ロンドン市内の広場から、家々から、
新年おめでとう!の声、グラスをぶつけ合う音が空へ上ってゆきます。
ええ、2024新春特別企画もいよいよクライマックス!……なんでしょうか。
――はんにんッ、わかッちゃッたもん!――
名探偵テディちゃムズの衝撃的な発言に
ドラゴンくんと虎くんは、「えっ!」「がる?」(←訳:マジ?)と驚きました。
「はんにんはァ、ほらッ、あそこにィ~いるよゥ!」
ぴしり!とテディちゃムズが指差す先にあるのは、
オックマスフォードストリートの、一軒の商店。
煌々と照明を灯す店の窓ガラスには、
『高級 芳香用品各種 香りでリフレッシュ!』
『理想の香りを貴方に!』
などの文字が流麗にペイントされ、
その横には、
『イヤな匂いも当店の芳香剤でなかったことに!』
と書かれた真新しい大判ポスター紙が貼ってあります。
愕然と眺めるうちに虎くんとドラゴンくんは気付きました。
賑やかとはいえど、大晦日~元旦の、夜中です。真夜中です。
通りに面したお店はどこも扉を閉めて、ひっそりしているのに、
なぜ、このお店だけ、オープンしているのか。
それに……
『イヤな匂い』って、スカンク ボムを連想させますね?
スカンクボムの匂いには芳香剤で対抗しようぜ!といわんばかりの、
事情を熟知しているようなポスターの文言も
めちゃくちゃ怪しくありませんか。
「いやいやッ! なによりィ~あれだよゥ!」
さらに再び、テディちゃムズが指差したのは。
店内を行き来する、店長とおぼしき大きなテディクマの、
背広の肩にくっついている
黒と白の長めの毛。
「おおおう! あれはまさしく!」
「スカンク一族の毛だ!」
んまあ、
マイクマフト氏とユキノジョン・Hワトスン博士ったら、
「あッ? おにィちゃん!」とテディちゃムズが止めるのもきかず、
ロンドン警視庁のパトロール警官たちを指揮して
高級芳香用品店に殴りこ、いえ、なだれ込んでゆきますよ。
まいりましたぁ、すべて白状しますっ、ごめんなさぁい、
なんて降参の声がするからには、
テディちゃムズの推理はやっぱり当たっていたようですけれども。
「そもそもォ、はっそうがァ~ふるいィ!」
名探偵テディちゃムズ、熱く語ります。
イヤな匂いを芳香剤でごまかそうだなんて、前近代的思考だ!
必要なのは、消臭剤でしょ!
チカラにはチカラを、じゃなくて、
重要なのはバランス!
うんうん、そうそう、と仲間たちは頷いたのでした。
「じゃあァ、そろそろォ~」
「ぐるるるるがるるる!」(←訳:あらためてお祝いを!)
ハッピー新年!
よい一年になりますように!
ドラゴンくんが音頭をとって、せーの!で唱和すれば、
元気なお腹がぐーぐーと歌いますよ。
年越しパーティーを迎春パーティーに模様替えして、
さあ、御馳走をいただきましょう。
「みなさまァ、あけましておめでとうございまスゥ!」
~完~