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「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

       大正生まれの大和撫子の一生

2009-09-02 05:28:17 | Weblog
亡くなった母の実家の嫁といっても大正2年生まれ96歳の従兄の連れ合いが長寿をま
っとおし昨日その告別式に出席した。母の実家は、東京の目黒川沿いにあり、今は
高層ビル街にあるが、江戸時代から続く旧家であり、僕が小学生であった昭和10年代
には付近にまだ藁葺き屋根の家も残っていた。

昭和10年、僕の従兄が彼女と結婚式を挙げた時、僕は二人の介添え役の”雄蝶雌蝶”
の雄蝶役を仰せつかった。幼児の遠い記憶だが、結婚披露宴は本家の十畳二間続き
の広間で催された。今でも地方へ行けば、このような造りの家があるが、当時は東京の
区部でもまだあった。

大正生まれの日本女性は史上一番苦労をなめた世代であろう。彼女の場合も新婚まもな
く夫を兵隊にとられ、戦争中2回も応召を受けている。その間、三人の子供をかかえ姑
しゅとめと同居し、さらに元治元年生まれの祖祖母の面倒までみた。そして家業の運送業
のトラックは軍に徴収されて廃業、さらに戦争末期には家が強制疎開で壊され、疎開先
の家まで空襲で焼失してしまった。

幸い戦後すぐ夫が戦地から復員し、家業も復活して順調に伸び、家も高層ビルとなり、晩
年は息子夫婦の手厚い看護を受けながら自宅で息を引き取った。告別式の後、久しぶり 
に今はビル化された本家の一室に集まって夜遅くまで故人と多難ではあったが、ある意
味では”古きよき”時代を偲んだ。こうして親戚一同が集まったのは何年ぶりだろうかー。