先だってエルメスのネクタイを5本ほどネットオークションに出品しました。
どれも新品ではありませんが、いいお値段で落札いただけました。
ネクタイに1本に使われる生糸の値段は、中国の原産地で10円程度。
これがネクタイという製品になっても原価はまだ100円未満なので、
現地では300円ぐらいの販売価格となり、
それを日本に輸入され販売されるときは千円均一となるそうです。
ところがエルメスはじめ超ブランドのネクタイとなると2万円ぐらい。
このブランドの付加価値ってすごいですよね。
エルメスのスカーフ・カレは、
スカーフ1枚に繭玉250個を使っているのでどっしりしているし、
表現できる色彩は約3万色。
年間テーマに沿って次々発表されるデザインの違ったものを
次々コレクションしたくなるのも頷けます。
もともとエルメスは馬具商です。
皮革加工の技術にたけていたことを利用して、
1935年女性用ハンドバッグ(サック・ア・クロア)を売り出しました。
これがケリーバッグの前身です。
30年ほど前、エルメスのケリーバッグは給料2ヶ月分ぐらいでした。
悩んで悩んで結局は買わなかった。
もし今でも丁寧に使ってまだ使用できる状態なら、中古でも売れますね。
いまや新品を買おうとしたら、給料3か月分では無理でしょう。
この30年間のブランド戦略はすさまじい変化があったということです。
伝統技術だけでなく、新しいブランドイメージが創造されたんですね。
社交界や女優をうまく取り込み、高級イメージを付加し、
1937年絹製品の製造販売へと飛躍していきました。
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堺屋太一氏の「知価革命」によると、
ブランドとはかつて特定の産地や企業の伝統的技術を保証する名称で、
例えば日本では西陣織、輪島塗、有田焼柿右衛門
世界的にはゾーリンゲンの刃物、ボヘミアングラスなど。
徒弟制で仕込まれた職人芸を産地や企業名で保証したのがブランドでした。
20世紀に入り、規格大量生産で品質と機能を保証する工業社会的ブランド。
これはマクドナルドや、コカコーラ、ソニーなどです。
ところが1980年代からは、イメージの連想で購入者に満足を与える、
イメージブランドが一般化しました。
知価社会的ブランドは、知恵が勝負です。
イメージですから、月日の流れとともに人心も変化します。
人の満足度も移り変わります。
今流行っているからといって、安住してれません。
それで中古市場のお値段をつけている質屋もうかうかしていられません。