テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

2023!新春特別企画《 砂山の影法師 》その④

2023-01-03 21:30:26 | 2023!今年も新春特別企画♪

 ゴゥゴゥ、ザブン、どんぶらこ。

 名探偵テディちゃムズと仲間たちが駆る高速艇は、

 暮れゆく旧年に別れを告げ、

 英仏海峡の荒波を乗り越え、

 南へと驀進いたします。

 そうして、ついに!

 

「みえてェきたッ!」

「うむ! ジャージー島だ!」

 

 テディちゃムズはテキパキと指示します。

 目印は、オレンジの樹がある海岸!

 ならば島北西側の某海岸ですな、と

 沿岸警備隊の艇長さんは、面舵一杯~!

 

「おおお! あれは!」

  

 オレンジ樹の海岸は、いやはや、ひどい有り様でした。

 いびつな形の砂山がそびえ、

 その間を不気味な影法師が跳ね回っています。

 おののいた警備隊の面々が

 銀玉銃を取り出そうとするのへ、

 

「ちょッとォまッたァ~っ!」

「撃ってはいかんぞ! あれは味方じゃ!」

 

 名探偵テディちゃムズとマイクマフト氏は、

 口々に叫んで制止しましたよ。

 

「ウサ調査員! わしじゃ!」

「ぶ、部長~っ!」

  

 よろよろと、砂山の陰から這い出してきたのは、

 白いウサギ。

 

「ウサくん! 大丈夫か? 怪我は?」

「部長……皆が……皆が、砂の山の地下道に……」

 

 言いさして、白ウサギは気絶してしまいました。

 ウサくんの介抱をお兄ちゃんに任せ、

 先頭に立ったのはテディちゃムズ!

 

「ボクたちも!」(←訳:がるるるる!)

「手伝うぞぉ!」

 

 砂山に穿たれた穴の中へと、

 クマとシロクマと虎が一気呵成に攻め込めば、

 ああ、そこには疲労と空腹のため

 動けなくなっているウサギたちと、

 ウサたちに襲いかかろうとしている

 覆面の集団が!

 

「きえええェ~いッ!」

「ぐるる~っ!」

 

 1R開始15秒でKO、いや失礼、完全制圧。

 どんな悪漢だろうと、

 バリツの巧手・名探偵テディちゃムズと仲間たちに

 敵うはずはありません。

 寸刻おかず、ウサたちは病院へ。

 覆面集団はジャージー島の警察署の拘置所へ。

 

「ありがとう! 助けてくれて!」

  

 マイクマフト氏が懐中に隠し持っていたハチミツをたいらげ、

 体力がを回復させたウサ調査員がお礼を述べます。

 

「ふう! 冷や汗をかいたわい!

 まさか、こんなことになるとは……!」

 

 この騒動の背後には或る《夢》があるのだ、と

 マイクマフト氏は説明します。

 

 それは、海峡トンネル。

 

 ウェリントン将軍とナポレオンがワーテルローで闘った頃からの、

 壮大にして遠大な《夢》。

 英仏海峡の地下にトンネルを造る、という

 夢の大計画です。

 それが近年、鉄道網が発達し、製鉄技術も向上して、

 海底トンネル実現を!の声が高まってきたのですが。

 

「わしは慎重派だ!

 我々はまだ海底を掘削するスキルを獲得しておらん!」

 

 マイクマフト氏のような慎重派と、

 過激な計画急進派、

 トンネル反対派もいますし、

 予算がないと嘆く派もいて大混乱する中、

 とりあえず地盤調査をしてみようという話になって。

 

 トンネル掘りに関する知識を買われ、

 海峡周辺の調査に駆り出されたウサギたちは、

 ハッと気付けば謎の襲撃者たちに囲まれておりました。

 彼らの執拗な攻撃をかわしつつ、

 追い立てられて辿り着いたのが

 ジャージー島の海岸。

 

 しかし……もうこれ以上、逃れる場所がありません。

 泳げぬウサギたちは砂山に穴を掘って身を隠し、

 ガラスビンにSOSの手紙を入れて海に投じては、

 ただただ救援者の出現を祈るばかり……。

  

「いいやッ! ゆめのォけいかくはァ、まだまだッ!」

「これからが本番さ!」

 

 迷い悩むウサギくんを、

 テディちゃムズたちは励ましました。

 すると。

 

 ジャージー島の浜辺に、

 大西洋の水平線に、

 いま日が昇り、

 陽光があたりを照らそうとしています。

 

 胸を張り、両耳と尻尾をピンと立てて、

 テディちゃムズたちは新年の朝日を仰ぎました。

 

「あたらしいィとしにィ、ひかりあれッ!」

 

 

   ⦅おしまい⦆

 

 

 

   新春特別企画にお付き合いくださり、

   皆さま、ありがとうございました♪

   2023年が、どうか良き年になりますように!

