久しぶりに「蟬丸」を謠ふ。
この謠曲は蟬丸といふ盲人、そして逆髪といふ狂女の姉弟が、いづれも“延喜の帝”の皇子として登場することから、第二次大戦中は軍部から「不敬だ!」と睨まれ禁止されてゐた歴史がある。
なんでもかんでも噛み付く軍部の盲目的、狂心的な思考には全くもって呆れる。
だが、七十五年前の今日にこの世阿彌の名曲はめでたく解禁され、おかげで私は薪能が催されない今夏の憂さ晴らしとして、この曲を選ぶ自由を得る。
いまの支那發人災病菌も、この自由までは奪へない。
そして、
奪はれてなるものかと、
改めて兜の緒をきつく締め直す。