<金曜は本の紹介>
「犯罪者はどこに目をつけているか(清永賢二、清永奈穂)」の購入はコチラ
「犯罪者はどこに目をつけているか」という本は、主に「住宅への侵入盗」や「ひったくり」に対する具体的な防犯方法について犯罪者の視点も踏まえてまとめたものです。
特に犯罪者の中でも天才的と評された「忍びの弥三郎(2001年、64歳で死去)」や猿の義ちゃん(2011年現在69歳)等のコメントには興味を惹かれ、参考になりますね。
防犯は、犯罪者が「やりにくくする」ことがポイントのようです。
具体的には「獲物に近づきにくく」、「犯行地から逃げにくく」することですね。
そのためには、街をきれいにすることや、住人の間で絆をつくるも大切なようです。
そのほかポイントとして以下も挙げられていました。
・狙われやすいタイプは、襲うだけの価値がある・無防備・体力がない・心理的強度が弱い・孤立している・襲われやすい環境下にいる
・ひったくりには、バッグ等にスキ・人通りが少ない場所にいる・視界が薄らぐ時間帯・老人・子供・女性・歩車道の区別のない道路・裏通りに注意が必要
・携帯電話を使用しながらの歩行は危険
・襲われたら20mは全力で走り抜け、距離を開ける
・襲われた時は、思い切りかみつくことも有効
・犯罪者は狙った家にいるのが一人かどうかを非常に気にする
・防犯ブザーを毎晩布団の中に入れて寝たほうが良い
・犯罪者は塀の落書き、散らかったゴミ、捨て置かれたような自転車を見てその家の心の緩み(緊張の弛緩)、隙を読みとる
・1つのドアに3つの錠がこれからの時代
・プロの侵入盗は古い家は狙い目と考え、新しい家を避ける傾向にある
・侵入盗のうち飼い犬を嫌がるのは3割に過ぎない。むしろ猫のほうがやっかい
・侵入盗の9割が「望ましい」という庭は、「無秩序に庭木が多数植えられている」「庭園灯がある」「芝生がはげている」「敷地がアルファルトかコンクリート」音を立てるのを嫌がる。
・クレセント錠は破壊せずとも外から上下できる
・侵入者を阻止するには「釣り糸センサー」が有効
・街が汚れている、挨拶されない、視線を投げかけられない、住人の間に気持ちのいい街を作ろうという絆がない街は、犯罪者が「この街でやろう」と決意する
・防犯ポスターも有効
著者の一人は、宮崎勤事件に関わり、その後、初代犯罪予防研究室長として様々な事件を探り、現場に立ち、犯罪者と向き合ってきたようです。
また、死の瀬戸際を体験し、多くの先輩や犯罪者に学んだことを書き残そうと思って本書を執筆したようです。
「犯罪者はどこに目をつけているか」という本はとてもオススメです!
以下はこの本のポイント等です。
・獲物の手前20mで、犯罪者は3つの点に注意しながら意思決定を行う。
①接近性=うまくいい獲物に近づける=実行できる(近づけた)
②逃走性=うまく逃げることができる(逃げることができた)
③直感=目的を達成するのにいいイメージがある(あった)
の3つである。最終的には「①②③の3つの柱」+「自分の欲望を満足させる獲物」+「楽をして手に入れることができる」が、彼らの「獲物獲得理論」を形成する。
・変な人と怪しい人を分けるのは、「コンタクトを取ろうとする」かどうかである。ちょっと、などとこちらに話しかける。笑いかける。後をついてくる。関心を引くような動作をする。じっと、あるいはちらちら視線を投げかけてく。微笑みながら見つめてくる。これらはすべて会話にはならないが、一種のコミュニケーションである。会話には、言葉によるものと、言葉にはよらないものの二種類がある。怪しい人は、特に言葉によらないメタ言語に「お前を自分のものにしたい」という、強いメッセージを込めて一方的に相手に発信してくる。被害者が気づいているかどうかは別として、犯罪行動を起こす前のほぼ全員が、眼差しなどによる無言のメッセージを飛ばす。これに被害者がつい微笑んだり、軽く挨拶してしまったり、あるいはプイと横を向いたりしても、何らかの会話が成立したと考える。言葉であるか、メタ言語であるかを問わず、見ず知らずの人に会話を求める人には何らかの下心がある可能性が高いと見なくてはならない。道を尋ねられたら応対するとしても、少しでも「変だ」と感じたら、こうした会話は無視するか、キッパリ断る必要がある。そうしないと相手は必ず自分のいいように解釈し、行動してくる。
・怪しい人から危ない人へ、犯罪者は急変する。この中途にある変化をつかむことが対策のポイントだ。変化のポイントは4つある。