   「ことしもォよろしくゥ~」

   「がるるぐるる!」(←訳:お願いします!)

  ……それにしても、ウサくんたちを襲った覆面集団の正体は?

  マイクマフト氏はトンネル反対派から狙われているの?

  英仏海峡トンネル計画は、どうなるのかしら?

  この問題、いつか解決したいものです!

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023!新春特別企画《 砂山の影法師 》その③

2023-01-02 22:05:08 | 2023!今年も新春特別企画♪

 ザブーンと、パチパチ。

 新年まであと数時間になり、

 静かなケント州の浜辺に響くのは、

 波の音と、焚火にくべられた枯れ枝がはぜる音、

 そして……クマたちの唸り声です。

 

「ううむゥ! こういうゥ~ことかァ!」

  

 浜辺に流れ着いた数多のガラスビン――

 その中から回収された紙片がいま、

 焚火の熱によって変貌してゆきます。

 紙面に浮かび上がるのは、

 薄い茶色の文様……いや、文字!

 

「あぶりだしィだッ!」

「なんと!」

  

 炙り出し……!

 パッと見に分からない通信方法としては

 古典的ですけれど効果的ですね。

 テディちゃムズは文字が浮き上がった紙を並べ、一考します。

 

「e…j…r…c…そうかッ、わかッたぞゥ!

 おにいィちゃんッ、ちゃんねるゥしょとうゥだよッ!」

  

「「チャンネル諸島!」」

 

 マイクマフト氏とユキノジョン・H・ワトソン博士は

 揃ってグルルと呻きました。

 

 チャンネル諸島とは

 英仏海峡に浮かぶ島々のことですが、

 距離の点からはブリテン島よりもフランスに近く、

 独特の法律や税制を有する上に、

 英国の王室属領となっています。

 つまり、“王室の直轄地”ですね。

 

「くんくんッ! におうゥ! におうよッ!

 あぶりだしのォもじからァにおうゥのはァ、

 しんせんなァ、おれんじのォかおりィ!

 これはァ~…」

「ジャージー島じゃな!」

 

 マイクマフト氏は頷きます。

 チャンネル諸島最大の島は、ジャージー島。

 英国本土よりもはるか南にあるジャージー島は、

 オレンジやレモンの樹木が茂る

 リゾート地としても知られているんですね。

 

「こうしてはおれん!

 沿岸警備隊に連絡を取れ!

 高速艇を用意するのじゃ!」

  

 やる気になったマイクマフト氏は

 誰にも止められません。

 浜辺を走り、港を走り、

 埠頭で沿岸警備隊の高速艇に飛び乗るや、

 ぴしり!

 と南を指します。

 

「チャンネル諸島のジャージー島へ、急げ~!」

 

 マイクマフト氏をここまで慌てさせるとは、

 ジャージー島にいったい何が……?

 

 

  ⦅次回へ、続く!⦆

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023!新春特別企画《 砂山の影法師 》その②

2023-01-01 21:45:49 | 2023!今年も新春特別企画♪

 ゴォーンゴォーンが、ザブーンザブーンに。

 いつものロンドンの鐘の音ではなく、

 ケント州の波の音がBGMとなった年越しの夜――

 

 名探偵テディちゃムズ一行がロンドンからケント州へ、

 遠征してきた理由はここにある!

 と、テディちゃムズの兄・マイクマフト氏は力説します。

  

「見たまえ! 

 ガラスのビンが運んできたものを!」

 

 マイクマフト氏によれば、

 それは“ここ一週間の異変”なのでした。

 手紙が封じ入れられたガラスビンが次々と

 ケント州の浜辺に流れ着き、

 最初の1個2個の頃は、まあ珍しくないさ、

 と笑っていた浜の管理人たちも、

 5個、6個、7個……とビンの数が増えてゆけば、

 ちょっぴり不安を覚え始めますよね。

 

「そこで! わしの出番じゃい!」

 

 相談を受けたマイクマフト氏は

 ただちに弟の名探偵テディちゃムズたちを伴い、

 現地に出向いて調査を開始しました。

 なるほど……これは怪しい!

