「こんにちわッ、テディちゃでス!
こうようゥ、はじまッてまスゥ!」
「がるる!ぐるるがるる~!」(←訳:虎です!まずはサクラ~!)
こんにちは、ネーさです。
桜の葉が赤く色付いてきたせいでしょうか、
黄金色の栗ご飯を炊きたいな~などと夢想しながら、
さあ、秋の読書タイムですよ。
本日は、こちらの文庫作品を、どうぞ~♪
―― 琴子は着物の夢を見る ――
著者は ほしおさなえ さん、2024年8月に発行されました。
着物をめぐるミステリアスな物語は、
なんと、ここ八王子市が舞台ですよ。
「ひょえッ?」
「ぐるがるるる~!」(←訳:うわホントだ~!)
えーと、少しだけ説明させていただきますと、
20世紀の半ば頃までの八王子市は
《織物の町》
でありました。
そもそも多摩エリアは養蚕業が盛んな土地で、
蚕の卵や生糸(絹糸)を集積・輸送して
海外へ輸出するための重要な拠点の一つでした。
現在、横浜と八王子を結んでいる
JR横浜線(旧国鉄横浜線)も、
生糸をできるだけ速く横浜港へ送ることを目的に
敷設されたものなのだそうです。
「ゆしゅつゥ、だけじゃないィのでスゥ!」
「がるるるぐるが~る!」(←訳:織るのも得意で~す!)
ええ、そうなんです。
国内向けにも、
蚕を育てて、絹糸を縒って、
織り上げて反物(たんもの)にする。
ということで、
桐生市や高崎市など
上州の都市ともリンクして、
《織物の町》八王子は発展していった……のですが。
「ひゃくねんッ、たちましたでス!」
「ぐるるがるるるるるる……!」(←訳:明治は遠くなりにけり……!)
20世紀後半になると、
生糸・絹織物産業は徐々に下降線を辿ります。
八王子のそこここにあった絹工場(きぬこうば)は消え、
また同時に、
呉服店さんも減ってゆきました。
「じだいのへんかァ、でスゥ~…」
「がるるぐるる~…」(←訳:寂しいけどね~…)
そんな状況の中、
この御本の主人公さんたちが営む
『本庄(ほんじょう)呉服店』さんは、
なかなかの健闘っぷりです。
しっかりした店舗を構え、
昔馴染みのお客さまと昔ながらの商いをし、
その一方で、
オンラインでの販売や、
古い着物の買い取り・販売も行っているんです。
「あはァ、なァるほどォ!」
「ぐるるぅーるるるがるぐる!」(←訳:アンティーク品は人気あり!)
琴子(ことこ)さんのお仕事は、
リユース着物のお店『本庄の蔵』で、
着物の査定をすること。
お店に持ち込まれてくる着物の質を見定め、
値段をつける作業をしたり、
依頼されれば、
買い取りのため、出張したり。
「こんかいはァ~」
「がるぐ~る!」(←訳:出張で~す!)
国立市にある大きなお家に伺って、
お祖母さまの遺品だという
たくさんの着物を査定してみれば、
どれも質が良く、保存状態も良好でした。
けれど、一枚だけ。
ただならぬ気配が……?
「ふむむッ?」
「ぐるがるぐるる?」(←訳:この着物ですか?)
それは『銘仙(めいせん)』と呼ばれる
大正から昭和にかけて流行したもので、
特に女学生さんに好まれたと伝えられています。
その『銘仙』に
琴子さんは不穏な何かを感じました。
白と赤の、椿の文様。
花の奥から、声がする……。
「こッ、こえェッ??」
「がるるぐるー?」(←訳:突然のホラー?)
実は琴子さん、
”着物の心がわかる”ひと、なんです。
椿の『銘仙』は、
彼女の目に、耳に、
どんな宇宙を見せ、囁いてくれるのか――
世紀を隔ててつながる
琴子さんと着物の物語は、
日本の近代史そのもの、でしょうか。
多摩っ子さんはもちろん、
アート好き&着物好きな方々、
歴史好きな活字マニアさんも、
本屋さんの文庫コーナーで、
ぜひ、探してみてくださいね~♪