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災害派遣の自衛隊員は

2019-08-15 16:47:40 | 本・雑誌
小説『ハリケーン』だが、

若い自衛隊員が登場する。
中村一等陸士。
子どもの時に一家で交通事故に遭い、自分一人が助かる。
叔父に育てられるが、肩身の狭い思いをし、学校を出てすぐに自衛隊に入る。
土砂被害の広島、安佐北区へ救出活動に行く。
5年前のあの、77人が亡くなった安佐区である。
そこで一人の子供を救出する。
その子はその災害で家族をなくし、一人だけ助かる。
上司からは事前に「個人的な感情を入れるな」と指導されていた。
災害派遣は、任務を遂行するだけだと。
ところが半年後、その子からひらがなだけの宛名の手紙が来る。
「いっとうりくし、なかむらしんいちさま」と。
返事を書くことをためらったが、自衛隊の絵葉書に名前だけを書いて送る。
受け取ったということを知らせるためだけに。
それから毎月、子どもから手紙がくるが、返事を書いたことがない。

と、こんな場面があって切なくなる。
著者の高嶋哲夫さんは、この小説を書くにあたって、やはりよく取材されている。
日本の災害のことも自衛隊のことも、数字を交えて詳しく書かれている。
単なる数字の羅列ではなく、生きた文章の中にあって、読みやすい。
まだ50ページをちょっとすぎたところだが、おもしろい。

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