すでに夏の日差しの堤道。その鮮やかな緑に、夏の鐵道旅行の車窓を思ひ出す。窓に背中を向けて座る新しい車両ばかりになり、かつての風情が失はれて、旅行のかたちも考へねばならぬと、決めた直後に國難で、旅する樂しみすら今は待つほかなし。私が手猿樂を立ち上げやうと閃ひたのも、夏の廣い稲田をいく鐵道のなか。夏、鐵道、旅行──この國難下にあって、いかに人生の滋養であるかを知る。 . . . 本文を読む
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プロフィール
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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