①対峙距離の変化:異常に近づく、急に早足となる
②様相・やり取りの変化:顔つきが急に変わる、目が一点に凝固して来る、脅迫的に何かを求める、人の話や行動を強く遮る、周囲に視線を絶え間なく投げかける
③態度の変化:体を掴む、大声を出す、車に無理矢理乗せようとする、仲間を呼び寄せようとする
④危なさが目に見えて強調される:何らかの凶器、あるいは凶器になりうる物を持っていて、それを取り出す、拳を握りしめている
むろん④になれば、もう見分けるどころではない。相手はあからさまに「追って来る」のだ。逃げる。叫ぶ。駆け込む。手足や持ち物を武器にして抵抗する-それらを力いっぱい行わなくてはならない。できることなら危ない環境には近づかないこと、周囲に注意を払うこと、人間を観察すること、そして身の丈に合った自衛力を身につけておくことが大切である。
・総論としては、犯罪防止は犯罪者が「やりにくくする」ことに徹するのが最優先だ。接近性、逃走性、直感という「やりやすさ」の3本柱を引き倒すことである。つまり、獲物に近づきにくく、犯行地から逃げにくく、獲物や犯行地について犯罪者に「こいつ(ここ)はまずいぞ」というイメージを持たせるのだ。具体的にはどうすればよいか。やはり、迷ったときは単純化してみることだ。
①領域性(自分たちの街や空間である、という境界をつくる)
②監視・見守り性(他人に関心を持つ、注視する)
③動線性(人の動きまわる道路や回路、場合によっては犯罪者が空けた隙間をコントロールする)
④拘置性(不法なことをしたら、そこに留め置く)
という4つのポイントの確保である。この4つを確保するために、すぐにできることとして、次の8種の基本手法が考えられる。
1.遮断:人や物への犯罪者の接近や逃走の経路を切断する、制限する。「ここは行き止まり」などの表示や塀など。
2.威嚇:監視性を中心として、脅しの音や光を出すことで、犯罪者の接近や逃走が困難であることを強調する。「ここでは逃げられないぞ」というポスターなど。
3.阻止:監視性を中心として、犯罪者に対して標的が積極的に向かい合い、接近するのを「自分の力やご近所の底力で止める、押し返す」。隣家との間にセットされた瞬間発光のセンサーライト設置など。
4.回避:動線性を中心とし監視性で補助しながら犯罪者を早期に発見し、犯罪者から外れるよう、接近を避けられるようにするもの。侵入した犯罪者から身を隠す「隠れ部屋」など。
5.隔離:拘置性と導線性を中心として、犯罪者を「遠ざけ、囲い込んでしまう」こと。極端な例として「刑務所」がある。
6.強化・教育:領域性と動線性を協働させながら、犯罪被害者あるいは物の「自己防衛力」を高めることで犯罪者を「跳ね返そう」というもの。家の塀作りや子どもに防犯ブザーを持たせるなど。
7.矯正(教育):拘置性と監視性を中心に犯罪者及びその予備群に教育を施すことで、犯罪行動に走らないよう「人格を作る・作り変える」もの。矯正施設
8.環境改善:犯罪者と被害者を囲む物理的、そして社会的環境を全体として改善することで、犯罪を生み出す土壌を作り変えていくもの。荒廃地の改善や、1970年代にアメリカのオスカー・ニューマンらによって確立された環境設計による防犯まち作りなど。
これら8種の基本型を踏まえ、それぞれの地域の特性や文化、行政(自治体)の熱意、市民の集まりと関心、基礎的な素材(音や光を出す物)、すなわち人と物とを適正に組み合わせることで犯罪を「やりにくくする」ことができる。
・どんな人が狙われやすいのか。元犯罪者たちと被害者(児童含む)への調査から6つのタイプが抽出される。
①襲うだけの価値がある者
・襲うだけの魅力を身に備えている
・襲うこと自体が、自分や周囲を納得させる
②無防備である者
・何の警戒も備えもしていない
・他のことに注意をそがれている(携帯電話など)
・その環境が危険だということに無知である
③体力がない者
・小柄で体力が劣ると見られがち
・小児や女性、高齢者、肉体的・精神的ハンディキャップがある(犯罪弱者)
・大人であっても実年齢や男性性を感じさせない様相である
・抵抗力が弱い(力がない)と見られがち
④心理的強度が弱い者。
・ウロウロ、キョロキョロ、チョロチョロ、オドオドしている
・大人びた格好をしたがる、カッコつけたがる、可愛い
・服装がだらしない、服や靴、帽子をダラリと身につけている
・きっぱりとしていない、体に締まりがなくダラダラしている
・すぐ相手につきあってしまう、嫌なことをイヤとキッパリ言えない
