テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

2022!新春特別企画《6つの宝物》その④

2022-01-03 23:13:04 | ♪2022!新春特別企画♪

「みんなッ、きをォつけてッ!」

 

 名探偵テディちゃムズの一喝に、

 ユキノジョン・H・ワトソン博士と虎くんは

 ハッといたします。

 悪漢たちに侵入された名門百貨店『クマロッズ』店内は、

 店員さんたちが縛られ、商品は棚から落下し、と

 散々なありさまでした。  

  

「ひどいィことをッ!」

「ヤツらはどこだ?」

「がっるぐる!」(←訳:あっちだよ!)

 

 鼻が利く虎くん、

 店員さんたちを縛る縄を食いちぎりながら、

 瞬時に侵入者たちの居所を嗅ぎ当てましたよ。

 2階です! 

 宝飾品を展示するギャラリーが設営されているのは2階です!

 

「きええェ~いッ!」

「とうっ!」

「ぐるる!」(←訳:ガブリ!)

  

 テディちゃムズのバリツが、

 ユキノジョン・H・ワトソン博士のハイキックが、

 虎くんのひと噛みが炸裂します。

 モランクマ大佐は、ちょうど

 空気銃に空気を充填しようとしていたところでしたので、

 テディちゃムズの鋭い投げ技を避けようもありません。

 ハイキックを喰らった灰色クマともども、

 床に倒れ伏しました、が。

 

「ああッ! 宝物が……ない!」

 

 『クマロッズ』マネージャー氏の、悲痛な叫び。

 どうやら既に宝物は奪い取られてしまったらしく、

 6つの展示ケースは空っぽです。

 

「あわてちゃァ、だめだよゥ!

 たからものはァ、ここにィあるッ!」

 

 そう、宝物は消えたけれども、

 『クマロッズ』店外に出た者は誰もいない。

 であるなら、6つの宝物は、まだ店内に!

  

「なくなッたたからもののォ、とくちょうゥはッ?」

 

 テディちゃムズの質問に、マネージャー氏が

 6つの宝物の名称と特徴を説明するやいなや、

 おお!

 名探偵は『クマロッズ』のフロアを駆け巡り、

 次々と勝利の鼻息を鳴らしてゆくではありませんか。

 

「ふふんッ♪ ふんッ♫」

 

 《ダイヤモンドの首飾り》は、

 きらめくシャンデリアの中に。

 

 《オパールの花型ブローチ》は、

 観葉植物売場の花束の中に。

 

 《エメラルドのティアラ》は、

 コスメ売場のウグイスのフン洗顔剤の中に。

 

 《金貨が詰まったナポレオンの小型像》は、

 画材売場のデッサン用彫像の一群の中に。 

 

 《青い紅玉》は、

 文具売場の、青インク壺の中に。

 

 そして最後に、

 《ボルジア家の黒真珠》は――

 

「ここだッ!」

 

 はい! 食品売場の、最高級キャビア壜の中に、

 極小の密閉ケースごと《ボルジア家の黒真珠》は

 封じ込められておりました。

  

 チッキショー!せっかく隠したのに!

 と喚くモランクマ大佐と灰色クマに、

 到着したばかりのグレグスンベア警部が手錠を掛け、

 ロンドン警視庁へと引っ立ててゆきます。

 

「見事だったよ!テディちゃでス!」

「がるーるぐるがるる!」(←訳:スピード解決なんだ!)

「ふふんッふんッ♫♪」

 

 マネージャー氏や店員さんたちに御礼を言われて、

 荒らされた店内の片づけをお手伝いして、

 『ハチミツワイン販売整理券』を手に

 再び『クマロッズ』入口の列に並びながら、

 名探偵テディちゃムズたちは昇る朝日に願います。

 

「せかいじゅうのォ、みなさまにィ~!」

「良い年が来ますように!」

「ぐる!」(←訳:だね!)

 

       ~ おしまい(たぶん)~

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022!新春特別企画 《6つの宝物》 その③

2022-01-02 23:30:36 | ♪2022!新春特別企画♪

「なななっ、何事ですかっこれは!」

 

 長い歴史と伝統を誇る名門百貨店『クマロッズ』、

 その本店マネージャー氏が悲鳴を上げます。

 まあ無理もありませんよね、

 美々しく装飾が施された自慢の正面ドアが

 怪しい2クマ組によって

 ガシャーン!と破られてしまったとあっては。

 

「おちつきたまえッ、まねーじゃーくんッ!」

「あっ! 貴方は名探偵テディちゃムズさん!」

 

 動揺著しいマネージャー氏は、

 名探偵テディちゃムズの姿を認めるや駆け寄りました。

 

「助けて下さい、テディちゃムズさん!

 店内のギャラリーには現在、途方もない宝物の数々が!」

「はぁ? 宝物ぉ?」

  

 ユキノジョン・H・ワトソン博士は吃驚仰天いたします。

 どうしてまた『クマロッズ』百貨店にそんなものが?

 

「おどろくことはァないのだよゥ! わとそんくんッ!」

 

 鼻をフガフガと鳴らし、

 テディちゃムズは説明いたします。

 新春特別セールの目玉がハチミツワインだけとは限らない、

 むしろ、ハチミツワインはオマケのようなもので、

 真の”客寄せ”アイテムは、

 もっと高価で、もっと稀少で、もっと話題性のあるもの、

 例えば……《記念ジュエリー》。

 

「はいっ、その通りです、畏れ入ってございます!」

 

 マネージャー氏は紋章入り封筒をポケットから取り出しました。

 お得意様のみに送付されたという封筒の中の、

 便箋に書かれていたのは、

 『女王陛下の即位70周年《プラチナジュビリー》記念!

  超高級宝飾品を展示&抽選販売!』。

 

「ふむむゥ! りゆうがァ、わかッたよゥ!」

 

 なぜ、モランクマ大佐と灰色クマは行列に並んだのか。

 そう、ハチミツワイン整理券を求める列の先頭に立ち、

 長時間『クマロッズ』店を観察していたなら、

 宝物がどのフロアに運ばれたか、

 警備はどの程度のものか等、

 多くの情報が自然と見聞きできたでしょう。

 つまり、今頃モランクマ大佐たちは宝石を……?

  

「がるるる!ぐるがる!」(←訳:大変だよ!音がする!)

 

 と、皆の注意を促したのは虎くんです。

 おお、本当です!

 蹴り破られた扉の向こうから、

 がしゃん、ばりん、と何かを壊す音、倒す音がいたします。

 それに、バシュッ!という鋭い音も……!

 

「むッ! あれはッ!」

 

 おそらくは空気銃によって

 展示ケースの鍵が破壊された音だろうと、

 テディちゃムズは推理しました。

 ならば、もう躊躇していられません。

 ロンドン警視庁への急報をマネージャー氏に依頼し、

 破れた扉をくぐって、

 テディちゃムズたちは暗い店内に足を踏み入れます。

 

「わとそんくんッ、とらくんッ、こッちだッ!」

 

  (次回へつづく!)

 

  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022!新春特別企画 《6つの宝物》 その②

2022-01-01 23:43:13 | ♪2022!新春特別企画♪

大事件の、予感……!

例によって例のごとく、クマたちの年越しは

波乱なしには済まぬようですね。

 

「しィッ! しずかにィ!」

  

 名探偵テディちゃムズと、

 同僚のユキノジョン・H・ワトソン博士、

 友人の虎くんは

 『クマロッズ』百貨店発行の整理券を握りしめ、

 物陰でヒソヒソ話を始めました。

 

「あれにィみゆるはァ、ろんどんでェにばんめのォきけんじんぶつゥ!

 となりにィいるのはァ、ごうとうだんのォしゅりょうゥだよゥ!」

「何だって? あの紳士たちが?」

 

 テディちゃムズがこっそり指し示したのは、

 杖を持った黒クマと、眼光鋭い灰色クマ。

 ごく普通の、一般クマに見えますが……?

 

「あのォつえはァ、くうきじゅうゥなのさッ!」

「空気銃? ならば、もしかして!」

  

 ロンドンで2番目の危険人物にして、

 空気銃の名手といえば、

 ”インド駐留軍きっての虎狩り屋”と仇名された

 モランクマ大佐ではありませんか!

  

「がるる!」(←訳:怪しい!)

