ドラマのとびら

即興の劇や身体表現で学ぶ、教える、浮き沈みの日々とその後

『彼女は頭が悪いから』

2021-06-04 16:16:01 | 読書
『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ 2018年文藝春秋

読みながら気分が悪くなり、何度も読むのをやめようと思った。
気分が悪いけれど、これは忘れてはいけないと思うので書いておく。

まったくの罪悪感もなく、人の尊厳をズタズタボロボロに引き裂く。
競争社会を勝ち上がり、他人へのリスペクトなどひとかけらもなく育ってしまった人たち。

これは小説だ。
だけど、そういう人たち(他人の尊厳をズタズタボロボロに引き裂ながら自分は悪くない、どころか正しいとさえ思っている人たち)を私は何人も知っている。
だから、吐きそうに気分が悪い。

作中、三浦紀子教授が被害者にかけたことばが響く。
「どれだけいやな気持だったか、私は他人ですから完全にはわかりません。ただ察することしかできません。」

三浦教授は連絡をとってきた加害者の母親のひとりに、被害者がされたことと同じことをされることを想像させる。

この教授と被害者の邂逅があって、ようやく暗澹たる気持ちに少し光がさす。

察する。
相手の立場になって想像してみようとする。
相手がいやなことをしたと分かったら、誠意をもって謝る。

せめてそうしよう!
自戒もこめて!
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