テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

京都にて・その10/《若冲展》 江戸の夢。

2007-06-07 22:36:14 | 若冲展
 長々と《若冲展》について記してまいりましたが、
 そろそろ〆にいたしましょうか、テディちゃ。

「なにをかくのでスか、ネーさ? 
 この、おたまちゃんの、えのこと?」

 動植糸采絵の中で私が最も好きな一幅、
 『池辺群虫図』(ちへんぐんちゅうず)ですね。
 絵の左下隅に描かれている蟻くん、大好きです!
 でもね、展覧会を見終えた後、
 いちばん考えさせられたのは、
 美しさで人目を奪う動植絵ではなくて、
 意外にも(と言っては申し訳ありませんが)
 釈迦三尊像の素晴らしさと、
 その三像を中心とした空間構成でした。

「くーかん、ッてェ?」

 動植絵は、どれほど美しくても、
 核はあくまで三尊像なのね。きっと。
 三尊を基軸に動植絵が作り出す空間は、
 一種の、《御堂》、なのかもしれません。

 それに、大陸の影響、が割に濃いな、と。

 大陸、といっても、中国文化のことじゃなくて、
 もっと広大な、南アジアから黒海沿岸まで含む領域よ。
 
 三尊像にはっきり写されているでしょう、
 白象の背にはペルシャ絨毯、
 文殊菩薩像での青の使い方には印度の細密画を感じます。
 これらは東福寺にあった古画の模写だと伝えられているけど、
 純和風、かといえば、そうではないような。

 まあそれは別にしても、
 《御堂》なのよ、やっぱり。

 西洋ならば、キリスト像を囲む華麗なステンドグラス。
 イスラムの世界では、偶像崇拝は禁じられているけど、
 モスク内部を草花文様のタイルで装飾しています。
 
 若冲さんと大典禅師さまは、
 そういったことを知っていたのじゃないかしら、
 なんて想像したりするのだけど。
 
 もしや、お二方は、三尊像と動植絵を通じて、
 新たな宗教的空間を創ろうと試みたのかもしれない……。

「ほんとォー?」

 分かんないわ。
 そうかも、というだけ。
 ネーさの単なる妄想ですから。
 若冲さん御本人にそこのところを伺えたら
 本当のところが解るのか、
 それとも……大笑いされたりして。

「かも、ネ」

 

 最後に。

 相国寺さまに御礼申し上げます。

 まことに眼福させていただきました。

 ありがとうございます。




 
 
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京都にて・その9/《若冲展》 絵画のさだめ。

2007-06-06 23:41:12 | 若冲展
 短い期間で《若冲展》が終わってしまったのは、
 作品の保護のため。
 ではそこに、新しい公開方法のヒントが発見できぬか、
 ネーさはそう思うのです。

「あたらし? テディちゃ、わかんないでス」

 コピーを作っちゃいましょう、この際。

「こぴー? にせもののことォ?」

 ただのコピーじゃなくて、
 限りなく精密な複製画、ですね。
 エプソンやキャノンと手を組んで、
 実物大の複製図を製作するのよ。
 現代日本のCGと印刷の技術を総動員すれば、
 それくらい出来るはず。
 公開に充てるのはこちらの複製にすれば、
 本物が傷む怖れはなくなります。
 たとえ複製でも、長期間の展示が可能になれば
 今回のような混雑は起きないんじゃないかな?
 もっと穏やかに、
 礼を失せず、
 尊い仏様にするように、
 作品に向かい合える状況にはなるでしょう。

「しずかにみられるのは、かんげい、かもネ」

 本物を守るためには、複製で我慢、しなくちゃ。

 
 
