「すッ、すかんくゥぼむッ……!」
兄マイクマフト氏の答えを聞くや、
ベーカー街221Bの暖炉の炎は揺れ、
名探偵テディちゃムズの背筋に戦慄が走りました。
スカンク ボム……!
愉快な年越しのパーティーとは正反対の、
なんという不吉で不穏な響きでしょうか。
スカンク、というからには、
おそらく、そのぅ、つまり――
「くちゃいんだねッ?」
あら、ハッキリ言いますね、テディちゃムズ?
「おう! 臭いのだ! 半端なく臭いぞ!」
ちょっとちょっと、お兄ちゃんまで。
「おほん! 1週間前のことじゃ、
オックマスフォード大学の嗅覚研究所の研究棟に侵入者があってな、
研究協力のため滞在していたスカンクの一族を無理矢理に連れ出し、
大型馬車に乗せて、いずこかへ走り去った。
ロンドンに通じる街道で目撃したとの情報があるが、
いまのところ、所在は不明だ。
……いや、不明だったというべきか」
「じゃあァ、もしかしてッ」
「もしかしなくてもっ、その通りじゃ!」
ショックで動揺し、怯え、警戒しているスカンクたちを、
大晦日だから、もうすぐ新年だからと、
ホットワインで酔っぱらい、
浮かれて大盛り上がりしているテディクマたちの中に
ポーンと放り出せば。
スカンクたちは平静ではいられないでしょう、
何が何だか分からぬまま、
とにかく身を守ろうとする訳で。
一方、テディクマたちは、
黒白のスカンクの姿を目にしただけで貧血を起こし、
悲鳴を上げて逃げ惑う、かもしれません。
「そいつは、大ごとだ!」
ちょうど今頃の、盛り上がりっぷり最高潮の
ピカデリーサーカスやトラファルガー広場で
そんなパニックが発生したなら。
怪我をする者が出るのは必至、ですよね。
「いそげッ、いそげッ! こうどうゥ、あるのみィ!」
「交通整理とパトロール強化を!」
ロンドン市内の地図を手に、
名探偵テディちゃムズとユキノジョン・H・ワトスン博士、
虎くんとマイクマフト氏は階段を走り下ります。
連れ去られたスカンクの一族を、
パニックの火種となるより先に見つけ出し、
無事に保護しなくては。
「いちばん怪しいのはピカデリーサーカスじゃ!」
マイクマフト氏の指示が飛び、
よぅし!とテディちゃムズは気合を入れます。
ピカデリーサーカスを目指すのなら、
そう、南へ、GO!ですよ。
~その3に(たぶん)続く!~