・なぜ、どうして?と聞けない、すぐに黙り込んでしまう
・危ないと言われているのに、自ら興味本位に立ち入る
⑤孤立している者
・一人だけいる
・一人だけになる
・大勢の中にいても疎外され孤立している
⑥襲いやすい環境下にいる者(その中でも特に注意を要する環境)
・灯りのない、あるいは遠くに灯りが見える夜道を歩いている
・灯りがあっても、「ぽつん」と灯りのある夜道を歩いている
・樹木が覆い被さるように繁茂している道路や広場を利用している
・大小の道路が幾つも交差している道を利用している
・裏道を利用している
・直線でその前後が曲線、あるいは交差点の道路を利用している
・頻発するひったくり事犯に遭遇しないための心得と不幸にして遭遇した場合における防止である。ひったくり事犯は、歩行者自身にスキが多いことが第1の欠点で、賊にとって、スキ多い歩行者は「カモ」となる。第2は、人通りの極端に少ない場所や道路。第3は、視界が薄らぐ時間帯。第4は、極端に年齢が高い老人、もしくは低い子ども。第5は女性。第6は歩車道の区別のない道路。第7は裏通りで広くもなく狭くもないといった普通路
・犯罪者は、被害者の死角(隙)を突いて襲いかかる。路上では前後に気を配りなgら、しっかり歩くことだ。では、どれくらい前後に気を配ればいいのか。路上犯は被害者との間を電信柱の間隔ぐらい置きながら歩く。この距離は、襲撃行動を起こす際に、犯罪者全般に共通する長さでもある。つまり一般行動原理である。おもしろいことに、イギリスに長く住む日本人女性に話を聞いたところ、彼女も20m前を意識して歩くと言っていた。襲いかかられてからでは遅い。雑踏であろうと一人の時だろうと、明るいうちでも薄暗がりでも、日本の電信柱の間ぶんの距離は意識して歩くことだ。
・最近特に増えているのが、スマートフォンなど携帯電話を使用しながらの歩行である。これは非常に危険だ。
・襲ってきた場合は、何m逃げればよいのだろうか。犯罪者が標的を襲う際の心理的変化を見る実験で、彼らの「やる気」がなくなるまでの距離を測定してみた。結果は20m。これは襲いかかる時、犯罪者の緊張感が高まっていくのと同じ距離である。「子どもを襲う場合」も想定して実験を行ってみたが、「やる気」の変化は対象が大人でも子どもでも違いはなかった。つまり、被害に遭遇した(あるいはしかけた)場合は、ともかく20mを全力で走り抜ける気持ちと馬力を持たねばならない。わずか20mと侮ってはいけない。実際に走ってみれば分かるが、20mは考えるよりも長い。それでも危機から脱出するには、それだけの体力は必要なのだ。少なくとも誰かが助けてくれるのでは、という甘えは許されない。
・多くの人は、20m逃げるより先に悲鳴をあげるだろう。これは他人の関心を引くのにきわめて有効だ。とっさのキャー!でも効果は十分ある。「助けてぇ!」「人殺しぃ!」はなおよい。しかし、大声には二つ問題がある。一つは、自分では大声を出したつもりでも、えてして最大の大声にはなっていないこと。一度あらんかぎりの大声を出す経験を、誰でも持つべきである。目安は腹がひっこみ、背中が折れ曲がるほどの声である。二つ目は、「助けてぇ!」と叫んでも、ややもすると、ふざけて遊んでいるととられかねないことだ。被害者が子どもの場合に多い。そう見られないために、叫ぶと同時に手ぶりと足ぶりをまじえる。耳で分からせ、目でも知らせることである。
・口を塞がれるのは、生命の危機に直結する重大な事態だ。できるかぎりの、最大の抵抗を瞬時にとらなくてはならない。ずっとやりやすいのは「かみつく」ことだ。人間のかみつく力には凄いものがある。成人の男女では80kg近くに達し、ラブラドールの57kgをゆうに上回る。ライオンや虎の300kg前後の4分の1の力だが、肉は食いちぎれる。顔や体にまとわりつく、むきだしの腕や手にかみつくのだ。それなら襲撃者に、いかに非力な女性や子どもでも十分立ち向かえる。イギリスの安全体験施設では、かみつくことを真剣に子どもに教えている。大切なのは、実際にかみつくことだ(それも素早く)。そしてかみついたら、相手が悲鳴をあげるまで離さない。この間に襲撃者は「ぶっ殺すぞ」と脅したり、顔を無茶苦茶に殴ったりするかもしれない。しかし、こうした言葉を吐かれても実際に殺された例はこれまでにない。だから、心を決めて思い切りかみつくことだ。弱者を無法に襲う者は、肉を食いちぎられることぐらい罰として当然である。ライオンがそうするように、かみついたまま頭を大きく振って引き回す。そして機会をうかがい、大声をあげて逃げるのだ。
