今月七日、那須野の殺生石にて八頭の猪の死骸を管理事務所の職員が發見、硫化水素などの火山ガスを吸ったことが原因と考へられる云々、狐や狸の死骸が二、三匹發見されることはあるが、八頭まとめては珍しい云々──
石に近づくとたちまち命を落とすと云ふことは、これまで傅説(はなし)に聞くばかり、實際の事例に接したのは今回が初めて、妖異は真實(ほんたう)であったかと、今さらながら驚く。
併せて、イノシシが八頭もまとめて出没したことにもビックリである。
人間サマが一頭だけでも手こずる猪を、八頭まとめて仕留めた金毛九尾の狐の妖力、おそるべし。
イノシシの肉は食したことはないが、匂ひさへ我慢すれば美味を樂しめると聞く。
今回の報を聞いて、まだ食せぬ“牡丹鍋”を連想したのは、冬の為せるわざか……?