◎ペンギンが教えてくれたこと(Penguin Bloom)
シドニー郊外の海辺ってのは、なんてまあ好いロケーションなんだろう。住みたくなっちゃうよ。
で、そこに棲息してるのがカササギフエガラスなんだそうで、実はこのカラスの亜種は初めて観た。日本に棲んでるカササギとは顔がまるで違うんだなあ。ま、そんなことはともかく、タイで展望台から落ちて半身不随になった海好きの母親ナオミ・ワッツが、夫アンドリュー・リンカーンや子供たちに励まされながら心を開き、やがてカヤックと出会うことで海に戻り、家族の再生が為されるっていう実話を元にした映画なんだけど、この心を開く鍵になってるのが怪我をして飛べなくなったカササギフエガラスで、白黒の体毛からペンギンって名づけられるんだね。あ、それでペンギンなのかってそのとき初めておもったけど。
なんにしても、この夫がいいんだ。怒らないし、憤りかけたときも堪えて気持ちを落ち着かせてから話すし、カヤックを見つけてくるのもそうだし、常にカメラに収めてるし。つか、長男もいいんだ。自分が展望台に誘ったせいで母親が転落したわけで、カササギが同類に襲われてどこかへ逃げていっちゃったのも自分が外に出したせいだとおもってるのが、やがて母親が再生することによって自分の心も再生していく。
上手な映画だね。
ただまあ上手といえば上手なんだけど、なにもカササギと出会わなくても、この母親は復活するんだろうなって気はする。その後、カヤックや障碍者のサーフィンで世界チャンピオンになったりしてるわけだから、血を吐くような努力はあったにせよ、心はかなり強靭だったんじゃないかな。だとしたら、カササギは教えたわけでじゃなくて、復調するきっかけみたいなものだったんじゃないかって気はする。