・日常生活で注意すべき「情報管理」は他にもある。「家にいる人数」がその代表であろう。犯罪者は、ねらった家にいのが一人かどうかを非常に気にする。だから電気メーターの回転や郵便受けを見る。窓ガラスに小石を投げてみる。あるいは電話をかける。それに対して「今は誰もいなくて、6時過ぎにならないと帰ってきません」などと答えてはならない。今から数時間は一人、という貴重な情報を犯罪者に与えてしまう。そう答えたのは幼児や高齢の女性なら、犯罪にはもってこいである。新聞や訪問販売を装った問いかけに、「今から出かけるので後にしてください」と言うのも駄目だ。さらに宅配便や届け物があるというので、判子や現金を置いている場所に直行してはんあい。特に子どもはそうだが、それら貴重品を置いている場所の情報を与えてしまう。
・深夜一人で寝入っていて、別の部屋あるいは庭先で物音がした時ほど背筋が凍ることはない。頭では考えても、身動きできない金縛り状態となる。手の先を布団の外にちょっと出すことさえもできなくなる。こうした時に備えて、防犯ブザーを毎晩布団の中に入れて寝るよう、習慣づけることをおすすめする。犯罪者は音・光・モノ(人や物)を嫌う。犯罪者自身、忍び込んだ家で何が起こるか分からないと恐れている。忍び込んだ先が警察官の家かもしれないのだ。隣室や庭で変な物音を耳にし、どうにも怖い、不安だとなったら、布団の中で防犯ブザーの栓を引き抜き、部屋の遠方に投げる。できれば、音を出すのと同時に発光するタイプのブザーが望ましい。そして布団を被り、耳をそばだてる。すぐ動けるように膝は折っておく。防犯ブザーは布団の中だけでなく、自分の家の廊下、さらに旅先でもこの対策は有効である。人が通らないベランダの下や家の間の通路にひもを引っ張っておいて、鳴るようにしておくのもいい。
・侵入盗は、家屋の外観の何に注目し、どれほど家の内部情報を読みとるのか。以下は、猿の義ちゃんが、ある家の周りを2周する間に読みとった箇所である。隣家との距離、隣家の窓の位置、塀の状態、道路を挟んで向かいの家の窓の位置、狙った家の前の道路の汚れ具合、衛星TVアンテナの有無、狙った家の二階の有無、屋根周り、小庇の幅・長さ・取り付け状態、家の樋の位置、郵便ポストの位置、ゴミの量と入っているモノ、警備会社のステッカー、犬・防犯カメラ、フラッシュライトの有無、停めてある車の種類・台数と駐車場の位置、屋根瓦の色と厚さ、敷地に置かれた物とその利用法、雑草の伸び具合、塀あるいは生け垣の状態、門柱・表札に書かれた名前、煙突の位置と高さ、庭木の位置と繁り具合、芝生のすり減り状態、干し物の順番と色、建物自体の広さや古さ、建物のペンキの色、ベランダの位置と形状、電気・ガスのメーター、玄関・裏戸・窓の錠の状態、裏戸の出入り口の汚れ、およその間取り、炊事場と風呂場の位置、玄関とそこへのアプローチ、窓の大きさ・窓枠の材料・位置・窓格子の種類、部屋のカーテンの色や柄。
これだけのものをちらと見ただけで覚え、その意味を読み、分析する作業をわずか2周、長くても5分程度で終えてしまう。プロの侵入盗の知能の高さが分かる。彼らの「頭の良さ」は生半可ではないのである。
・精神は形に、形は精神に反映する。物が秩序立っていることは、その社会や個人がそれなりに秩序だっていることを表す。だから犯罪者は、塀の落書き、散らかったゴミ、捨て置かれたような自転車を見て、その家の心の緩み(緊張の弛緩)、隙を読みとる。「この町でやる」という品定めの決め手となるのも、駅前と町中の落書き、ゴミ(汚れてはげかけたポスターは落書きやゴミに等しい)、放置自転車の三大汚れだという。屋根の連なり(スカイライン)が凸凹していないかどうかも、判断の要素になる。そして「この家をやる」という決定には、三大汚れに加えて、家の庭木の手入れの状態が大きく作用する、と犯罪者は言う。枝葉が繁り放題の庭木は視界を遮るばかりか、家人の心の荒びと規範の崩れを体現している。きれいは安全に直結するのだ。
・昔から「ワンドア・ツーロック」(一つのドアに二つの錠)という。金言である。家屋にかぎらず、「一つだけの防御」は強固な意思を持った犯罪者には通用しない。最近は、二重ではなく三重の備えが必要とさえいわれる。これからは、ドアだけでなく、家の守りを担うあらゆる箇所で「ワンドア・スリーロック」の時代であることを強調しておきたい。
