テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

2019!新春特別企画♪《白髭連盟》その5!

2019-01-03 23:06:25 | ♪2019!新春特別企画♪
 ゴオォン、ゴォ~ン……
 鐘が鳴ります、壮麗に。
 新しい一年の始まりを告げる鐘が。

「おぉ! 鐘だ! 新年のパーティーだ!」

 《白髭連盟》の一員として
 ハードワークをこなしたマイクマフト氏、もう腹ペコです。
 弟のテディちゃムズが用意した新年の御馳走を、
 パクリパクリと平らげますよ。
 
  

「パンに、ワイン!
 あっ、これこれ! サーディンも大好物~!」

  

「これも美味しい~!
 カラメルソースがいい~!」

「おにぃちゃんッ、たべすぎィ~!」

 名探偵テディちゃムズが諌めても、
 ほろ酔い気分のマイクマフト氏は聞く耳持たず。
 アイスクリームのおかわりを買ってくる!と、
 駆け出していってしまいました。

「アイスクリーム!
 いや、ケーキでもいいなぁ♪
 ……む? 気のせいだろうか?
 なんか、行き交う皆が、わしを見てはニカッとしているぞ?」

 ええ、その通り。
 マイクマフトおにいちゃんとすれ違うクマたちは皆、
 何故でしょう、ニコニコしておりますよ。
 いったい、どうして……あっ?

  

 って、おにぃちゃん!
 背中にまだ金のプレゼントくっつけたまま?!?

「わしって、そんなに魅力あふれるクマなんじゃろか……?
 まあいいや、みんな良い笑顔しとるもん♫」

 あのぅ、実はですね、
 マイクマフト氏がふわりふわりと歩いているのと同時刻。
 SNS上で或る情報が飛び交っておりまして。
 その内容たるや、誰が言い出したものか、

  “金色のプレゼントをくっつけたクマは幸運の使者”
  “金のプレゼントクマを見たら良いことありそう”
  “金のプレゼントクマで恋愛運アップ!”
 
「アイスクリーム屋さんはどこじゃろ?
 お? あれは?」

  

「いたいた、マイクマフトさん!」
「タイヘンですよー!」

 前方から走って来たのは、官庁街で顔馴染みの、
 公務員クマさんたちです。
 
「マイクマフトさん、至急のお召しです!」
「陛下が貴殿を御指名なんですよ!」
「世界には幸運が必要だとおっしゃって!」

「へ? バッキンクマ宮殿の陛下が?
 でもぅ、わしはアイスクリームを――」

 アイスクリームは宮殿にもございますから!
 と説得されたマイクマフト氏が
 ぎゅむむぅと押し込まれたのは、
 王室の紋章が刻印された馬車の
 赤いビロード張りの座席。

 その様子を見ていた通行人さんたちがまた、
 うふふ、と微笑み、
 走り出す馬車へ手を振ります。

 そう、笑う門には福来る。

 金色の贈り物をくっつけたクマに笑顔を貰えば、
 きっと、幸福がやって来る――

「金プレ? くっつけた?
 何ことやらさっぱりじゃ!」

 マイクマフトおにぃちゃんはああ言っておりますが、
 皆さまのもとに、
 どうか幸福な一年がやって来ますように。
 


 
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2019!新春特別企画♪《白髭連盟》その4!

2019-01-02 20:33:22 | ♪2019!新春特別企画♪
 ごぉん! どんごろろ~ん!
 
 あ、いえ、違います。
 ビックベンの鐘ではなくて、
 これはマイクマフトおにいちゃんが突風に煽られ、
 斜面を転がり落ちてゆく音ですよ。

「ひょわぁ! もうちょいで配達達成なのに~!」

 はい、《白髭連盟》の一員として、
 《宇宙サンタクロース連盟》に協力し、
 配り遅れていたプレゼントを配達途中のことでした。

 コロコロ体型のマイクマフト氏、
 斜面を転がり落ちてゆけば。

「ああっ! しまった!」

 手元からスッポ抜けたプレゼントの包みが、
 斜面の下の池に、
 ぽちゃん!と。

 言葉もなく、マイクマフト氏は見詰めます。
 プレゼントを呑みこんだ冬空色の水面を。
 
  

