深夜、ラジオをつけたら李香蘭(山口淑子)の代表曲「夜来香」を、オーケストラに編曲したものが流れてゐた。
オーケストラに参加した揚琴が、古き日の支那のゆったりとした情景を聴かせて、つひ手を休めラジオの前に座る。
洋楽器だけの演奏だったら、私の耳は受け付けることなくそのまま流してゐただらう。
改めて名曲であることを認識しつつ、これだけの音樂がもとは大日本帝國の國策の延長線上に誕生したものだと思ふと、私はヒトの思惑といふものが恐ろしくなる。
「夜来香」を歌ってゐた李香蘭こと山口淑子さんが亡くなって、まう八年になる。
しかし「夜来香」の名曲としての価値は損なはれることなく、今日から明日へ、その時代の人に歌ひ継がれていく。
私も、李香蘭と「夜来香」を知ってゐることを幸せに思ふ。