
ラジオ放送の寶生流「源氏供養」を聴く。
先月に川崎能樂堂で觀世流の舞臺を樂しみ、また國學院大學博物館では曲中にも採られてゐる源氏物語「表白(へうびゃく)」の實物を目にし、そして今回の放送では、クセで五十四帖の巻名すべてを詠み込む“真之舞入”と云ふ珍しい小書(特殊演出)版を樂しむ。
“真之舞入”は加賀藩主前田斉廣(まえだ なりなが)の奥方の手によるとも考へられてゐる謠で、長らく上演が途絶えてゐたのを先代の寶生流宗家が復曲云々、私も平成二十八年の夏に國立能樂堂の主催公演で觀てゐる。
話しに聞く通りの長々とした謠で、舞の型もよくネタ切れしないものだと感心したものだった。
今回久しぶりにこの謠に接し、ダレないやうに運ぶ難しさと、荘重なる供養の場を彷彿とさせる力とを求められる、舞以上にやはり“地謠力”がものをいふ曲と、謠寶生らしい聴き應へを堪能する。