御手洗ひで用を足して、御手を洗はずに出て行くヒトがゐる。さういふヒトは大抵が、鏡の前で一度立ち止まり、用を足したその指で髪の毛をちょっと摘まんでから、出て行く。その容姿で今さら色気付いたって、もふ手遅れさ……。私はちゃんと手を洗ふ。さっきのヒトが触った物を、私もどこかで触れたかもしれないのだ。ヒトが病菌を媒介するのではなく、ヒトが病菌そのものとは、ここである。だから、私はちゃんと手を洗ふ。 . . . 本文を読む
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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