 

 “虎狩り屋”の名を耳にした虎くん、全身の毛を逆立てます。

 野蛮な”虎狩り屋”が高級百貨店の新春特別セールの、

 《ハチミツワイン&銘品ハチミツ詰め合わせ》整理券目当てに

 並んだりするものでしょうか。

 事実、整理券のために並んだクマたちは、

 いかにも食いしん坊らしく、

 胴回りふっくら、表情も穏やかで優しげなので、

 剣呑な雰囲気の黒クマと灰色クマは

 ひどく目立って、浮いております。

 

「やつら、何を企んでいるんだ?」

「うむッ! それがァ、もんだいィだよッ!」

 

 その時です、

 『クマロッズ』百貨店の制服に

 《市内配達主任 》の腕章をつけたクマが

 テディちゃムズたちの横を通りかかったのは。

 

「やあ! 名探偵テディちゃムズさんじゃありませんか!

 貴方もハチミツワイン争奪戦に参加したんですね」

 

 よく通る朗らかな声でした。

 テディちゃムズたちはギョッとしましたが、

 それ以上にギョギョッとした様子で

 こちらを振り返ったのは、

 黒クマと灰色クマ。

 彼ら2クマは、テディちゃムズの姿を認めるや否や――

 

  ガシャーン!

 

 なんと!

 ガラスの扉を蹴破り、開店前の『クマロッズ』店内へ

 走り込んでゆくではありませんか。

 

「しまッたァ、きづかれたかッ!」

 

 もちろん、テディちゃムズたちも

 じっとしてはおりませんよ。

 追跡開始です!

 

 

  (次回へつづく!) 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022!新春特別企画 《6つの宝物》 その①

2021-12-31 22:07:28 | ♪2022!新春特別企画♪

御無沙汰しておりました、

皆さま、年に一度のパラレルクマ・ワールドへ、ようこそ!

今回も、ベーカー街221Bの下宿から、

名探偵テディちゃムズが……あらっ?

ここはベーカー街じゃありませんね?

えーと、この通りは……ロンドンのケンジントン&チェルシー地区、

ブロンプトン・ロードでしょうか。

 

「しィ~ッ! しずかにィ!」

「がるるぐる!」(←訳:行列中だよ!)

  

 おお、失礼いたしました。

 あのぅ、それはそうとして、行列って何ですか。

 

「これェだよゥ!」

 

 ロンドンが、いえ、英国が誇る名探偵、

 テディちゃムズは一枚の紙片を取り出しました。

 名門百貨店『クマロッズ』の紋章入り用紙に

 大きな活字で広告文が印刷されています。

 

 《新春特別セール!》

 《限定!ハチミツワイン&銘品ハチミツ詰め合わせ!》

 《感謝の特価!先着39名に整理券を23時より配布》

 

 なぁるほど、ハチミツのワインですか。

 それでこうして、大晦日の寒風も厭わず、

 『クマロッズ』百貨店前に列を作っている訳ですね。

 あ! 整理券の配布が始まりましたよ。

  

 お待たせしました!と

『クマロッズ』百貨店の制服を着た係員さんが、

 ハチミツワイン欲しさに目を輝かせながらも、

 お行儀よく並ぶクマたちに整理券を手渡してゆきます。

 

「やあ! やっと手に入れたぞ!

 これで特製の熱々ハチミツワインをぐびっと……ん?

 どうしたんだいテディちゃムズ?

 お腹でも痛いのかい?」

「大丈夫?」(←訳:ぐるる?)

 

 名探偵テディちゃムズの盟友、

 ユキノジョン・H・ワトソン博士と

 友人の虎くんは訊ねます。

 数分前からテディちゃムズの顔色が良くありません。

 モフモフの眉間にもモフ皺が寄っています。

 お昼にスモークサーモンのサンドイッチを食べ過ぎたのかしら。

  

「ちッ、ちがうッてばァ!」

 

 慌てて否定する名探偵テディちゃムズ、

 周囲を気にしてか、ヒソヒソ声で、

 

「たいへんなことをォ、はッけんしちゃッたぞッ!

 これからァ、だいじけんがァ、おきるゥ……!」

 

 大事件、ですって?

 ああ、もうすぐ新年だというのに、

 名探偵テディちゃムズと友人たちは

 またしても事件の渦に巻き込まれてしまうのでしょうか。

 

 

  (次回へ、続く!)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする