受け入れ企業に対して、厳格な姿勢を示したのは妥当である。
新資格の取得者の多くは、技能実習生からの移行が想定される。企業は、雇用管理を担う責任を自覚すべきである。
日本で働く外国人は昨年10月時点で、過去最多の146万人に上った。前年に比べ18万人多く、6年連続で増加した。安定的に受け入れるにはどうすべきか。中長期的な戦略についても、議論を深めなければならない。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年01月30日 06:07:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。