横浜市歴史博物館で、「令和3年度 横浜市指定•登録文化財展」を觀る。
シャモジに願ひをこめて奉納する「オジャモジサマ」に庶民の土俗的生活の匂ひを聞き、紺紙に金字でしたためられた法華経に”漢字美”と云ふものがあることを識る。
そして、同じ展示室内で同時開催の企画展「浄土の庭─称名寺境内国史跡指定100年─」では、昭和四十年代に景觀が破壊される危機にさらされた金澤北條氏の菩提寺•稱名寺の歴史を歩く。
訪ねるたびに心が癒やされる稱名寺は、なんといっても包み込むやうにそびえる三山の景觀に拠るところが大きい。
(※令和二年九月撮影)
また境内は浄土思想を体現化したものであるだけに、その重要な要素である山々が削られて住宅に包囲される眺めとなっては、それは浄土どころか穢土でしかなくなる。
さうした無益な環境破壊は、かつて入江の美景だった“金澤八景”の例だけで充分だ。
貴重な現世浄土を明日のために守ってくれた當時の人々には、ただ感謝しかない。
これから史跡を訪ねるときは、それをここまで守ってきた人々の努力にも、思ひを馳せるべきだらう。
帰りに覗ひたミュージアムショップで、中学生らしき二人連れの女の子が、何かの商品を見ながら「(値段が)五千圓なんて、とても手が出ない」と話してゐた。
大人になっても、さういふ氣持ちを失はない女性でゐてほしい──ふとそんなことを思ふ。