  

「おりょうりのォ、れしぴィ?」

「何かの冗談かな?」

 

 ビンの中の手紙に記されていたのは、

 見知らぬクマへのロマンあふれる挨拶でも、

 恋文でも、文学作品でもなく、

 『ビートンクマ夫人の家政読本 《ハチミツおやつ》の章』

 を書き写したものでした。

 

「疑問は尽きん!

 なぜ、全クマが知る人気レシピを

 わざわざガラスビンに入れて流す?

 そも、どこからビンを投じた?

 こういう謎を、わしは放っておけんの……

 ハックション!」

  

 クション、ハクション、と

 冬の海風に当てられて

 立て続けにくしゃみをするマイクマフト氏を気遣い、

 名探偵テディちゃムズは

 浜辺に小さな焚火をおこします。

 

「おにいィちゃんッ!

 ここらでェ、ひとやすみィしようッ!

 たきびのォそばでェあたたまろうよゥ!」

「おおう、ありがたや!」

  

 焚火の熱を慕い、

 新たな手紙入りガラスビンは埋まっていないか、と

 波打ち際を捜索していた虎くん、

 ユキノジョン・H・ワトソン博士も

 集まって来ました。

 

 ああ、揺れる炎は温かい。

 かじかむ指先、凍える尻尾もホカホカしてきましたよ。

 

「ふぅ、これでハチミツワインの一杯もあれば……

 やっ! ややっ!!」

 

 不意に素っ頓狂な声を上げたのは

 ユキノジョン・H・ワトソン博士でした。

 

「テディちゃムズ! こ、これは……!」

 

 

   ⦅次回へ、続く!⦆

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023!新春特別企画《 砂山の影法師 》その①

2022-12-31 23:01:41 | 2023!今年も新春特別企画♪

 皆さま、お久しぶりでございます。

 年に一度のお遊び企画、

 パラレルクマワールドの冒険へ、ようこそ!

 今年の大晦日もロンドンの街に

 ザブーンザブーンと響く鐘の音を聴きながら……

 え? ザブーン? ザブーンって?

 鐘の音じゃないわ! ここどこ~っ?!?

 

「むむゥ! きたぞォ!」

「うん!ちょうど良い加減の波だ!」 

  

 ザブーン、ザブーンと波が寄せくるここは、

 はい、もちろんクマたちの国の首都・ロンドンではなく。

 鉄道に乗って南へ、南へ、とやって来た

 ケント州の海岸なのでございます。

 

 そこで名探偵テディちゃムズ、

 盟友のユキノジョン・H・ワトソン博士と

 友人の虎くんが

 何をしているのかと申しますと……

 

 ちょ、ちょっと、名探偵テディちゃムズさん!

 浜辺の砂を掘り返しているばかりで、

 カメラにお尻を向けるなんて、失礼じゃありませんか?

  

「とりこみちゅゥ、なんだよゥ!」

 

 んもう、ユキノジョン・H・ワトソン博士まで!

  

「ザクザク! ぼくも取り込み中~!」

 

「ホッホッホッ!

 まあ堪忍してやってはくれまいか。

 今は危急のときなのじゃ!」

 

 おや、その声は。

  

「皆さん、お久しゅう! お兄ちゃんじゃよ!」

 

 あら、名探偵テディちゃムズの兄、

 マイクマフト・ホームズさんじゃありませんか。

 もしや、今回の砂掘り騒ぎはマイクマフト氏が?

 

「その通り!

 わしが依頼人となり、

 行動せよテディちゃムズ!と命じたのだ!」

 

 マイクマフト氏といえば、

 “英国そのもの”とさえ呼ばれる特別公務員さんですが、

 自宅とオフィスとディオゲネスクラブ以外へは

 お出掛けしないという評判を覆して、

 こんな辺鄙な海岸で年越しをするとは、

 またいったいなぜ……?

 

「うむ! それには深~いワケがある。

 この海岸周辺に於いて

 国家の危機につながる異常事態が発生したのだ!

 ワシとしては到底捨て置けん!

 万事を解決し遂げるまでは、

 新年の御馳走をいただく気にもなれんぞ!」

 

 ははぁ、えー、そのぅ、それは……

 どうような“危機”なのでしょう?

  

「うむ! 一言でいえば、その答えは……これじゃ!」

 

 ごとり!とマイクマフト氏が取り出したのは、

 え? ガラスの空きビン、ですか……?

 

「すべてはここから始まった!」

 

 ビンが招く大事件とは、はたして……?

 

  ⦅次回へ、続く!⦆

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする