今年も、川崎の稲毛神社例大祭で上演された間宮社中の里神楽を観る。
さりながら、七月から続く熱さに昼間は誰もが出控へてゐるやうで、祭礼に訪れる人はまばら、露店の人たちも暇を持て余し気味。
昨年までの賑はひを思ふと、さすがに寂しくなる光景だ。
かく言ふ私も、今朝の空に出かけるのを躊躇(ためら)わなくはなかったが、神楽が始まる頃には舞台前がちょうど日陰になること、そして何より、我が手猿楽をエセモノなどにしないためにも、ちゃんと本物を学ばなくてはと、玄関を出る。
今回観たのは、三体の神がそれぞれに寿ぎの舞を舞ふ「墨之江三神(すみのえさんじん)」、
そして、紀千箭(きのちのり)が稲荷大神より与へられた弓矢で、稲荷山に棲み着ひた悪鬼を退治する、「稲荷山•悪鬼退治」。
前半に登場する狐神の毛の具合が、たまたまだらうがオシャレな髪型のやうになってゐて、
その面白さにしばらく見入る。
後半に登場する稲荷山の悪鬼たちは人間味溢れる道化の役柄で、
赤鬼が紀千箭に矢を射られた青鬼を手術で治療する場面などは、
見立ての面白さと相まってほのぼのとした笑ひを誘ふ。
──“庶民の喜劇”とは、かういふ味わはひを言ふのである。
青鬼の“完治”後は、再び現れた紀千箭と力比べに相撲を取ったり、
こっそり“八百長”をけしかけたりと、最近でも耳にした記憶があるやうなことを風刺的に魅せ、最後はやはり弓矢で退治され、
めでたくお開き。
夕方になっても街に人の姿は少なく、賑はふのは町内を巡行する御輿の担ぎ手たちと、そのまわりだけ。
そこを離れると、たちまち我関せずの白けた空気が漂ふ。
なんてことだ、と思ふ。
間違ひなく、夏といふ季節とは全く別物の災害に、いま日本は覆はれてゐる。
さりながら、七月から続く熱さに昼間は誰もが出控へてゐるやうで、祭礼に訪れる人はまばら、露店の人たちも暇を持て余し気味。
昨年までの賑はひを思ふと、さすがに寂しくなる光景だ。
かく言ふ私も、今朝の空に出かけるのを躊躇(ためら)わなくはなかったが、神楽が始まる頃には舞台前がちょうど日陰になること、そして何より、我が手猿楽をエセモノなどにしないためにも、ちゃんと本物を学ばなくてはと、玄関を出る。
今回観たのは、三体の神がそれぞれに寿ぎの舞を舞ふ「墨之江三神(すみのえさんじん)」、
そして、紀千箭(きのちのり)が稲荷大神より与へられた弓矢で、稲荷山に棲み着ひた悪鬼を退治する、「稲荷山•悪鬼退治」。
前半に登場する狐神の毛の具合が、たまたまだらうがオシャレな髪型のやうになってゐて、
その面白さにしばらく見入る。
後半に登場する稲荷山の悪鬼たちは人間味溢れる道化の役柄で、
赤鬼が紀千箭に矢を射られた青鬼を手術で治療する場面などは、
見立ての面白さと相まってほのぼのとした笑ひを誘ふ。
──“庶民の喜劇”とは、かういふ味わはひを言ふのである。
青鬼の“完治”後は、再び現れた紀千箭と力比べに相撲を取ったり、
こっそり“八百長”をけしかけたりと、最近でも耳にした記憶があるやうなことを風刺的に魅せ、最後はやはり弓矢で退治され、
めでたくお開き。
夕方になっても街に人の姿は少なく、賑はふのは町内を巡行する御輿の担ぎ手たちと、そのまわりだけ。
そこを離れると、たちまち我関せずの白けた空気が漂ふ。
なんてことだ、と思ふ。
間違ひなく、夏といふ季節とは全く別物の災害に、いま日本は覆はれてゐる。