民主党が衆議院議員85人も削る案を決めた。「毎日」が社説を出した。そこでいくつか。
1票の格差と定数 議員が模範を示さねば毎日新聞 2012年1月19日 2時31分
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20120119k0000m070129000c.html
・・・・自民党案は抜本改革と遠い内容だが、次期衆院選を控え当面の是正を急ぐことは国会の最低限の責任だ。議員自ら身を切る模範を示すためには定数削減のみならず歳費の削減、政党交付金見直しなどに幅広く取り組むべき…財政再建や行革の必要性を多くの政党が指摘しながら、自分たち国会議員は「痛み」を避ける。こんな状況が許されていいはずはない。… 今後、区割りを見直しても次期衆院選に間に合うか微妙な状況だ。だからといって「どうせ最高裁は選挙無効判決は出せまい」とたかをくくるようでは立法府の自殺行為だ。抜本改革に先立つ緊急措置として与野党は一日も早く0増5減案の法制化を急がねばならない。 一方、民主党は比例代表定数80削減案も決定した。消費増税に向け定数削減を目指す方向は正しい。だが、比例代表を大幅に削ると少数政党がこれまで以上に議席を得にくくなる側面は無視できない。 中小政党が比例で有利になる小選挙区比例代表連用制の導入を求める議論もある。将来的な選挙制度の抜本改革の方向も含め、与野党で可能な接点を探るべきだ。 国会議員の身の切り方は定数削減だけではない。岡田克也副総理が言及したとおり、国家公務員給与の7.8%削減を目指すのであれば国会議員がそれ以上の歳費削減を打ち出すことは当然だ。 政党交付金も使い道の透明度などで疑問が指摘され、年末の新党結成騒動の呼び水にすらなっている。聖域とすべきであるまい。 1票の格差が10年の選挙で5倍に達した参院も定数削減も含め問題を放置できない。だが、見直しへの動きは鈍く、来夏の選挙までの抜本改革はこのままでは難しくなる。 自民、公明両党は民主党の比例定数削減案に反対する構えだ。確かに複雑な要素のある問題だが、さきの参院選では主要9党のうち6党が定数削減を公約に掲げていた。共通の課題として積極的に協議にのぞまないと、政党不信を深めるばかりだ。
一票の格差や定数削減問題を「少数政党がこれまで以上に議席を得にくくなる」「中小政党が比例で有利になる」ということは「大政党には有利」ということになるということだが、これも問題だが、「少数政党」「中小政党」「大政党」に有利か不利かという問題に眼を向けることで、この問題が党利党略問題としてすり替わっていってしまうのではないか、こちらの方が問題ではないか。
また国会議員が「痛みを避ける」「身を削る」ことと「財政再建や行革の必要性」を関連させることも、この間の政治の劣化と不信の裏返しだが、より本質的には、劣化をつくっている政治家と政党を政治の場から退場させるために、何が必要か、ということこそ、今最も大切なことではないか。そのためにも国営政党化をすすめてきた政党交付金を「聖域とすべきであるまい」は当然。さらには他の「聖域」にも注目してほしいものだ!
民主党の小選挙区5減、比例代表80減案をみて、一人の議員に対する有権者の多さに注目してみた。
比例ブロックの場合、一人の議員に対して有権者の数は 少数第2位を四捨五入
ブロック……有権者・・・議員・・一人当たり……・民主案……・・一人当たり
北海道・・4,593,950……・8………574,243.8……・・4…………1,148,487.5
東 北・……723,504……14……・551,678.9………・7……・…1,103,357.7
北関東・…11,493,173……20………574,658.7………11……・…1,044,833.9
南関東・・13,035,105……22………592,504.8…・・13………・1,035,105.0
東 京・…10,615,950……17………624,467.7…・・10………・1,061,595.0
北信越………6,225,877……11…………566,261.6………6……・……1,037,647.2
東 海……12,091,890……21………575,804.3………12…………1,007,665.0
近 畿………16,828,106……29………580,279.5…………16…… ・1,051,756.6
中 国………5,701,739……11………518,339.9………・6………・…950,289.8
四 国・・…3,327,941………6………554,656.8……・・3………・1,109,313.7
九 州……11,836,329………21………563,634.7……・12…………・986,360.8
合計・・・103,473,564……180………574,853.1………100………1,034,735.6
(総務省2010年3月31日現在)http://d.hatena.ne.jp/longlow/20101211/p1
小選挙区の場合議員削減対象県と議員一人当たりの有権者数
選挙区……・・山梨・・・・・福井・・・・・・徳島・・・・佐賀・・・・・・高知
1区…………219,206………・221,562………・214,727……・236,835……・…214,736
2区…………233,810………・218,403………・226,320…・…225,399………・215,508
3区…………249,696………・213,557……・…215,524……・226,242………・207,688
減区の場合…351,356.0……326,761.0………328,285.5…・344,238.0………・18,966.0
(総務省・2011年9月2日)http://ja.wikipedia.org/wiki/
1.「格差是正」の名の下に議員を減らすことで、国民と国会のパイプは削られる。
2.議員を減らすことで「歳費」は「節約」できる。財政再建には程遠い金額だが。
3.格差を是正しても、議員を削減しても、それだけでは政治の劣化に歯止めはかからないだろう。財政再建は程遠いだろう。かつて議員削減は経験していることだからだ。
マスコミは、をもう一度1年半前の議論思い出したらどうだろうか。忘れないために以下掲載しておこう。
国会議員定数 削減の前にやることが 信濃毎日社説(2010年8月4日)
http://www.shinmai.co.jp/news/20100804/KT100803ETI090003000022.htm
菅直人首相が記者会見で、国会議員の定数削減について、年内の与野党合意を目指す考えを示した。 民主党は先の参院選で、衆院の比例定数を80、参院定数を40程度減らす公約を掲げていた。比例定数を減らしたら選挙制度は大政党にますます有利になる。「死に票」が増え、多様な民意を国政に反映させるのも難しくなるだろう。 慎重な対応を各党に求める。 今の定数は衆院480、参院242の合わせて722。参院選では自民党も、両院の定数を3年後に1割減らして計650に、6年後には計500にする方針を掲げていた。躍進したみんなの党は衆院を300、参院は100へと、削減幅はさらに大きい。 首相の念頭には、定数をめぐる両党との協議をバネに、国会運営での協力態勢を模索する思惑があるのかもしれない。 会見で首相は、行政経費の無駄削減と並べて「国会議員自身が身を切ることも必要だ」と述べていた。問題の一つはここにある。
国会は国民主権が体現される場である。在り方を見直すときは、どういう仕組みにしたら民意がより正確に反映されるかがポイントになる。行政改革と同列に論じるのは間違いだ。 そもそも有権者数に比べた議員の数は、日本はほかの先進国に比べむしろ少ない方である。国会議員が身を切るやり方は、歳費のカット、政党交付金の返上など、ほかにいくらでもある。 仮に議員削減を考える場合には、前提として論ずべきことがある。望ましい議員の数、選挙制度の在り方、衆参両院の機能と役割分担-などだ。 こうした問題に目を向けず、各党が削減幅を競うようでは、国民をしらけさせるだけだ。「安易な人気取り」との批判を招き寄せるだろう。
国会の在り方について、いま緊急にやらなければならないことははっきりしている。第一は、議員一人一人の能力を高めて国会審議を充実させることだ。各党の地道な努力が問われる。 そして第二は「1票の格差」の是正である。7月の参院選について、選挙無効を求める訴訟が早くも東京高裁に提起された。「百年河清をまつ」がごとき国会のスローな対応に、裁判所が向ける目は厳しくなっている。 国会が格差是正をいつまでも先送りしていると、選挙無効の最高裁判決が下される日が、いつかやって来るだろう。
