「米新国防戦略」が発表され、以下のような社説が出された。そこで一言二言三言と言いたくなった。それをメモしておこう。
その際の視点は以下の点だ。
1.独立国のメディアとして各社は国民に対して胸をはれるか。
2.アフガン・イラク戦争を支持した日本国政府によって格差拡大に見舞われ、二大政党政治の閉塞感に苦しむ国民の目線にたっているか。
3.財政危機に陥っている日本の再建とリンクしているか。
4.イラク・アフガン戦争の「敗北」をどのように総括しているか。
5.日本国憲法第9条を持つ国として自主的平和外交を基盤にしているか。
米軍の新戦略―軍事費バブルに大なた 「朝日」(1.8)
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1
海兵隊のオーストラリア常駐など新たな米軍の展開が、地域全体にどう影響するかは、まだ見えない。その中でも普天間基地を含む沖縄の負担軽減は、改めて真剣に探る必要がある。
米国の兵力削減は、一時の政策ではない。もしも今秋の大統領選で政権が交代しても、流れは変わらないだろう。
この新戦略を新たな対決の幕開けにせず、地域の長期的な緊張緩和と安定につなげる。そんな知恵と努力が、日本を含む各国に求められる。
米国防新戦略 アジア安定のために「毎日」(1.7)
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20120107k0000m070106000c.html
財政難に対処しつつ、中国の膨張路線にも何とか歯止めをかけたいオバマ政権の苦しみが伝わってくるが、まずは現実的な対応として評価したい。
特に中国やイランへの対応が新戦略の焦点になったのは時代の流れだろう。ただ、作戦変更によって紛争への備えが手薄にならぬよう要望しておきたい。
米国が中国のサイバー攻撃を警戒していることも含めて、米中対立の構図は強まっている。イラクから軍を撤退させ、アフガニスタンでの戦闘にも早く幕を引きたい米国が、経済的にも大事なアジア太平洋地域に重点を移すのは、特に不思議ではない。かといって米ソの冷戦を思わせるような米中対立に至っては困る。米軍の存在によって中国などが近隣諸国と協調し、朝鮮半島情勢にも好影響が及ぶよう期待したい。
米国はイラクやアフガンで得点を挙げ「祖国の防衛に成功した」のかどうか。自分が米軍の最高司令官である限り、過去の過ちは繰り返さないという大統領の決意は歓迎したいが、米国には保守層を中心に米軍縮小を危ぶむ声も強い。オバマ大統領は、新戦略を再選に向けた人気取りに終わらせず、世界にとっても意義深い転換点にしてほしい。
米新国防戦略 「アジア重視」に日本も呼応を「読売」(1.7)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120106-OYT1T01265.htm
米国の深刻な財政事情を考えれば、妥当な戦略である。
予算の制約の中で、様々な脅威に対応するため、優先順位を決めて、それに応じた部隊縮小や装備を選択するのは当然だ。
新戦略が重点を置くのは、テロや非正規戦、大量破壊兵器拡散など、新たな脅威への対処だ。
米国の新国防戦略は、同盟国がより大きな役割を果たすことを期待している。日本も、この新戦略を前向きに受け止め、「動的防衛力」の強化など今後の防衛政策に反映させていく必要がある。
日本の防衛予算は来年度で10年連続の減少となり、自衛隊の訓練や装備の修繕などに歪(ひず)みを生んでいる。厳しい安全保障環境を踏まえれば、予算削減に歯止めをかけ、反転させることが急務だ。
自衛隊と米軍の防衛協力を拡充することも重要である。
昨年10月のパネッタ米国防長官の来日時には、日米共同の警戒監視活動や共同訓練、基地の共同使用を拡大することで合意した。日米同盟の抑止力を維持・強化するため着実に実施に移したい。
米軍のアジア関与を息切れさせぬ貢献を「日経」(1.7)
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g
アジア太平洋では、米軍の存在こそが安定の要だ。米軍の関与が弱まれば、地域の安定が損なわれかねない。
新戦略では中国の台頭が米国の安全保障を脅かしかねないとして、アジア太平洋に戦力を重点配備する路線を確認した。アジアへの関与を強める決意の表れとして、歓迎したい。
いま肝心なのは米国の同盟国である日本や韓国、オーストラリアなどが、米軍のアジア関与を支えるため、これまで以上に積極的に貢献していくことだ。
日本も厳しい財政事情を抱えている。それでもできることはたくさんある。日本の南西諸島は対中戦略上、重要な場所にある。これらの防衛強化はアジアの安全保障にも重要な貢献になるはずだ。自衛隊はP3C哨戒機を大量に保有している。これらを活用し、米軍による周辺海域の監視活動などを肩代わりすることも可能だろう。
米新国防戦略 日本は率先して協力せよ 「産経」(1.8)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120108/plc12010803090000-n1.htm
オバマ米大統領が発表した新国防戦略は、国防費の大幅削減を強いられる中で、昨年秋から本格化した「アジア太平洋シフト」外交を軍事面で担保する内容といえる。
同時公表された新国防戦略指針には、2020年に向けて中国の軍事的台頭に正面から対抗する姿勢が明示された。日米安保体制により地域の安定を図る日本にとっても意義は大きい。
ただ、新戦略に肉付けをするには「同盟・協力国との連携が決定的に重要」(同指針)だ。野田佳彦首相は日本の安全のためにも同盟の重責を認識し、在日米軍再編の速やかな履行などに全力を投じて応えていく必要がある。
