この秋の台風12号の犠牲になったわたしの古い友人、中村義明君が熊野の山で生き抜いた証の第6回目。
十数年前に彼が、科学雑誌「ウータン」に寄稿したものです。
ここに家庭の事情による変化が出てくる。
「私が自分の夢を追求するのと同じように彼女(奥様多加子さん)がそうするのはもっともだし…」と。やはり、彼は「夢」を持って山の生活に入ったのだ。
「山ぶと」という言葉はわたし初めて聞く。「山ぶとに誘って下さるのは村の人に信頼されるということであり…村の人たちも私たちがいつまたどこかへ出て行くかもわからないと思っていたかもしれない。わたしたちも少しずつ、この村に根を下ろしてきたのだろうか。」
これだけの言葉のなかに、彼の人柄と努力が見える気がする。どれだけ地道な努力をしたことだろうか。
鷹を見た、ムササビを見た、ブロッケンを見た。生き生きとした話題だ。「山が祝福してくれてるようで、とても有難いなと思う。」と。
なんと初々しい、なんと素直な。
つづく