国会議員定数 丁寧な論議積み重ねて(201年8月7日付)
http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu/ronsetsu_backnumber.0.1700493.article.html
菅直人首相は国会議員の定数削減について年内の与野党合意を目指す方針を表明した。衆院、参院それぞれで、どの程度減らすのか。これからの各党による協議次第だが、削減の内容、幅によっては、民意が今以上に反映されない制度となりかねない。政権の実績づくりを急ぐあまり、前のめりになってはならない。議会制民主主義の根幹にかかわる問題であり、慎重な検討が必要だ。 菅首相は民主党の参院選マニフェスト(政権公約)に沿って8月中に党内で意見集約を図るとともに12月までに与野党間で合意するよう枝野幸男幹事長らに指示したという。そのマニフェストの内容は、衆院比例定数を80、参院定数を40程度削減するというものだ。 従って衆院定数削減については、この比例定数80の削減が一つの目標となって協議されることになるだろう。
1990年代、度重なる政治腐敗を背景に政治改革が大きなテーマとなり、その結果生まれたのが選挙制度の改変だった。94年に政治改革関連法案が成立し、それまでの中選挙区制が廃止され小選挙区比例代表並立制へと変更された。中選挙区制の弊害とされていた利益誘導、派閥政治からの脱却などが理由だった。
現行の衆院定数は小選挙区300、比例180で構成されている。だが当時の細川政権とき、当初の案は小選挙区250、比例250だった。それが自民党との妥協で小選挙区300、比例200になり、さらに2000年の公選法改正で比例が20減って今に至っている。 現行の小選挙区比例代表制は、現実そうであるように政権交代を可能にする。この制度が二大政党化を促進させる傾向があるからだ。だが一人しか当選できないため、死票が多くなる制度だ。それは民意を正確に反映しないことにつながる。また、比例代表並立制のもとでも昨年の衆院選で見られたように得票率と議席占有率との間に大きな乖離(かいり)が生じる。
衆院定数削減での民主党公約は、比例代表の部分を、さらに下げようとしている。これでは比例選が議席獲得の柱となっている少数政党が締め出されるだろう。民主党案に「民主主義政治の破壊につながる」との批判が強いのはそのためだ。 菅首相は定数削減に関して行政経費の無駄削減とともに「国会議員が身を切ることも必要だ」と述べている。国民に受け入れられやすい主張ではある。だが国会議員に必要な経費削減が目的なら、ただちに議員を減らすのではなく歳費や政党助成金を減らす道がある。
月に数日しか働いていないのに1カ月分の歳費をまるまるもらう。この特権的待遇を改める動きがようやく軌道に乗った。日割り支給にするだけでも経費はかなりの額が削減できる。 少数政党がはじき出されれば政治は多様性を失う。定数を論議するに当たっては、民意の反映を保障するものかどうか、この視点こそ重視して当たるべきだ。また国際的に見て日本の国会議員は人口比で果たして多すぎるのか否か。「まず削減ありき」ではなく、丁寧な議論の積み重ねで妥当な定数を導き出してもらいたい。 (上杉芳久)
国会議員削減 選挙制度全体から考えよ[山陽新聞社説] 2010年7月11日
http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2010071109485168/
政治家自らが身を切る姿勢をアピールし、支持拡大を図る狙いなのだろう。今回の参院選では主要9党のうち共産党、国民新党、社民党を除く6党が国会議員の定数削減をマニフェスト(政権公約)に掲げて戦った。菅直人首相は早期実現に意欲を見せており、選挙後に議論は活発化しそうだ。ここで一度、立ち止まって考えたい。
現在の定数は衆院480(小選挙区300、比例代表180)、参院242(選挙区146、比例代表96)の計722である。民主党は衆院比例で80、参院で40程度の削減を主張している。それでは不十分として自民党は衆参両院で6年後に計500にまで減らすとした。公明党は選挙制度改革に合わせた削減を提唱。新党改革は定数半減、たちあがれ日本、みんなの党も大幅削減を掲げている。
国会議員が多すぎると感じている有権者は少なくない。厳しい視線を意識し、財政再建に取り組む前提として国会議員が自ら痛みを負う覚悟を示すのは当然ともいえる。しかし、真っ先に削減数を競い合うのは順番が違うのではないか。 適正な定数は、選挙制度をどう変えるかという議論の中で導き出されるべきである。特に比例の定数削減は慎重な議論が必要だ。1人しか当選しない小選挙区は「死に票」が多いのに対し、比例は民意を反映する。比例の定数が減れば少数政党は議席を得にくくなり、多様な民意が切り捨てられる懸念もある。現行制度が抱える問題点は多く、中でも「1票の格差」は早期に是正しなければならない。 国会議員が身を削る姿勢を本気で示すというのなら、まず歳費や政党助成金の削減に取り組むという方法もあろう。定数削減ありきでなく、選挙制度全体の議論を尽くしてもらいたい。
削減を叫んでみても政ごと変わらぬままに民細りたりけむ
民のため働かぬものしつかりと退ける業をば津々浦々に
百万の民集ひたるスタジアム政治家(や)ひとり声も届かず