フランス古典主義の中でも特に重要な画家のひとりジョルジュ・ド・ラ・トゥールは、夜の場面を描いた作品が多く「夜の画家」と呼ばれた。なかでもカードゲームに溺れるといつかは騙されることを訴えている作品として解釈される「いかさま師」は、17世紀前半の作とはいえ遊興の罠は現代にも通じる。視線の描き方は心理を巧みに写したもので、中央の横目の女性はマドレーヌ・シャプサル著の「嫉妬する女たち」の表紙を飾っていた。
この絵と同じような構図を持ったアルバムにリタ・ライスの「ジャズ・ピクチャーズ」がある。ライスを横目で見つめるケニー・クラークと、二人の会話を覗き込むライスの夫君ピム・ヤコブス、その様子を窺うピムの弟、ルウト・ヤコブス、そしてカメラ目線のギタリスト、ウイム・オーヴァハーウ、1枚の写真からはラ・トゥールの絵とは違う楽しげなセッションが聴こえてきそうだ。61年にオランダのホールで開催されたコンサートはファッツ・ウォーラーの名唱で知られる「手紙でも書こう」で幕を開け、「枯葉」、「チェロキー」、「スピーク・ロウ」、「ホワッツ・ニュー」等、スタンダードのオン・パレードで、原曲の持ち味を生かしたストレートな歌唱が聴ける。
オランダは多くの歌姫を輩出しているが、リタ・ライスはヨーロッパのファースト・レディ・オヴ・ジャズと呼ばれるだけあり、抜群のスイング感とジャズ・センスはヨーロッパばかりかアメリカでも高い評価を受けた人だ。56年にアメリカを訪れたときにバードランドに出演し、その名は一夜にしてアメリカ・ジャズ界に轟き、ジャズ・メッセンジャーズと録音を残している。そのアルバム・タイトルは「クール・ヴォイス」だが、ややハスキーな声とはいえクリス・コナーやジューン・クリスティの凛としたクールさではなく、曲によってはコケティッシュな一面ものぞかせる可愛らしい声と言ったほうがいいかもしれない。
ピム・ヤコブスは「カム・フライ・ウィズ・ミー」の傑作で知られるピアニストで、ライスの歌伴も手馴れたものだが、クラシック音楽を伝統とするヨーロッパ気質からはみ出ることはなかった。それはそれで完成されたものだが、ヨーロッパ気質をブラッシュの一音でアメリカ気質のジャズにすり替えたケニー・クラークの客演がこのアルバムを上質な作品に仕立てている。ラ・トゥールのいかさま師はカードをすり替えようとしているが、このジャケット写真の中にいかさま師がいるとするならそれはケニー・クラークだろう。
この絵と同じような構図を持ったアルバムにリタ・ライスの「ジャズ・ピクチャーズ」がある。ライスを横目で見つめるケニー・クラークと、二人の会話を覗き込むライスの夫君ピム・ヤコブス、その様子を窺うピムの弟、ルウト・ヤコブス、そしてカメラ目線のギタリスト、ウイム・オーヴァハーウ、1枚の写真からはラ・トゥールの絵とは違う楽しげなセッションが聴こえてきそうだ。61年にオランダのホールで開催されたコンサートはファッツ・ウォーラーの名唱で知られる「手紙でも書こう」で幕を開け、「枯葉」、「チェロキー」、「スピーク・ロウ」、「ホワッツ・ニュー」等、スタンダードのオン・パレードで、原曲の持ち味を生かしたストレートな歌唱が聴ける。
オランダは多くの歌姫を輩出しているが、リタ・ライスはヨーロッパのファースト・レディ・オヴ・ジャズと呼ばれるだけあり、抜群のスイング感とジャズ・センスはヨーロッパばかりかアメリカでも高い評価を受けた人だ。56年にアメリカを訪れたときにバードランドに出演し、その名は一夜にしてアメリカ・ジャズ界に轟き、ジャズ・メッセンジャーズと録音を残している。そのアルバム・タイトルは「クール・ヴォイス」だが、ややハスキーな声とはいえクリス・コナーやジューン・クリスティの凛としたクールさではなく、曲によってはコケティッシュな一面ものぞかせる可愛らしい声と言ったほうがいいかもしれない。
ピム・ヤコブスは「カム・フライ・ウィズ・ミー」の傑作で知られるピアニストで、ライスの歌伴も手馴れたものだが、クラシック音楽を伝統とするヨーロッパ気質からはみ出ることはなかった。それはそれで完成されたものだが、ヨーロッパ気質をブラッシュの一音でアメリカ気質のジャズにすり替えたケニー・クラークの客演がこのアルバムを上質な作品に仕立てている。ラ・トゥールのいかさま師はカードをすり替えようとしているが、このジャケット写真の中にいかさま師がいるとするならそれはケニー・クラークだろう。
リタ・ライスは、オランダのディスク大賞であるエジソン賞を3回受賞しております。実力、人気のほどがうかがえます。今週はリタ・ライスのお好みのアルバムをお寄せください。
管理人 Rita Reys Best 3
Cool Voice (Philips)
Jazz Pictures (Philips)
Meets Oliver Nelson (Philips)
他にも、ベンクト・ハルベルクと共演したジャジー・ピープルやゴールデン・サークル等、名作がありますので何が挙げられるのか楽しみです。
70年に来日しておりますが、ライブを聴かれたかたはおられませんか。
今週もたくさんのコメントをお待ちしております。
リタ・ライスは、殆ど手持ちがないのです。(泣)
今回は、皆さんのコメントで勉強する一週間になりそうです。
早朝からのコメントありがとうございます。
KAMI さんにお薦めするならメッセンジャーズがバックの「Cool Voice」でしょうか。アイラ・サリヴァンがいいソロを吹いております。
Cool Voice・・・アルバムの山の中から発掘しました。(笑)
久しぶりに聴きました。
イヤー、これは素晴らしい!
