続 コーヒーカップの耳
12「少女」
家におったらキミ婆(祖母)が「学校は?」て聞くから 「今、工事中」 とか言って誤魔化したりしてた。そやから 学校から毎日入る電話にキミ婆が出ないように 鳴ったらあわててわたしが取るようにしてた。そやけどそのうち 面倒くさくなって 非通知にしてやってん。ほんなら先生 お父(と)んの職場にかけよって ややこしなって。先生に「お願いやからお父んの職場にはかけんとって」て頼んだり大変やった。お父んには よォ言われた。「親の顔をつぶすな。やっぱり母親のない子は と言われる。俺は職場で端っこの方を歩いてる」て。
高二の時 「お父んが死んで お母さんが生きててほしかった」 て ゆうてしもてん。ゆうてから ヤッバー思たけど その時はすぐに謝れんかった。それがずーっと胸の奥に残ってて気になっててんけど こっちに出てくる前に 「あの時はごめんな」 て やっと謝ってん。そしたら お父んも覚えとって 「あれは辛かった」 てゆうから 「そやけど お父んも ブッチャケ悪かったよな」て またゆうてしもた。
いよいよ出てくる時に キミ婆と お父んに手紙を書いた。口でゆうたら ついため口になってしまうから。いっつも反抗的なことゆうてたけど ほんまは「ありがとう」て思ててんで て。ほんで 直接よう手渡さんから 後で読んでくれるように 置いて出て来てん。そしたら こっちに来てから電話がかかってきて キミ婆は 「お金を置いて行ってくれたと思た」てゆうねん。そやけど泣いとった。ほんでお父んは「遺書やと思た」て。これも 泣き声やった。
12「少女」
家におったらキミ婆(祖母)が「学校は?」て聞くから 「今、工事中」 とか言って誤魔化したりしてた。そやから 学校から毎日入る電話にキミ婆が出ないように 鳴ったらあわててわたしが取るようにしてた。そやけどそのうち 面倒くさくなって 非通知にしてやってん。ほんなら先生 お父(と)んの職場にかけよって ややこしなって。先生に「お願いやからお父んの職場にはかけんとって」て頼んだり大変やった。お父んには よォ言われた。「親の顔をつぶすな。やっぱり母親のない子は と言われる。俺は職場で端っこの方を歩いてる」て。
高二の時 「お父んが死んで お母さんが生きててほしかった」 て ゆうてしもてん。ゆうてから ヤッバー思たけど その時はすぐに謝れんかった。それがずーっと胸の奥に残ってて気になっててんけど こっちに出てくる前に 「あの時はごめんな」 て やっと謝ってん。そしたら お父んも覚えとって 「あれは辛かった」 てゆうから 「そやけど お父んも ブッチャケ悪かったよな」て またゆうてしもた。
いよいよ出てくる時に キミ婆と お父んに手紙を書いた。口でゆうたら ついため口になってしまうから。いっつも反抗的なことゆうてたけど ほんまは「ありがとう」て思ててんで て。ほんで 直接よう手渡さんから 後で読んでくれるように 置いて出て来てん。そしたら こっちに来てから電話がかかってきて キミ婆は 「お金を置いて行ってくれたと思た」てゆうねん。そやけど泣いとった。ほんでお父んは「遺書やと思た」て。これも 泣き声やった。