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京都にて・その8/《若冲展》 やがてかなしき。

2007-06-06 23:19:45 | 若冲展
「ぶじに、みおわって、ヨカッタですね。ネーさ」

 ……そうね、夢のように美しい絵に会えて、幸せでした。
 でもね、ずっと心に引っかかっていることがあるのです。

「え~? なァに?」


~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~

 それは、《若冲展》第一展示室での出来事でした。
 偶然、どこかの大学の先生や生徒さんの集団と
 至近に居合わせることになりました。
 アカデミックな御話が聞けるかも、と期待した私でしたが、
 間もなく、びっくりしてしまったのです。
 
 毘沙門天立像の前に来た先生のお一人が、
 小さなペンライトを取り出し、
 やおら、立像の頭部を照射したのです。

 作品保護のため、ほの暗く保たれていた室内の、
 ガラスケースの中の毘沙門天さまのお顔が、
 鮮やかに浮かび上がりました。
 頬の線、鼻梁、両の瞳もが、照らし出されます。

 ええ?と、
 私、びっくりしてしまいました。
 けれど、周りの誰も咎めはしませんし、
 係りの人が慌てて飛んでくるようなこともなく。
 ではこれは悪いことではないのだろうな、と
 考えたわけなのですが。
 何だか、妙に、違和感が残ったのでした。

 ふと気付けば、第二展示室などでも、
 小型のスコープやレンズを手に、
 作品を鑑賞している人が大勢います。
 
 これはごく普通のことなのでしょうか。

 作品に集中せねばならかった美術館内では、
 あまり考えてもいられなかったのですが、
 見終わって暫くの後、
 もやもやとした違和感は強まる一方でした。

 この、違和感の正体は何なのでしょう。

 やがて、思い当たりました。

 あの毘沙門天さまは長らく秘仏とされ、
 とても大事にされてきた仏像なのです。
 なのに、あのライトは。
 礼を失する、という言葉を私は想いました。
 無遠慮に、顔を光で照らされて、
 仏像さまはどう思われたでしょう。

 いえ、仏像さまだけではないのです。

 若冲さんの絵の前で、
 私たちは礼にかなった振舞いをしていたでしょうか。
 答えは、否、です。
 
 若冲さんの絵は、美しい。
 あまりに美しくて、これが本来、仏画であったのを
 つい忘れてしまいます。
 釈迦三尊像の、
 さながら脇侍のように左右に控える花と鳥たちの絵は、
 おそらく「花鳥画」ではないのです。
 若冲さんが一筆一筆に渾身の祈りをこめた、仏画です。

 なんだか、悲しくなります。
 見たい、愉しみたいという欲に動かされ、
 土足で館内をうろつく私たちは、
 あさましい餓鬼のようです。
 
 若冲さんがこの有様を見たら、
 どう感じるでしょう。

 もしかしたら、
 公開しない方がよかったのではないか、
 とすら思いました。

~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ 
 
 もっとも、この喧騒は今に始まった事ではない、という
 考え方もあるのですけれど。

「どういうことでスか、ネーさ?」

 江戸のむかし、
 釈迦三尊絵と動植糸采絵が年に一回公開される時も、
 それはもう大変な人出で相国寺の境内は大混雑だったとか。
 門前も、市の如く。
 屋台がずらりと並び、物売りの声も喧しかった、と。

「にんげん、いつのじだいも、することなおんなじ、
 なのでスよゥ」

 そうかもね。
 でも、公開方法はもう。ちょっと考えてみないと。

「え。どうするのでスかァ?」

 うん、それは次回で。
 
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京都にて・その7/続《若冲展》グッズ。

2007-06-05 23:09:25 | 若冲展
 グッズ紹介、続けちゃいます。
 こちらは、ファイル、というのでしょうか。
 文具的な正式名称はよく分かりませんが。

「これもきれーい、でスよん」

 この他に、もちろん図録も購入いたしました。
 ……図録は、重かった、です。
 観客の皆さま、競うように買っていましたね。
 中には、二冊買ってるおばあさんもいて、びっくり。

