迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

傅承藝能。

2018-02-18 20:46:26 | 現代手猿樂
今年も実家の町内が企画した文化展で、手猿楽を披露する機会を得る。


演目は、初めが「日傘娘(ひがさむすめ)」。



神奈川県三浦市の民俗芸能「菊名飴屋踊り」より“子守”の振付の一部、また雷門助六の“寄席踊り”にヒントを得て、二年ほどの時間をかけて創り、本日が初演。



私の好きな上方落語の桂文我の出囃子である「せり」を登場に用ひるなど、荘重さより軽快さが主眼で、これからも「狂言踊り」と名付けてさういふ作品も創っていきたいと思ふ。


もうひとつが、昨秋に初演した「駿河天人」を、前回は持ち時間の都合で割愛した謡ひも入れた完全版で披露する。



昨年の文化展では着物に袴姿といった素の形による試演だったが、今度は神楽囃子のほかに雅楽も採り入れ、またこの作品の原典である能「羽衣」に魅せられた故•エレーヌ夫人を讃へた詩の一節、

『三保の浦 波送る風 語るなり』

を、夫人への敬意を表して謡ひに採り入れるなどの工夫を加へる。


などなど、自分の足で出かけ、自分の目で見て、自分の耳で聴ひて、「あ、いいな」と思ったらそれを自由に取り入れ、自由に工夫をして、自分の作品へと仕上げていく──

それが、黒川能を観たことをきっかけに創始した我が手猿楽の、基本理念である。




終演後に年配の女性が、

「(あなたの舞を観て、)子どもの頃、故郷の信州で『浦安の舞』を舞ったことを思ひ出しました」

と、遠い故郷の、遠い日の記憶にある伝統文化のお話しをして下さった。


私の創ったものが、その人の心に仕舞はれてゐたふるさとを呼び覚ますきっかけとなったことに、私は今日といふ日の意義を見出す。
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