・プロの侵入盗は古い家は狙い目と考え、新しい家を避ける傾向にある。新しい家は防犯対策が進み、それなりに強固な素材を使用しているからだ。その上、見てくれはいいが中に金を置いていない。比較的若年層の家族が住んでいて金目の物がない、と言う。これに対し積極的に古い家を狙う理由として、「プロ中のプロ」の侵入盗23人のうち21人までが、「家の作りから見て逃げやすいから」だと答えた。防犯に無頓着でよかった時代に建てられ、家の前後左右、どこからでも出入りが可能な穴(便所や勝手口の上部の小窓など)が設けられていることも多い。「いざとなれば、体当たり一発で突き破れる壁」で、中には金目の物もほどほどに置いている。彼ら侵入盗の7割が「昭和45(1970)年までに建てられたかどうか」によって、家の素材や部材、家の設計までが強固に変わったという。
・番犬は役立つだろうか。実は、侵入盗のうち飼い犬が嫌がるのは3割にすぎず、6割は気にしないと答えている。防犯対策として番犬を敷地の中で放し飼いにするのは良策だ。しかし、犬に手馴れた泥棒もいることを忘れてはいけない。敷地内に放たれた犬には、ドッグフードを投げ与えさえすればいい。餌をくれる人に噛みつく犬はいない。それから犬と戯れ、喉から腹の辺りをさすると犬はたちまちお友だちになる。そうならないよう、ふだんのしつけが大切である。ふだんからキャンキャン鳴くような犬は、夜中でも「また鳴いてるな」で見過ごされることが多い。泥棒に入られた後で「そういえば、ずいぶん鳴いていたな」と、被害に呆然とする家人がぼやくのは珍しいことではないのだ。一方、夜間は家の中で放し飼いにする家庭も多い。犯罪者たちは「その方が嫌だ」という。場合によっては走り回るからだ。そういう意味では、意外に犬より猫の方がやっかいだ、と彼らは共通して言う。猫は手なずけにくく、しかも走りまわるからだ。
・侵入盗の9割が「望ましい」という庭は、次のような状態である。「無秩序に庭木が多数植えられている」「庭園灯がある」「芝生がはげている」「敷地がアスファルト(かコンクリート)」繁茂した庭木と庭園灯は、その光の後ろに濃い影を作りだす。芝生は足音を消すという点で都合がよい。逆に砂利は音を立てるので嫌いだという。犯罪者というのはまことにわがままである。すべての侵入盗は敷地内に侵入した時、音を出さないよう病的なほど気を遣う。敷地内を歩く音、侵入口に近寄る足音、窓を開ける音、ガラスを割る音、物色している小物入れを開閉する音、服がすれる音、自分が発する押し殺した吐息までも気にする。嘘みたいな話だが、彼らは目玉を動かしても音を感じるという。音を出さないための手足の使い方、腰のひねり方、呼吸の仕方まである。逆に言えば、守る側はそういう音が出るように敷地周りを工夫すればいい。自分でできる工夫は幾つも考えられる。代表例が砂利を敷くことだが、「釣り糸センサー」(防犯ブザーに釣り糸を付けて張り巡らす)を張る。空き瓶や空き缶を、普段は人が通らない横手・裏手の通路隙間に並べる、などだ。
・実は、クレセント錠は何の破壊をせずとも、工夫をすればひとりでに上下するようにできる。さらにクレセント錠が掛かっているかどうかは、窓ガラスを通して確認もできる。掛かっていなければ、普通に窓を開けて侵入できてしまう。この盲点を知らずにいるせいで、何人もが犠牲になっている。盲点は他にも幾つもある。アルミサッシの上の天窓(人間の体は楽に通る)、風呂場によくあるガラス製ルーバー窓(ガラス板を一枚ずつ外して侵入できる)、アルミ製の格子(もぎ取り、へし曲げて枠ごとすぐに外せる)、オートロック式の玄関ドア(紙1枚あれば開けられる)、外見から判別できる古いタイプの錠前、すりガラス(見通せるようにできる)、ガラスの一点を熱し、一気に切り取るーんなど。家屋には、普段意識しない死角があふれている。築年の古い家ほど盲点は多い。不安を感じるなら、特に女性や高齢者は一度、防犯専門家の診断を受ける必要がある。
・筆者がおすすめする侵入者を阻止するための秘策は「釣り糸センサー」だ。センサーというと普通は高価で専門家に設置を頼まねばならないが、この装置は自分で作ることができ経費は千円足らず、所要時間は1時間あれば充分である。用意した防犯ブザーの一端に釣り糸(透明なテグス)をつけ、反対側にも長めにつける。その両端をどこかに貼り付ける。防犯ブザーや糸の端を貼り付ける際は、瞬間接着剤などで外れないようにしっかり付ける。場合によっては結びつけてもいい。コツは糸が弛まないようにピンと張ることだ。設置が簡単、何より安くて済む。張る高さと長さは自分で調整できる。雨対策はビニール袋でブザーを包めばよい。長所は、一度鳴り始めたら誰かが止めないかぎり、鳴り響くことだ。侵入盗を含む犯罪者にとって、鳴り続ける不意の音ほど嫌なモノはない。音だけでなく光も出るものを使うのもよい。
