Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

PEN LIFE1027. 作家と温泉地の関係性

2014年08月23日 | field work
 「実はこの娘さんは、別府の温泉街のバーに通い詰めたお客さんが、当時のバーの女の子との間に設けた子なのよ。でっ、その後女の子は店を構えて女将となり、その女将が一人で育てあげたわけさ。娘さんは最近地元の短大を出て一人前になったそうよ」。
 温泉地別府の街を歩いていると、子供連れの若妻を見かけるとき、私は、そんな勝手なストーリーを想像してしまう。もちろん実際には、マンション暮らしの普通のサラリーマンの親子なのだろうけど。
 温泉地には、そんなアウトロー的ストーリーが結構昔から数多く存在していたのだろう。だから小説の題材が温泉町には、いくらでもころがっていた。そして近代の小説家達は温泉街へ長逗留し、素材を探しながら小説を書いていたのかも知れない。つまり温泉地は、小説の題材に事欠かなかったのではなかろうかと、私流の推測をしていた。
 夏目漱石の坊ちゃんに始まり、川端康成の伊豆の踊子や雪国、太宰治の津軽、志賀直哉の城之崎にて、と温泉地を題材にした小説は数多い。それも名作ばかりだ。そして谷崎潤一郎にいたっては、箱根塔ノ沢の温泉旅館からやってきた行儀見習いの福子さんと恋仲になったぐらいだ。
 つまり近代日本文学の作家と温泉地の関係性は大変濃厚である。そんな私の好き勝手な想像力が、温泉街の露地徘徊を面白くさせてくれる。
 多くの逸話を生んだかも知れない温泉地も、現在は役目を終えてしまったかのように元気がなく、草食系男子のつまらぬお相手をしているのではなかろうか。

別府市
OLYMPUS OM-D E-M5 M.ZUIKO DG17mm/F1.8
ISO200,露出補正+1.3,f3.5,1/300
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