中東やイランにも目配りしつつ、「中国の台頭は米国の経済・安全保障に潜在的影響を及ぼす」と名指しで新戦略の最重要ポイントとしているのは当然といえよう。
中国に責任ある行動を促し、絶え間ない軍拡の透明性と戦略的意図の明確化を求めているのも極めて妥当だ。
国防スリム化と財政難に耐えて米国をアジア太平洋に集中させるには、それだけ同盟国の分担と貢献が不可欠だ。
とりわけ地域の公共財となってきた日米同盟を支える日本の協力は重要だ。実効ある共同行動をめざして、日米は今後、米新戦略と日本の防衛態勢のあり方を緊密に調整していく必要がある。
その意味でも、沖縄の海兵隊を含む在日米軍再編の完遂は一層切実な課題となった。野田首相はその第一歩として普天間飛行場移設を速やかに進めてもらいたい。
米の新国防戦略/中国との緊張を高めるな 神戸新聞社説(1.7)
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0004727411.shtml
全体的には戦力をスリム化するとはいえ、懸念されるのは、新戦略で米中間の緊張がさらに高まりかねないことだ。その最前線として同盟国日本や韓国に一層の役割を求めてくる可能性もある。
具体的に、南西諸島周辺に出没する中国艦船への監視強化や自衛隊基地での米軍との共用拡大、サイバー攻撃への協力要請などを挙げる声もある。
予想されるこうした米側の求めに対し、政府はどう向き合っていくのか。新戦略の中身を精査し、慎重に対処していかなければならない。
【米新国防戦略】緊張を高めてはならない 「高知」(1.7)
http://203.139.202.230/?&nwSrl=283965&nwIW=1&nwVt=knd
新国防戦略は日本などアジアの同盟国との連携強化も明記している。厳しい財政事情を背景に、米国が今後、日本に対してさらに役割を拡大するよう要求してくるのは間違いない。
日本の安全保障にとって、米国との同盟関係が死活的な意味を持つのはいうまでもない。同時に、中国との良好な関係も重要だ。米国と中国の間で日本がどのような位置に立つのか。その戦略があらためて問われる。
新米国防戦略 海兵隊撤退は当然の帰結だ 「琉球新報」(1.7)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-185978-storytopic-11.html
日本政府はこの機を逸してはならない。在沖海兵隊の全面撤退が沖縄や日本のためだけでなく、新戦略に照らした上での米国の国益にもかなうことを、理路整然と説明すべきだ。
撤退で合意できれば、21世紀を通じて持続可能な新たな日米関係を築くことになり、日米「共通の利益」となる。そんな合意を構築してもらいたい。
米の国防戦略 アジアの緊張を高める「信濃毎日」(1.7)
http://www.shinmai.co.jp/news/20120107/KT120106ETI090004000.html
日本を含め、アジア諸国が米中の覇権争いに巻き込まれる恐れが強まってきた。今後の動きには細心の注意が要る。
米中には対立をエスカレートさせず、アジアの安定を第一に考えた慎重な行動を求める。
日本にとって見過ごせないのは新戦略が、日本などアジアの「同盟国」に対し、役割の拡大を求めていることだ。財政的に余裕がない米国の国防戦略の穴埋めをアジアの同盟国や友好国に担ってもらおうとしている。
日本の場合、米国の意向に沿う形で、国是としてきた「武器輸出三原則」を抜本的に見直し、事実上の禁輸政策を大幅に緩和することを決めたばかりだ。
役割分担の名の下に、米国からの圧力がさらに強まりそうだ。なし崩しに米国の軍事戦略に巻き込まれることがないよう、監視を強めなくてはならない。
さて一覧してみて思うことをメモしておこう。
1.アフガン・イラク戦争の「失敗」=軍事的・政治的・財政的・経済的失敗から生まれた「米新国防戦略」であるが、そうした視点で捉えていない。あの戦争に対するマスコミの総括が求められる。さもなければ「教訓」と「展望」は見えてこないだろう。
2.「イラン・中国の脅威」、「様々な脅威」、「テロや非正規戦、大量破壊兵器拡散など、新たな脅威」など、破綻した「脅威」論に囚われ、軍事力に依存しながら、税金を湯水のように使うことで国家、国民生活そのものが破綻していることを批判も反省もしていない。
3.それは米国に「世界の警察」=「米軍の存在こそが安定の要」の役割を期待する日本のマスコミの視点が根強くあるからだろう。敗戦以後の思想状況を象徴している。戦前は鬼畜米英と叫んでいた勢力が米国の「犬」になっているのだから。それは中国・北朝鮮に対してナショナリズムを煽る勢力に極端に見える。
4.それは「国防スリム化と財政難に耐えて米国をアジア太平洋に集中させるには、それだけ同盟国の分担と貢献が不可欠」論に、対米従属論の典型となって表れている。
5.しかし日本のマスコミに対米従属感という自覚は全くない。これこそが内政面の最大の対立軸であるが、対米自立論はマスコミ・政界ではカヤの外の要因が、ここにあることが判る。「対米従属」という土俵の中で、ものを見て考えるスタンス、これがストップしている。
6.だから米国の軍事戦略に基づく財政破綻を現在の日本に重ねる想像力は無自覚的対米従属からは出てこない。
7.したがって人権尊重、対等平等、対話と強調、寛容と連帯、民族自決主義などを掲げた日本国憲法や国際法にもとづく外交を多様に駆使する議論・視点は極めて弱い。
8.全国紙と地方紙のギャップは目にあまるものがあるが、米軍基地や自衛隊基地を抱える各地の新聞が、今回の新国防戦略に対して、自らの地方政治の革新・改革という点から意見表明することを期待したい。
そのためにも継続的に見守っていきたい。
憲法を戴く国の国民の務めは平和小さな一歩
春をよぶ小さな一歩全国の各地に起こる日を夢に見て