Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

NIKON FREAK478. 小説:小樽の翆98. 房チャンの話

2020年05月16日 | Sensual novel

 今日は、翆が準夜勤の日だ。夕方出勤し、真夜中に帰ってくる。最も楽しい勤務だ。というのも勤務の後で真夜中の遊びだ。元気なナースなら車で遠出して朝まで遊ぶという強者もいる。

 といって家の掃除や洗濯をしたらなすすべもなく、翆を抱きかかえて陽だまりで老人のようにぬくもっているだけだが。それであきると、料理だ。今日はアサリのパスタにしようという話になって、アチキはお手伝いしている。そんなことをしていると夕方も近くなり、翆がシャワーを浴びてウキャー寒い!、といって全裸でインナーを物色している。そういう光景は、いつものことなんだ。

 今は開いているお店が少ないから、三四郎でお肉かなぁー・・、そういって翆は出勤していった。

・・・・

 最近病院も騒がしいので、コンビニで翆と待ち合わせて、

翆「房チャンの店にゆこうよ。お店はしまっているんだけど、馴染みのお客だけの予約限定でいつも1組だけなんだって。アチキ、房チャンのお店に協力してあげて」

房チャン「あら、今日はオスとメスの臭いがしないねぇー、仲良くやってる?」

翆が腕をくんできて、この通りだって。それで房チャン定食が、カマスの白焼きと、ジャガイモの煮物と、ああたたかいご飯に味噌汁。

房チャン「病院だからいろんな患者さんが来るのよ、年齢、国籍、職業、犯罪者、それにヤクザの親分さんも」

翆は食い意地が張っている。多分過激な勤務だったのだろう。栄養をつけているというべきか。

房チャン「あるとき年配の70代ぐらいのヤクザの親分さんが軽い脳溢血で運ばれてきたの。多分お酒の飲み過ぎね。でっ、私がいる病棟の個室に入院してきたわけ。そこまでは普通の患者さんね。

そのあとが違うの、カタギじゃない人達が親分さんの病棟からエレベーターまでズラッとならぶの。キチンとした身なりもいれば、ジャージーはいてる若いヤクザもいて。あっ、それやってほしくないんですけど・・・、だってナースの仕事にはとても邪魔なんだけど、面と向かっていうわけにゆかないでしょ。だからこっちも邪魔だなーと思っていると、相手も気がついてカートが通るときは避けてくれるわけ。その後はナースがくると決まったように身体を動かすのね。それって笑っちゃうけど、笑うわけにはいかないでしょう。それで病室には芸能人の楽屋みたいに沢山の花で、もう臭いのるつぼなのよ。それが病室の外まであふれているの。なんか困ったなぁーと思っても、言いそうになるとすると目をギラッとむくの、あっ、つまりダメなんだと悟るわけ。だからメチャ緊張するのよ」

相手が悪かった・・・

「でっ、あるとき親分さんがナースコールしてきたの。それが小銭がないと騒ぐから、いくらなくしたんですかと尋ねたら20万だって。ナースはええっ!、よ。難儀な相手がしかも20万なくした・・みんな某然よね。じょうがいなからセイフティボックスをつかうようにお願いしたけどね。そのときの親分さんの目つきは、お前か!、とギラッとした目つきなのよ。でも何も言わないのよね。ナースがそんなことするわけないのにね」

ヘビににらまれたカエルですか・・・でっ、20万は事件は解決したの?

「翌日になって親分さんのジャケットからてできたんだって。それを聞いてナースは、みんな緊張感がほどけて、がっくり疲れたー・・・・といって机に伏せったもん。ただヤクザがらみのトレブルっていうのは、病院ではおきないの。親分さんって案外いい人が多いんですよ。だから退院するときは、親分と舎弟達が菓子折もって医者やナースを一人ずつ回って『お世話になりました!』って挨拶してゆくんですよ」

親分さん元気になってよかったよね。それが万一・・・。

房チャン「やだっ!、それって考えたくないわ(笑)」

・・・

ミッドナイト小樽・・・こんな真夜中こそ、ラジオの深夜放送がよく似合う小樽だ。

 

小樽市花園

NIKON Df、AF-S NIKKOR28-300mm3.5-5.6G

ISO640、焦点距離40mm、露出補正-0.33、f/5.6、1/8

 

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