「うう、大切なプレゼントが……どうしよう……」

 と、そのとき。

「あなたが落としたのは、このプレゼントですか?」

 ぶくぶく、ざぶざぶ、ぽたぽた。
 水音をBGMに現れ出たのは――

「答えなさい。
 あなたが落としたのは、このプレゼントですか?
 それとも、この金のプレゼント?
 それとも、こちらの銀のプレゼントですか?」

 ぽかんとしていたマイクマフト氏、
 ハッと我に還って配達先の住所データと、
 目の前の性別不明正体不明の何者かを見比べます。

「……もしかして、
 『湖の謎々マニア』というのは、貴殿のことかな?
 ふうむ!
 ならば問題なし!
 それは貴殿のお子さんへのプレゼントじゃよ。
 届けるのが遅れてしもうて申し訳ないと伝えてくだされ。
 では、ご機嫌よう!」
 
  

「へ?
 ちょ、ちょっと、お待ちなさいってば!」

 もちろん、おにいちゃんに待つつもりはありません。
 誠意と知力体力を費やし、
 任務をやり遂げたのです。
 ロンドンへ帰ろう!

「お待ちというに!
 正直者には金のプレゼント~!
 銀のプレゼント~!……」

 背後のこだまを聞き流し、
 ロディくんの尻尾に装着した亜光速移動装置をON!
 ロンドンまでは、文字通り“ひとっ飛び”ですよ。
 
  

 ごぉん! どんごろろ~ん!

 はい、くどいようですが、違います。
 年越しの鐘の音色ではなくて、
 マイクマフト氏がロンドンに到着した音ですね。

「あッ? おにぃちゃんッ??」

 いきなり空から兄が降ってきて、
 名探偵テディちゃムズもビックリしましたが、
 チビっ子たちのもとにプレゼントは届いた訳ですから、
 結果良ければ、すべて良し。

「やあ、間に合った!
 熱々の丸焼きチキン! パンにワイン!
 年越しのパーティーだわい!」
 
  

 はしゃぐマイクマフトおにいちゃんの
 背中にひっついているのは、
 あらら?
 キラッと輝く、金のプレゼント……?



  ~その5!に続く~
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2019!新春特別企画♪《白髭連盟》その3!

2019-01-01 23:00:16 | ♪2019!新春特別企画♪
 もうすぐ、新年。
 テムズ河畔では花火の準備が進み、
 ロンドンの街路には祝杯気分の人々が繰り出してゆきます。

 その一方で、
 マイクマフト氏が出向いたのは。

  

「ふむ! 配達先は、この3ヶ所か!」

 《宇宙サンタクロース連盟プレゼント配達局ロンドン支部》にて、
 《白髭連盟》のマイクマフト氏が受け取ったのは、
 未配達のプレゼントと、
 配達先の住所データです。

「早く届けねば! 
 待ちくたびれたチビっ子たちの首が
 キリンのように伸びてしまったらタイヘンだ!」

 急げや、急げ。
 相棒のロディくんと、
 さあ、出発!

「今年の贈り物は、今年のうちに!」
 
  

「えーと、まずは、ここか……?
 『峠の先の、スズメのお宿』……?」

 住所データが示すのは、竹を編んで作った一軒の家。
 静かに扉をノックいたしますと――

「きゃあ♪ あんたが代理サンタね!」

 飛び出してきたのは、お母さんスズメと、
 ちゅんちゅんピーピーと賑々しい数十羽の仔スズメたち。

 プレゼントに群がる仔スズメたちの笑顔に、
 マイクマフト氏の頬も弛みます。
 お母さんスズメも大喜びで。

「あっ、そうそう!
 代理サンタさん、つづらはお好きかしら?
 うちには、大きなつづら、小さなつづら、
 ふたつあるんだけど、どっちか持ってかない?」

 ……大きいつづらと小さなつづら、ですか?
 それは……。
 
「い、いやっ、ありがたく存じまするが、
 マダム、今回は遠慮させていただきたいっ」

  

「ふぅっ! つっ、次は、ここだな……?
 『浜辺の風来坊』……?」

 2番目の住所データが示したのは、
 穏やかに波が打ち寄せる浜辺。
 そこでキョロキョロと、
 ひと待ち顔をしているのは――

「おお! あなたが代理サンタ殿かぁ!」

 甲羅も立派なカメさんが
 嬉しそうに砂の上でパタつきます。

「海の底でうちの子が待ちかねとるよ。
 そうだ、一緒に来てくれんかね、
 竜宮城へ?」

 ……浜辺……カメさん……竜宮城……
 それは……。

「い、いやっ、ありがたい申し出ですが、またの機会に!
 ムッシュウ、お子さんによろしく!」

  

「ふぅ、はぁ~…つ、次は、ここか……?
 おかしいな、誰もおらんようだが……」

 ここが最後の配達先か、と
 現在地と住所データを、
 マイクマフト氏が照らし合わせようとした
 その瞬間です。

「あっ! こ、こらっ!」

 マイクマフトおにいちゃんを襲ったのは、
 なんと、予想外の悲劇……!!


