迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

六文銭の情。

2017-11-02 22:51:07 | 浮世見聞記
新宿の末廣亭へ、雷門助六と日にち限定で出演の桂文我の落語を聴きに行く。


「代わる代わる色々な顔をお見せゐたしまして、さぞお力落としもございませうが……」

と先代譲りの前置きから始まった助六師の今日の噺は、「相撲風景」。

細やかな表情や身振りのとても上手ひ噺家だと、つくづく思ふ。


上方落語らしく見台と膝隠しを前に文我師が口演したのは、土葬されてから生まれた赤ん坊のために母親の霊が六日間飴屋へ飴を買ひに訪れる「幽霊飴」といふ噺で、現在では演る人のほとんどいない、おそらく末廣亭始まって以来かもしれないといふ、貴重な一席。

古い京都を舞台に、怪談と母親の悲しいまでの情愛が見事に融合した噺を、女が土葬されてゐる高台寺に引っ掛けて、

「だって、こうだいじ(子が大事)」

と、サゲをストンとつけて引っ込むあたり、なんとも心憎い。


上方落語といへば、今日は笑福亭和光が代演として登場し、大好きな「ぜんざい公社」を聴かせてくれたのは御馳走だった。

主任は桂文治で、噺は「鈴ヶ森」。

途中入場してアッと言う間に途中退場して行った茨城県からの某団体客をのっけから散々にこき下ろすなど、言ひたい放題やりたい放題で爆笑につぐ爆笑を誘ひ、

「笑ふために来たんやさかい、これぐらゐ笑わしてくれな、損やわ」

と、久しぶりにスッキリする。
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