・ーやりたくない都市について、もう少し教えてほしいが。
「一番目に、町の作りがしっかりしているかどうか、道路の作りを見る。しっかり作られている。それと家々の軒の線を見る。軒というか、屋根の線が凸凹していない。で、家と家の隙間がピッタリと収まっている。二番目は、警官がしっかりしている。目をしっかり開いて、周りを見回している。交番のお巡りの立ち方はどうk、パトロールをこまめにしているか、住人に話しかけるか。その点では、東京の警視庁巡査はしっかりしつけられてる。三番目は、町のみんながだらけてないか。自動車や自転車の停め方は、大阪なんかデタラメでしょ。それから落書きやゴミ、家の前の掃除や挨拶、近所で何か買ったときの店員の受け答え、とか。四番目は、最近よくある「私たちの町の何とか条例」、つまり安全・安心条例とか協議会とか、市役所が音頭をとって町ごと取り組んでいます、という看板でもあると厳しい。市民と町が一緒になってやってる、ということだから」
・我が国で最初に犯罪からの安全・安心条例が定められたのは、1979年、京都府長岡京市であった。埋もれかけた時期もあったが、その後条例は都道府県から市区町村まで、全国に広がっていった。条例はそれなりの効果をもたらした。犯罪者は幾らか、怯みを見せるようになった。しかし、彼らの現実の行動を見ていくと、実行地の決定と条例の有無は関係がない。最終的には獲物から半径20mほどの空間が、彼ら犯罪者から見て「近づきやすく、逃げやすい」か、イメージがいいマチであるかどうか、に左右される。つまり、被害者になるのを避けたいなら、その空間、自分を中心として20mの広がりをしっかり固めることだ。そのためには、近隣関係が隙間のない、住み続けたいと思うようなマチであることが望まれる。市区町村という自治体単位である必要はない。都市の住宅密集地においては16戸を1つの単位として、自分たちの「町内条例」なり「町内定め」を決めて実行することで、犯罪に強い近隣作りが可能である。
・犯罪者は、基本的に家の横手・裏手から家の中に侵入しようとする。であるならば、隣家との通路、通り道、隙間等を塞ぐことである。通路が塀で囲われているなら、塀の上に植木鉢か、何か障害になる物を置くことだ。「釣り糸センサー」というトラップを仕掛け、音を出させるのもいいだろう。それに掛かった犯罪者を町内みんなで追いかける、ということがあれば、その後4年間は大丈夫だ。家を建てる際には、隣家と話し合って「壁面の線を揃える」ことも大切である。家の凸凹を極力なくすのである。
・街が汚れている。挨拶されない。視線を投げかけられない。住人の間に「みんなで気持ちのいい町を作ろう」という絆がない。すると犯罪者は「この町でやろう」と決意する。
・犯罪者が最も恐れるのは捕まることだ。その可能性が目に見えて高ければ、割に合わないから犯罪者はその場を離れる。防犯ポスターは「戸締まり用心」「窓には二つの鍵を」といった受け身のものから、「絶対に逃さない」「犯人を捕まえました。みなさんありがとうございます」など威嚇を込めた攻撃的なものにあらためる。電力会社にことわって防犯ブザーを電信柱にセットし、何かあったら紐を引けるようにしておけば簡便な街頭緊急発信器になる。ブザーの目的を書いた警告文、電柱の防犯ブザーを見上げた犯罪者はウンザリするはずだ。
<目次>
まえがき
第1章 犯罪予防の基礎知識
基礎知識その1・実学としての犯罪予防
「はずがない」を把握する
動物行動生態学の視線
現場300回という「気」の持続
基礎知識その2・2000年の自治法改正
古典的犯罪発生観=犯罪は異質な者が起こす
現代的犯罪発生観=割れ目が犯罪を生む
基礎知識その3・犯罪は「線」である
一般行動原理と特殊行動原理
二つの行動原理の有効範囲
基礎知識その4・犯罪行動は空間距離によって変化する
「やりやすさ」と「勘」の構造
基礎知識その5・不審者の見分け方
変な人は「似合わない」
怪しい人は「コンタクトを取ろうとする」
危ない人は「迫って来る」
警察官の見る七つの像
基礎知識その6・「やりにくくする」8つの基本手法
周縁、端が危ない
犯行地は「やりやすさ」のモデル
第2章 体の守り
基本は「自分で守る」
