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コーヒーカップの耳

出久根達郎さんから谷沢永一さんへ

2019-11-06 17:33:24 | 本・雑誌
出久根達郎さんの『逢わばや見ばや』(講談社文庫・2001年刊)を読み終える。

これは出久根さんが直木賞(1993年)を取られて間もないころのエッセイ集。
「室内」(1993年4月号~)に連載されたものが先ず単行本(1997年)になり、そしてこの文庫本となっている。
内容は出久根さんのエッセイ風自伝である。
茨城県の山奥の中学を卒業して東京の古本屋さんへ就職した15歳から19歳までが書かれている。
エピソードごとに短く区切られているので、いたって読みやすい。
しかも出久根さんですからね、読みやすいのは当然。そして面白い。
わたしと出久根さんはほぼ同年代(わたしが一歳上)なので出てくる話に共通の話題が多い。しかもわたしと同じ学歴の中卒だ。
切手収集の話も出てくる。わたしも同じだ。江戸川乱歩を読みふけったのも同じ。
なんともなじみやすい作家さんである。

次に読み始めたのが、谷沢永一さんの『雑書放蕩記』(新潮社・1996年刊)。

出久根さんが拙著『触媒のうた』を推薦して下さった文章の中に谷沢さんに関する部分がある。
宮崎翁の業績、著書をいくつか紹介したあと、次ように続く。
《石川啄木と交流のあった大正期の民衆派詩人・富田砕花の伝記『人の花まづ砕けたり』が、宮崎氏の代表作であろうか。この人の著書が素晴らしいのは、えっ、というような秘話に満ちているからである。谷澤永一氏がひいきにしていたのも、その辺に理由があろう。》
残念ながら谷沢氏は8年前にお亡くなりになっている。
わたしにとっても少し縁があるわけだ。
しかし、わたしは恥ずかしながら、谷沢さんの著書を読むのは初めて。

これは読み始めてすぐのページ。
←二段階クリック。
なんと歯切れのいい文章でしょうか!
《私はうろたえた。あせった。心臓が高鳴る。どうしようか。汗がふきだす。体が前後に揺れる。世にもおそろしい体験であった。》
こんなんばかりではありませんが、とにかく読みやすい。読者に対するサービス精神が旺盛だ。
やっぱり文章は読みやすいのがいいですね。
そして、つとに有名ではあるが、谷沢さんの読書遍歴の凄さが、この本を読めばよくわかる。
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