「てんらんかいにひつようなのは、
 きょうじんな、あしこし! でスよ!」

 言えてます。
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京都にて・その6/《若冲展》グッズ。

2007-06-05 22:56:34 | 若冲展
 さて。
 《若冲展》についての御報告&感想は
 明日以降も続けたいのですが、
 ここでちょっと一息。
 ミュージアムショップで見つけたグッズなども
 御紹介いたしましょう。

 画像を御覧下さい。
 これは、カード、というべきでしょうね。

「えー? ネーさ、えはがき、じゃないのでスか?」

 葉書とは、ややサイズが違うのですよ。
 縦に細長いのです。
 横幅も、普通のハガキよりスリム。
 故に、カード、としておきましょう。

「むふ。きれいだから、とっておこう、ッと♪」
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京都にて・その5/《若冲展》へ。

2007-06-05 22:41:07 | 若冲展
 早朝から、相国寺周辺は大変な人出です。
 タクシーが何台も総門前に停まり、
 続々と老若男女が集まってきています。
 みなさま、《若冲展》へ向かう人たち。
 私も、人の流れに乗り、
 境内の北を目指しましょう。

 承天閣美術館はあちら、ですね。

「ネーさ、すごーいこんざつ、でスよ」

 しッ、テディちゃ。静かに。
 ここはまだ、当日券売り場前の行列です。
 はい、券をゲットして、
 ……入館する方々の行列はここ、ですか。
 うわ、これは。

「く、くるしいでスぅ」

 テントの下は物凄~い行列です。
 延々と人の列が前方に。
 美術館の入口は、全く見えません。
 ぎっしり、みっしり、人だらけ。

 人気の展覧会で並んだことは何度かありますが、
 これはちょっと、すごいです。
 近年稀にみる、というほどの、大行列人数。
 
 体調はまだベストとは程遠いのに、
 どうしましょう……。
 いえ、迷ってなどいられません。
 行列しなければ、入館できないのですからね。

「きゃッ、いたたァ、せまいよゥ、こわいよゥ」

 きっともう少しだよ、テディちゃ。
 もう少し……もう少し……だといいんだけど……。


~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ 

 並びました。
 当日券売り場で並び(15分くらい)、
 入館するために並び(1時間くらい)、
 館内でも並びました。
 
 もうひたすら並びました。
 並んだ果て、ついにめぐり合った若冲は、
 やはり、素晴らしかったのでした。


 展示は、第一展示室と第二展示室に分けられ、
 第一展示室の印象は、いわば
 「墨」。
 大書院の障壁画、昇鯉、龍……
 やや抑えた色調の画が多くを占めます。

 そして、第二展示室。
 絢爛たる色彩の動植糸采絵が、
 釈迦三尊像を中心に
 天上界の光を放っています。

 ひとの手が生み出した、最上の美です。


~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~

「きれいでスね、ネーさ」

 ええ、本当にきれいですね。
 言葉もない、言葉には出来ない美しさです。

 来てよかった、です。
 
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京都にて・その4/朝だ、相国寺へ!

2007-06-05 21:37:41 | 若冲展
 朝です。
 6月1日、金曜日の、朝がきました。
 窓から外を見やれば、
 良いお天気のようですね。
 高雄の山々も、昨日よりはっきり見えます。
 テディちゃ、これが京都の朝ですよ。

「あさ……ふああ、ネーさ、テディちゃはねむいでス……」

 余裕をもって出かけられるよう、早起きしましたからね。
 頑張らないと!
 今日こそ!
 《若冲展》を観るのだ!

「たび、って、あさからよるまで、
 いそがしーいのでスねェ……」
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京都にて・その3/ちょっぴり復活。

2007-06-04 23:29:39 | 若冲展
 ふう、です。
 休憩して、体調もやや持ち直したようです。
 では、ゆっくりゆっくり、出かけてみましょう。

「どこいくのでスか、ネーさ?」

 相国寺さんですよ。
 《若冲展》をやっているお寺へ、まずは。

「まだにゅーかん、できるのでスか? まにあう?」

 無理でしょうね。
 でも、どんな所なのか、知っておきたいし、
 京都の町を少しでも見てみたいしね。
 幸い、地下鉄の駅はすぐそこ。
 行ってみましょう。


 ……というわけで、どうにかこうにか、
 やってまいりましたよ。
 あれに見ゆるは、
 臨済宗相国寺派大本山相国寺総門!