狙われやすい6つのタイプ
ひったくりの「カモ」
不連続な灯りは危ない
駐車場・裏通り・前兆
「たった1分」は充分な時間
20m前を意識せよ
「すれ違い」には相手の身長×0.8以上の間を
全力で20m、全身で大声を
人間の噛む力はそこらの犬より凄い
家の中での一人の守り
一人でいるという情報は出さない
無駄な暴力的抵抗は控える
一人寝に防犯ブザーを
第3章 家の守り
犯罪者は下絵師である
外観から家の内を読む力
きれいは安全に直結する
ロックは二重以上に
横手・裏手を固めよ
入りを制して出を許さず
塀から3~5m前で判定
塀の効果は限定的
古い家は要注意
犬は友だち、猫はやっかい
「パピプペト」の音が大嫌い
家の囲みを守る
隅を固めよ
生け垣も「守りは二重」に
家屋本体を守る
大泥棒が線を引くと・・・
樋は手動式エレベータ
クレセント錠が盲点に
シャッターは裏切る
玄関と「ちょい出」のスキ
屋内を守る・泥棒を騙すのは3日が限度
隠し場所はどこか
盗られて絶望する物は家に置かない
「5分」を耐える
釣り糸センサーの効能
第4章 近隣の守り
孤塁死守型と共同防御型
防犯コミュニティとは何か
防犯コミュニティの基本単位
計画的住宅街ゆえの弱点も
故郷とコミュニティの違い
ゲーテッド・コミュニティという性善空間
有責感の譲り合いが生む死角
近隣の守り・実践編
マチの守り学・Q&A
防犯カメラ、センサー、パトロールの効力
第5章 都市の守り
なぜ「都市の守り」か
平成大合併で揺らぐ都市像
全国化する都市の病理
犯罪の大都市圏集中
犯罪者は都市とその周縁を好む
狙い目は大通りから入った「四つ角・三叉路」
犯罪者が嫌う4つの理由
「都市という家」を経営する
犯罪ゼロを達成するには
科学的な犯罪管理の4課題
第6章 明日の犯罪予防へ、8つの提案
1 防犯は自分自身が主役という強い覚悟を
2 危機を乗り越える安全教育を
3 犯罪に強い市民作りを
4 犯罪に強い近隣作りを
5 犯罪者が嫌うマチ作りを
6 全国的な「防犯ボランティア資料センター」の設立を
7 安全神話を復活させるため「防犯基本法」の検討を
8 防犯対策費の目的税化を
あとがき
面白かった本まとめ(2012年下半期)
<今日の独り言>
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防犯は、犯罪者が「やりにくくする」ことがポイントのようです。
具体的には「獲物に近づきにくく」、「犯行地から逃げにくく」することですね。
そのためには、街をきれいにすることや、住人の間で絆をつくるも大切なようです。
そのほかポイントとして以下も挙げられていました。
・狙われやすいタイプは、襲うだけの価値がある・無防備・体力がない・心理的強度が弱い・孤立している・襲われやすい環境下にいる
・ひったくりには、バッグ等にスキ・人通りが少ない場所にいる・視界が薄らぐ時間帯・老人・子供・女性・歩車道の区別のない道路・裏通りに注意が必要
・携帯電話を使用しながらの歩行は危険
・襲われたら20mは全力で走り抜け、距離を開ける
・襲われた時は、思い切りかみつくことも有効
・犯罪者は狙った家にいるのが一人かどうかを非常に気にする
・防犯ブザーを毎晩布団の中に入れて寝たほうが良い
・犯罪者は塀の落書き、散らかったゴミ、捨て置かれたような自転車を見てその家の心の緩み(緊張の弛緩)、隙を読みとる
・1つのドアに3つの錠がこれからの時代
・プロの侵入盗は古い家は狙い目と考え、新しい家を避ける傾向にある
・侵入盗のうち飼い犬を嫌がるのは3割に過ぎない。むしろ猫のほうがやっかい
・侵入盗の9割が「望ましい」という庭は、「無秩序に庭木が多数植えられている」「庭園灯がある」「芝生がはげている」「敷地がアルファルトかコンクリート」音を立てるのを嫌がる。
・クレセント錠は破壊せずとも外から上下できる
・侵入者を阻止するには「釣り糸センサー」が有効
・街が汚れている、挨拶されない、視線を投げかけられない、住人の間に気持ちのいい街を作ろうという絆がない街は、犯罪者が「この街でやろう」と決意する
・防犯ポスターも有効
著者の一人は、宮崎勤事件に関わり、その後、初代犯罪予防研究室長として様々な事件を探り、現場に立ち、犯罪者と向き合ってきたようです。
また、死の瀬戸際を体験し、多くの先輩や犯罪者に学んだことを書き残そうと思って本書を執筆したようです。
「犯罪者はどこに目をつけているか」という本はとてもオススメです!