今日店で、お客様と「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」の聴き比べをやったのですが、このアルバムもかけました。
と言うわけで、Cool Voiceに清き一票を投じさせて頂きます。(笑)
食いつきが良くないようですね、リタ・ライス。
一時期かなり蒐集しましたけど、すごく好きかというと、
そうでもありません。
軽く唸りの入った小節のきかせ方に、
都はるみと共通項を感じてしまうのは、私だけ?
1)「Cool Voice of Rita Reys」
まあ、これは不動ですね。
とかくジャズ・メッセンジャーズ歌伴の方に話題が
集中しがちですが、オランダ勢歌伴のテイクも
なかなかいいです。
2)「At Golden Circle, Stockholm」
Don't Get Around Much Anymore が、ご機嫌!
3)「jazz Pictures」
って、ところでしょうか?
でも、他の作品も僅差ですね。
駄作の少ない人です。
しかし、クール・ヴォイスしかないだろう・・・
それとゴールデン・サークル、これしか持ってない・・・いや、変なのがあった!
「クール・ヴォイス2」というのが棚から出てきたが・・・あまり記憶に無い・・あれは何なのだろうか?
今夜聴いてみるとするか・・
ああ、寒い、外は8度だ・・景気も寒い・・
黒が90パーセントを占めるジャケですので探しにくいかもしれません。暗闇だと90パーセント見つかりません。(笑)
「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」はゆったりとしたテンポですが情感に流されることのない素晴らしい歌唱です。短いながらボントロのソロがアクセントになっておりますね。
リタ・ライスを聴かれている方は意外に少ないようですね。ジャズ・メッセンジャーズの歌伴で話題になったくらいですから、ライスの熱心なファンが少ないのは仕方ありません。
Cool Voice の内容は勿論ですが、ジャケがいいですね。薄暗いジャズ喫茶に飾るとシルエットが浮き出るようです。
ゴールデン・サークルもジャケが素敵ですし、ライブならではのノル選曲が素晴らしいですね。
Don't Get Around Much Anymore もご機嫌ですが、サヴォイでストンプも弾みます。
駄作はありませんので、選ぶなら曲の好みだけかもしれません。
マリッジ・イン・モダン・ジャズはハッピーなジャケですが、「Too Close For Comfort」はなかなかの名唱です。
>軽く唸りの入った小節のきかせ方
都はるみを聴いたのでしょうかねぇ。日本人的な感覚がありますが、米を食べているのかもしれません。それでライスかぁ。(笑)
「クール・ヴォイス2」をお持ちでいて記憶に無いとはジャケ買いでしょうか。あの角度の横顔は私も惹かれます。ライスや最近では片倉真由子嬢も何故か横顔のジャケが多いですね。深い意味はありません。(笑)
58年のオランダ録音ですので、メッセンジャーズ共演盤とのつながりはないようです。
そちらの外は8度で寒いようですが、こちらは凍るマイナスです。景気だけはどちらもマイナスのようですね。
リタ・ライスは、手元にLP、CD合わせて8枚ありましたが、熱心なファンというほどではなく、なんだか自然に集まったものです。僕は、彼女の声質に違和感がない、初期の録音がいいと思っています。
Cool Voice (Phillips)
Jazz Pictures (Phillips)
Cool Voice 2 (Phillips)
「Cool Voice 2」は、オーケストラも伴奏に加わり、しっとりとした面が出ていて好きな一枚。「Two Jazzy People」は、ハルベルグのつぼを得た伴奏に惹かれますし、本人の歌もジャジーですが、最初の「Avalon」に聞かれるような猫なで声にはどうしても慣れません。