Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ドローイング277. 小説:小樽の翆208.  作曲家

2020年10月19日 | Sensual novel

 

 さて都市レジャーのラストは、房チャンの店だ。

ハニーウォッカ!、それで翆と乾杯だ。

・・・・

「そのボトルの下に楽譜の置いてある所が気になるねぇー」

房チャン「ああっ、これねぇー、年末の頃かなぁー。お客さんに、東京で売れない曲を作ってますという人がいたの。調度その時に小樽で雑貨屋をしている30代頃の女性がいて、ここで一緒に飲んでいたの。そのうち話し相手が欲しくなって、こちら東京の作曲家さんだってぇー、私が紹介したの。それで話が弾んでいたかな」

翆「その二人って仲良くなったんだぁー」

房チャン「そう、その後、よく二人でうちにきたよ。でっ、ひとしきり飲んで、よく一緒に帰っていったね。それである時、多分最後に来た頃かなぁー、楽譜を整理していて、置き忘れていったの。それっきり二人とも来なくなった。新型肺炎が流行った頃だし・・・」

「ラブラブになったんだ。売れない作曲家と小樽の雑貨屋の女との恋が・・・」

房チャン「たぶん、そうよ。いつも仲良かったもん。私は、楽譜が1枚なくて大丈夫かなあと思ったよ。だから今もそこに保管してあるの」

「多分1枚ぐらいなくても、作曲家は頭の中に音があるから、思い出して、かけるんだろう。クリエイターは、大体自分の仕事は覚えているよ。それでそのボトルは?」

房チャン「東京の作曲家の人が最後にいれていったの。彼女が来たら飲ませてあげてくれ!、といって」

「そのしおれたコスモスは?」

房チャン「彼女の好きな花なのよ。あの二人どうしたかなぁーと思いながら、ボトルと譜面を保管してあるの。でも、もう二人はこないなあ、そんな感じがするけどね」

・・・

したたまウォッカで酔いつぶれて、タクシーを呼んでもらって家にたどり着いた。家につくなり翆を抱きかかえて一緒に熟睡してしまった。

小樽の長い秋の夜が続いている。

コメント
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