さて都市レジャーのラストは、房チャンの店だ。
ハニーウォッカ!、それで翆と乾杯だ。
・・・・
「そのボトルの下に楽譜の置いてある所が気になるねぇー」
房チャン「ああっ、これねぇー、年末の頃かなぁー。お客さんに、東京で売れない曲を作ってますという人がいたの。調度その時に小樽で雑貨屋をしている30代頃の女性がいて、ここで一緒に飲んでいたの。そのうち話し相手が欲しくなって、こちら東京の作曲家さんだってぇー、私が紹介したの。それで話が弾んでいたかな」
翆「その二人って仲良くなったんだぁー」
房チャン「そう、その後、よく二人でうちにきたよ。でっ、ひとしきり飲んで、よく一緒に帰っていったね。それである時、多分最後に来た頃かなぁー、楽譜を整理していて、置き忘れていったの。それっきり二人とも来なくなった。新型肺炎が流行った頃だし・・・」
「ラブラブになったんだ。売れない作曲家と小樽の雑貨屋の女との恋が・・・」
房チャン「たぶん、そうよ。いつも仲良かったもん。私は、楽譜が1枚なくて大丈夫かなあと思ったよ。だから今もそこに保管してあるの」
「多分1枚ぐらいなくても、作曲家は頭の中に音があるから、思い出して、かけるんだろう。クリエイターは、大体自分の仕事は覚えているよ。それでそのボトルは?」
房チャン「東京の作曲家の人が最後にいれていったの。彼女が来たら飲ませてあげてくれ!、といって」
「そのしおれたコスモスは?」
房チャン「彼女の好きな花なのよ。あの二人どうしたかなぁーと思いながら、ボトルと譜面を保管してあるの。でも、もう二人はこないなあ、そんな感じがするけどね」
・・・
したたまウォッカで酔いつぶれて、タクシーを呼んでもらって家にたどり着いた。家につくなり翆を抱きかかえて一緒に熟睡してしまった。
小樽の長い秋の夜が続いている。