
20XX年7月16日。
この数日間、ブラウントラウトの撮影を兼ねて道南の川をあちこち釣った。道南にくるときは長万部の温泉旅館のTさんのお世話になる。彼はこのあたりの川を知り尽くしており、長竿を用いたヤマベの本流釣りの名手だ。彼のお薦めでヤマベとアメマスと虹鱒のいる近くの川に入った。かなり大きな川だが浅い。相当に河川改修工事が行われているが水は清冽で水量も多い。まず、最初のポイント、落差こうの下のたまりでアメマス、ヤマベ、ニジマスを釣ったが思いがけず魚影が濃い。大きなやつは引き抜けず、なんとかいなしているうちに最終的には逃げられてばかり。やっと手元に釣り上げた大型アメマスもハリス止めで糸が切れて逃げられた。夢中で釣っているうちに長年愛用してきた帽子を川に流してしまった。ヤマベは中型個体が多かった。今日は、このあたりの川でのヤマベ釣りにも多少慣れてきたせいか、けっこう釣れるようになった。要するに道東のヤマベと比べると当たりが格段に弱いということを念頭におけばよい。













近くに熊が住み着いているという沢があった。この沢には必ず熊がついているので入らないようにと言われていた沢はパス。きっと魚が多いのだろう。本流沿いも、いかにも熊がでそうな川だが、ざぶざぶ川をこぎながらひたすら釣り登った。道東では、普通こんな大きな川で渓流魚を釣ることはない。途中、ポイントはあまり多くないが、立派なたまりではどこもよく釣れた。大きな壊れた橋桁のあるとても深いたまりはとりわけニジマスが多く、そこで50cmのニジマスを釣ったというより運良く釣れてしまった。道南の野生化ニジマスのあまりのパワーに、ああもうだめだ逃げられるという思いが何度も頭をよぎったが、必死に竿を立てて5分程がんばったら、急に虹鱒が力つき、すーっと寄せられるようになった。何度か失敗したがランデングネットでやっと取り込んだ。美しい♀のニジマスだ。撮影後、丁寧に放流した。

さらに登るとごうごうとダムから水の落下する音がしてくる。ダムまで100mほどのところに石垣のあるたまりがあってそこで初めはニジマス、続いてヤマベが入れ食いとなった。きりがないほど良く釣れた。ニジマスは15-20cm で大きくはない、ヤマベは同じくらいのサイズの良型であった。圧倒的に虹鱒が多い。この川は自然繁殖ニジマスが多すぎると言わざるを得ない。ヤマベも相当数放流されているようで唯一のネイティブトラウトのアメマスはとても少ない。








あまり長距離の遡行ではなかったが十分に撮影ができたので早めに引き返すことにした。本日最大のポイント、大きな橋桁の深みでさっき放流したばかりの同じ50cmのニジマスがまた釣れた。さきほど釣ってリリースしてからまだ1時間しかたっていない。さすがに最初ほどのパワーはなかったがこれじゃあニジマスもオショロコマも同じではないか。撮影して再放流した。



この川はかってヤマベがとても多く、しばしば釣り雑誌に大きく紹介されたため入渓者が激増、魚がまったくいなくなったが、その後訪れる釣り人もいなくなり、そのためか近年また魚が増えてきているという。しかしT氏の話ではこんなに釣れたことはなかったらしい。こちらではヤマベ(放流が多いという)が最も珍重され、アメマスは食べてまずいのでニジマス、ブラウンより格下でウグイなみの扱いですとT氏が語っていた。唯一のネイティブトラウトも道南では冷遇され、形なしのようだ。
とてもおいしいヤマベの干物の焼き魚。こんなおいしい干物は初めてであった。


