未明から窓を強く叩く風と雨の音とで、一時間おきに目を覺まされて朝となる。
昨日から怪しかった空模様が、ついに今日になって本性を顕したやうに見える。

午前中に小降りとなった一瞬を狙って買ひ物に出かけ、今日は好転を望めぬ空を見て、手猿樂を舞ふのが昨日でよかったとつくづく思ふ。
今日の様子では、たとへ雨天決行でも私は面と装束が濡れるのを嫌って参加を辞退したらう。
夕方にふだんは見向きもせぬTVを眺めてゐると、報道屋がどこかの驛前で、今日の荒天についてまるで大災害が發生した現場から中繼のやうなお祭り騒ぎを演じてゐた。

安物のビニール傘が風で壊れる定番の景色をいくつも追ひ、街路樹の根元のちょっとした凹みに溜まった雨水へ手を浸して、「こんなに水が溜まってゐます!」──

現實世界にゐるくせに、現實世界を傳へないのが、これら報道屋の職分(シゴト)である。