『遠い「山びこ」』(佐野眞一著・1996年刊・文春文庫)を読み終えた。
単行本は1992年に文芸春秋社から出ている。丁度30年前だ。
凄い本だった。自分の子ども時代と重なる部分が多いので余計に感動した。
出久根達郎さんが解説を書いておられると知って図書館からお借りしてきた本。
その「水蜜桃の種」と題された解説、心の底を打つ解説だ。ご自分の体験を語っておられる。
その一部。
《私が用いた教科書に出ていた作品は、江口江一の「母の死とその後」である。
「僕の家は貧乏で、山元村の中でもいちばんくらい貧乏です」という書き出しを、先生に指名された者が朗読したとき、教室に軽い失笑が起こった。私だけが笑えなかった。顔がこわばった。自分が笑われたような気がしたのである。人の口から貧乏という言葉をきくのが、貧乏の当事者だっただけに、とてもいやだった。次の日は学校を休んだ。私は江口江一の作文を、ひどくうらんだのである。
「山びこ学校」の名称は、だから私には良い響きではない。
この題名の本をじっくりと読んだのは、集団就職で上京し、古本屋の店員になってからである。美乏という語が出てきても、笑うものはまわりにいない。私は心置きなく、じっくり読んだ。江一に対しても恨むどころか、「山びこ学校」の生徒43人の中で、もっとも親近感を覚えた。》
この解説は4ページあるが、わたしは、本を手に取った最初と、読み終えてさっき、もう一度読んだ。
出久根さんのお人柄がよく解る解説だ。
『触媒のうた』 出久根さんが帯文で推奨してくださっている本。
単行本は1992年に文芸春秋社から出ている。丁度30年前だ。
凄い本だった。自分の子ども時代と重なる部分が多いので余計に感動した。
出久根達郎さんが解説を書いておられると知って図書館からお借りしてきた本。
その「水蜜桃の種」と題された解説、心の底を打つ解説だ。ご自分の体験を語っておられる。
その一部。
《私が用いた教科書に出ていた作品は、江口江一の「母の死とその後」である。
「僕の家は貧乏で、山元村の中でもいちばんくらい貧乏です」という書き出しを、先生に指名された者が朗読したとき、教室に軽い失笑が起こった。私だけが笑えなかった。顔がこわばった。自分が笑われたような気がしたのである。人の口から貧乏という言葉をきくのが、貧乏の当事者だっただけに、とてもいやだった。次の日は学校を休んだ。私は江口江一の作文を、ひどくうらんだのである。
「山びこ学校」の名称は、だから私には良い響きではない。
この題名の本をじっくりと読んだのは、集団就職で上京し、古本屋の店員になってからである。美乏という語が出てきても、笑うものはまわりにいない。私は心置きなく、じっくり読んだ。江一に対しても恨むどころか、「山びこ学校」の生徒43人の中で、もっとも親近感を覚えた。》
この解説は4ページあるが、わたしは、本を手に取った最初と、読み終えてさっき、もう一度読んだ。
出久根さんのお人柄がよく解る解説だ。
『触媒のうた』 出久根さんが帯文で推奨してくださっている本。