「むう。ながいなまえ、なのでスね」

 本当はもっと長いのですが。
 さあ、門を潜って……お? あそこに、
 展覧会の係員さんらしきおにいさんがいます。
 あの~伺いたいんですけど?

「ネーさが、ねほりはほり、のあいだ、
 テディちゃは、ちょっとかんさつ……
 わあ、ひろいおてらでス。
 りっぱな、おどうが、いくつもありまスよ。
 いけには、はす。
 もりのように、ぶっとい、きがね、いっぱいなの…
 これが、きょうとのおてら、なのでスねえ……
 
 あ~、ネーさとおにいさんの、
 おはなしがおわったようでスよ?」

 テディちゃ、いろいろ情報を仕入れたわ。
 明朝の混雑予想とか、
 開館予定時刻や
 何時に並べばいいか、とか。
 よぉし、明日は頑張って早起きしなくちゃ!

「ふぅー、ネーさはやるきのようでスけれど。
 だいじょぶ、なのでしョか。
 
 あしたにつづく! のでス!」
 
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京都にて・その2/ブレーキ、とは。

2007-06-04 23:00:20 | 若冲展
 …はい。
 そうです、あらかじめ白状しておきましょう。
 私はへなちょこです。
 小心者です。
 健康優良児ではないのです。

「ネーさたらねェ、ぐあい、わるくなったのでスよ」

 面目もありません。
 ホテルに辿り着いたのはいいのですが、その前後、
 どうにも体調が優れず……。
 新幹線の揺れと疲れが重なったのが、
 たぶん、原因です。
 うう~、頭がすんごく痛くて、不整脈も。
 苦しいです。
 動けませんです。
 しばらくホテルのお部屋で休息です……。

「ネーさ、ネーさ、ほら、おそと。
 やまがみえるでスよ」

 ホントですね、テディちゃ。
 あちらは北西のようだから、
 高雄の山々でしょうか。
 いいなあ、あっちには高山寺があるんだわ。
 明恵上人さまのお寺にも行きたいのにね。

「けっこうとおい、みたいでスよ。
 みどりも、あんなにかすんでるもン」

 遠いねえ。
 どこでもドア、マジで欲しいわ……。
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京都にて・その1/いざ、とは思えど。

2007-06-04 22:43:02 | 若冲展
 ……ついにばらしちゃいました。
 京都へ、何しに来たのか、を。

「ばれちゃいましたでスね、ネーさ」

 相国寺さんが開催する

《開基足利義満六〇〇年忌記念 若冲展》、
  
 この展覧会を見るために、
 私たちは京都へ来たのです。

 動植糸采絵が120年ぶりに相国寺に戻り、
 釈迦三尊像と再会するとあっては、
 見逃すわけにはまいりません。
 何が何でも、行かなくては。
 んもう、絶対に。

 ……とはいえ、です。
 相国寺さんは、
 お寺さま数ある中でWEBがとても充実していまして、
 それを東京でチェックしていると、
 もう怖ろしい事態になっているらしい、と判明。
 展覧会会場の、入館までの待ち時間が
 60分とか、75分とか。
 うわー、どうしよう。
 考えただけで、めげそう……。

 でも、見たい!
 見たいじゃありませんか。

「そーだ、見ちゃえェーッ!」

 よし!
 見に行きましょう!

 そうして、私(とテディちゃ)は新幹線に乗り、
 京の都まではるばるとやって来たのでした。

 さあ、着いたぞ京都に!
 早く相国寺さんへ!
 と思ったのですが……。


 
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