  ~その4!に続く~
 
 
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2019!新春特別企画♪《白髭連盟》その2!

2018-12-31 22:24:38 | ♪2019!新春特別企画♪
 窓の外に、浮かぶ街燈の灯。
 しんしんと、冷えてゆく空気。
 新年ももうすぐ、のロンドンに――

 「緊急出動とは、どういうこったぁ!」

 受話器に向かってボヤくのは、マイクマフト氏。

 名探偵テディちゃムズの兄にして、
 国家随一の博識を誇り、
 密かに“政府そのもの”と評される切れ者さんが、
 なぜか取り乱しておりますよ。

「なにぃ?
 プレゼントが届いておらんだと?!!
 そんなバカな!」
 
  

「ありえーん!」

 ごもっともです、マイクマフトおにいちゃん。

「わしの仕事に手抜きはないぞ!
 全てのプレゼントは完璧に配達完了したのじゃ!」

 『ええ、その通りです』と、通話相手は答えました。

  

 そも、《白髭連盟》とは。

 白い髭がこよなく似合う髭自慢さんたちによる
 (注:白い眉がお似合いの女性も可)、
 ボランティア組織なのです。

 そして、《宇宙サンタクロース連盟》のサンタさんたちも、
 99.999%が《白髭連盟》に加入しているため、
 いつしか両者はクリスマス時には協定を結び、
 夜を徹して国境なきプレゼント配達に邁進している、
 のですけれども。
 
  

「なに? 風邪にインフルエンザ?
 トナカイたちも過労でビタミン点滴中?
 ……そうか、北極域の白髭連盟員に病欠多発で
 配達に遅延が生じた、と?」

 プレゼント配達局の事務員さんの説明を聞き、
 マイクマフト氏は頷きます。

「先方に遅延は連絡済み、とな?
 では、プレゼントが届くのは今日か明日かと
 待っているチビっ子がいる、というのじゃな?
 今この瞬間も?」

 こうしてはおられん!
 と、マイクマフト氏は立ち上がりました。

「ゆくぞロディくん!
 聖夜は過ぎてしもうたが、まだ十二夜のうちだ!
 たとえ世界のはてだろうと、
 スッ飛ばしたれぃ!」

 新年目前の緊急出動、
 マイクマフトおにいちゃんの、手腕や如何に?


  ~その3!に続く~
 

 
 
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2019!新春特別企画♪《白髭連盟》その1!

2018-12-30 22:19:14 | ♪2019!新春特別企画♪
 ゴオォ~ン、ゴォ~ン……
 鐘が鳴ります、おごそかに鐘が。
 2018年が暮れてゆくよ、と
 ビッグベンの音色がロンドン市民に告げております。

 今年もやってまいりました、新春特別企画!
 例年のごとく、
 霧けぶるグレートブリテンの首都、
 ロンドンのダウニング街に響くのは……
 ん?
 ダウニング街?
 ベーカー街じゃないんですか?
 
  

「ふ~ぅ!
 困難なミッションを達成した後の、この充実感!」

 おや。
 椅子に掛けてくつろいでいるのは、
 名探偵テディちゃムズの兄・マイクマフト氏じゃありませんか。

「サンタクロースさんの手伝いは無事に終わったし、
 あとはもう、のんびり気ままに
 年越しすればいい。
 おっとと、
 扮装用のアゴ髭を外して、と」

  

「よし!
 ではいつものように、ディオゲネス・クラブに行って、
 美味しいパイとホットワインでもいただこうかな♪」

 官庁街と、首相官邸があるダウニング街、
 そのすぐ近くに
 ロンドン随一の変わり者が集まるディオゲネス・クラブがあり、
 マイクマフト氏の住居はクラブのほぼ真向いです。

 街路を渡れば、
 あたたかな炎が揺れる暖炉、
 極上のウィスキーが素早く給仕されてくる、
 座り心地の良いソファが待っている――

 ああ、なんたる幸運だろうか、と
 マイクマフト氏がにっこりした、その瞬間。

  

 リリン!と電話が鳴りました。

「うん? 何事じゃ?
 大晦日の、こんな時刻に電話とは」

 マイクマフト氏が受話器を耳に当てるなり、
 息せき切った様子の相手が言うことには。

『マイクマフトさん、
 白髭連盟より緊急出動の要請です!!』

「むむむむっ!」

 マイクマフト氏、
 思わず受話器を握りしめます。

 はて、白髭連盟とは?
 緊急出動とは何のことやら?
 マイクマフト氏の“のんびり年越し”は、
 いったいどうなるんでしょうか?


    ~その2!に続く~

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