迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

あなたではわからない。

2012-04-07 21:27:07 | 浮世見聞記
「どうしても行くのですね」

あなたは不思議でならないと云ふ顔をしてゐる。


あなたの、

あなただけの世界では、

さぞかし

さうでせう。



住んでいらっしゃるのは、

あなただけ。



あなたが手にしている定規では、

外の景色は、

けっして計れない。



狂ひが生じていることに、

あなたは気が付かない。



だからここへ、

置ゐて行くのです。





「またいつでも、戻っていらっしゃい」



わたしは

行きの切符しか

持っていません。



この扉が閉まれば、

すべてが消えて無くなる。


だからわたしはあなたを振り返らない。


さよならも言わない。




さあ、ちゃんと前を見て。


ちゃんと、

前だけを。



そろそろ扉が閉まりますね。


わたしは振り返らない。



そんなことをするくらいなら、

なにもかも、

やめてしまったほうがよい。





祈るだけでは、

何も変わりはしない。
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