「こんにちわッ、テディちゃでス!
ふじさんッ、まッしろォ~でスよゥ!」
「がるる!ぐるがるる=!」(←訳:虎です!大山方面も~!)
こんにちは、ネーさです。
富士山はもちろん、大山など丹沢の山肌も
ひんやりと雪化粧……。
大寒波よ早く去っておくれと念じつつ、
さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪
―― アガサ・クリスティー ――
著者はルーシー・ワースリーさん、
原著は2022年に、画像の日本語版は2023年12月に発行されました。
英語原題は『AGATHA CHRISTIE : A Very Elusive Woman』、
『とらえどころのないミステリの女王』と日本語副題が付されています。
前回記事では、
米国西海岸のミステリの王というべき
レイモンド・チャンドラーさんの研究本を御紹介しましたが、
こちらは、
誰もが英国ミステリの女王と認める
アガサ・クリスティーさんの伝記作品です。
「はいいろのォ、のうさいぼうゥ!」
「がるぐるるがるる!」(←訳:村の優しいご老人!)
ベルギー生まれの名探偵エルキュール・ポワロさんと、
のどかな村に暮らすジェーン・マープルさん。
今も世界中で読まれ、
愛されている名探偵を創出したアガサさんは、
これもまた広く知られていることですが、
ミステリアスな女性でした。
1890年9月15日、デヴォン州トーキーに生まれ、
1976年1月12日、ウォリングフォードの自宅にて没。
アガサさんが生涯に著した探偵小説66冊、
短編集14冊は、現在も版を重ね、
映画化・ドラマ化もされていて、
世紀をまたぐ活躍はまだまだ続きそうです。
「さすがァでスねッ!」
「ぐるるるるがるるる!」(←訳:それでこそ女王さま!)
アガサさんは、探偵小説の他に
『アガサ・クリスティー自伝』を著しています(1977年刊行)。
しかし、著者・ワースリーさんは
自伝の記述をそのまま信じることはしません。
イングランド南部育ちの、
良い家に育ち、英国的な文化を好む
典型的な英国女性、って……本当に?
そう、実は。
アガサさんの生家は、
父はNY生まれで両親は米国人、
母はアイルランドのダブリンに生まれ、
母方の祖父はドイツ人、
一家の財産を築いたのは米国人の父方の祖父、と
国際色豊かな家柄だったのです。
「おじいィさんがァ、あめりかのォひとッ?」
「がるるるっる!」(←訳:知らなかった!)
また、アガサさんの”家“は、
小説を書き始めて間もなかった頃の彼女に、
或る幸運をもたらしました。
近所に、人気作家の
イーデン・フィルポッツさんが住んでいる!
「わァおォ!」
「ぐるるがっるー!」(←訳:嬉しいラッキー!)
フィルポッツさんはアガサさんの作品を読み、
その素質を見抜いたのでしょう、
エージェントに紹介もしてくれました。
ただ、この時期のアガサさんは、
まだ”書くこと”に本気ではなかったようだと
ワーズリーさんは推測しています。
それは、裕福な階級の少女の、
趣味の域を超えていない創作活動、
だったのかもしれず、そして。
アガサさんの幸福な少女時代に
終わりが近付いていました。
「どれすにィ、ぼうしッ!」
「がるるる~!」(←訳:着飾ろう~!)
美しく着飾り、社交界デビューしたアガサさん。
何人もの求婚者が現われ、
背が高くて魅力的な23歳の若者――
アーチボルト・クリスティーさんと知り合い、
1914年に結婚するものの。
第一次世界大戦が始まり、アーチボルトさんは従軍、
アガサさんも赤十字のボランティアとして病院で、
その後、病院薬局で働き始めます。
薬局での仕事は、忙しいときもあれば、
ふっとヒマになるときもあって、
そんなスキマ時間に。
ついに、得たのでした。
『スタイルズ荘の怪事件』の着想を。
「ようこそォ、ぽわろさんッ!」
「ぐるがるるるる!」(←訳:この現実世界へ!)
いくつもの出版社から原稿を突き返されたのち、
1920年、ようやく出版されてからは
『秘密機関』『ゴルフ場殺人事件』『茶色の服の男』と
次々と作品を刊行、
1926年刊の『アクロイド殺し』によって
アガサさんは人気作家となります。
それは、傍から見れば、
探偵小説家として上り坂の、
充実した人生。
その最中に。
アガサさんは消えてしまいました。
「おうちにィ、いませんッ!」
「がるるるぐるるる!」(←訳:近所にもいないよ!)
1926年12月3日、
アガサさんは自宅を出たのち、行方不明となりました。
11日後に、保養地のホテルで”発見”されるまで、
彼女がどうしていたのか、
現在でも詳細は判明していません。
著者・ワースリーさんは慎重に、
アガサさんの行動を調査し、考察してゆきます。
失踪の理由、当時の複雑な状況、
大騒ぎするメディア、
家に戻ってからも
長く影を落とすことになった出来事は、
いったい何だったのか。
「ふうゥ~…ためいきィなのでス……」
「ぐるっるるるるぅ~…」(←訳:何だったのかなぁ~…)
と、御本の前半部分を
ざっとお喋りいたしましたが、
では、『失踪者』の刻印を背負うこととなった
アガサさんの後半生は?
小説で、映画で、
一度でもアガサさんの作品に接した経験があるのなら、
考えずにはいられない
《ミステリの女王》の、こころの奥底。
その深淵を、
息を呑み、圧倒されながらも、
ミステリ好きな活字マニアさんは、
ぜひ――ほんの少しだけでも――覗いてみてくださいね♪