人災疫病禍にあることを鑑みて、規模縮小といふ形で二年半ぶりに再開された上目黒氷川神社の「第5回 おかげマルシェ」にて、現代手猿樂「村雨留(むらさめどめ)」を披露する。
二年前に能の名曲「熊野(ゆや)」から取材し、小書(特殊演出)の“村雨留”を曲名につけて創り、御縁があればその年の「おかげマルシェ」で初演するつもりだったが、生憎の人災疫病禍により開催が見送られたため、長らくお預けになったもの。
この國難下におゐて可能な活動方法を模索する折から、今回再開の案内をいただき、これも御縁と、二年越しになった「村雨留」の披露を決める。
ただし、今回は感染症予防のため「舞臺上でもマスク着用」と「發聲禁止」の厳守が参加條件であるため面と装束は着けず──マスクをして面をかけたら窒息する!──、直面(ひためん)にマスクをして裃を着け、シテ謠(セリフ)はすべて抜いた舞のみの形に改め、舞臺にのせる。
二週間前の「さがみ野さくら祭り」の時は、二年二ヶ月ぶりの舞臺復帰であったため前日から緊張と不安で落ち着かなかったが、今回はさすがにそのやうなこともなく、自由に樂しく──現代手猿樂の本義をやうやく取り戻して、自作を奉納す。
いつか、面と装束をつけた本来の姿で「村雨留」の舞へる日が来ることを樂しみにしつつ、まずは今日の初演を恙無くつとめられたことに感謝する。