師走の夜八時。
権堂太郎兵衛じいさんはほくそ笑みながら、居間の炬燵で晩酌をチビチビとやっていました。
「やっぱり、静かなのが一番じゃ……」
それは、今宵から夜回りを、廃止にさせたからです。
夜回りとは、
「火の用心」
チョンチョン、と拍子木を打って町内を巡回する、あれです。
権堂じいさんは日頃からあの「火の用心」チョンチョンを、町内の静かな夜を掻き乱す、騒音だと感じていました。
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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