以下はこの本のポイント等です。
・獲物の手前20mで、犯罪者は3つの点に注意しながら意思決定を行う。
①接近性=うまくいい獲物に近づける=実行できる(近づけた)
②逃走性=うまく逃げることができる(逃げることができた)
③直感=目的を達成するのにいいイメージがある(あった)
の3つである。最終的には「①②③の3つの柱」+「自分の欲望を満足させる獲物」+「楽をして手に入れることができる」が、彼らの「獲物獲得理論」を形成する。
・変な人と怪しい人を分けるのは、「コンタクトを取ろうとする」かどうかである。ちょっと、などとこちらに話しかける。笑いかける。後をついてくる。関心を引くような動作をする。じっと、あるいはちらちら視線を投げかけてく。微笑みながら見つめてくる。これらはすべて会話にはならないが、一種のコミュニケーションである。会話には、言葉によるものと、言葉にはよらないものの二種類がある。怪しい人は、特に言葉によらないメタ言語に「お前を自分のものにしたい」という、強いメッセージを込めて一方的に相手に発信してくる。被害者が気づいているかどうかは別として、犯罪行動を起こす前のほぼ全員が、眼差しなどによる無言のメッセージを飛ばす。これに被害者がつい微笑んだり、軽く挨拶してしまったり、あるいはプイと横を向いたりしても、何らかの会話が成立したと考える。言葉であるか、メタ言語であるかを問わず、見ず知らずの人に会話を求める人には何らかの下心がある可能性が高いと見なくてはならない。道を尋ねられたら応対するとしても、少しでも「変だ」と感じたら、こうした会話は無視するか、キッパリ断る必要がある。そうしないと相手は必ず自分のいいように解釈し、行動してくる。
・怪しい人から危ない人へ、犯罪者は急変する。この中途にある変化をつかむことが対策のポイントだ。変化のポイントは4つある。
①対峙距離の変化:異常に近づく、急に早足となる
②様相・やり取りの変化:顔つきが急に変わる、目が一点に凝固して来る、脅迫的に何かを求める、人の話や行動を強く遮る、周囲に視線を絶え間なく投げかける
③態度の変化:体を掴む、大声を出す、車に無理矢理乗せようとする、仲間を呼び寄せようとする
④危なさが目に見えて強調される:何らかの凶器、あるいは凶器になりうる物を持っていて、それを取り出す、拳を握りしめている
むろん④になれば、もう見分けるどころではない。相手はあからさまに「追って来る」のだ。逃げる。叫ぶ。駆け込む。手足や持ち物を武器にして抵抗する-それらを力いっぱい行わなくてはならない。できることなら危ない環境には近づかないこと、周囲に注意を払うこと、人間を観察すること、そして身の丈に合った自衛力を身につけておくことが大切である。
・総論としては、犯罪防止は犯罪者が「やりにくくする」ことに徹するのが最優先だ。接近性、逃走性、直感という「やりやすさ」の3本柱を引き倒すことである。つまり、獲物に近づきにくく、犯行地から逃げにくく、獲物や犯行地について犯罪者に「こいつ(ここ)はまずいぞ」というイメージを持たせるのだ。具体的にはどうすればよいか。やはり、迷ったときは単純化してみることだ。
①領域性(自分たちの街や空間である、という境界をつくる)
②監視・見守り性(他人に関心を持つ、注視する)
③動線性(人の動きまわる道路や回路、場合によっては犯罪者が空けた隙間をコントロールする)
④拘置性(不法なことをしたら、そこに留め置く)
という4つのポイントの確保である。この4つを確保するために、すぐにできることとして、次の8種の基本手法が考えられる。
1.遮断:人や物への犯罪者の接近や逃走の経路を切断する、制限する。「ここは行き止まり」などの表示や塀など。
2.威嚇:監視性を中心として、脅しの音や光を出すことで、犯罪者の接近や逃走が困難であることを強調する。「ここでは逃げられないぞ」というポスターなど。
3.阻止:監視性を中心として、犯罪者に対して標的が積極的に向かい合い、接近するのを「自分の力やご近所の底力で止める、押し返す」。隣家との間にセットされた瞬間発光のセンサーライト設置など。
4.回避:動線性を中心とし監視性で補助しながら犯罪者を早期に発見し、犯罪者から外れるよう、接近を避けられるようにするもの。侵入した犯罪者から身を隠す「隠れ部屋」など。
5.隔離:拘置性と導線性を中心として、犯罪者を「遠ざけ、囲い込んでしまう」こと。極端な例として「刑務所」がある。
6.強化・教育:領域性と動線性を協働させながら、犯罪被害者あるいは物の「自己防衛力」を高めることで犯罪者を「跳ね返そう」というもの。家の塀作りや子どもに防犯ブザーを持たせるなど。
7.矯正(教育):拘置性と監視性を中心に犯罪者及びその予備群に教育を施すことで、犯罪行動に走らないよう「人格を作る・作り変える」もの。矯正施設
8.環境改善:犯罪者と被害者を囲む物理的、そして社会的環境を全体として改善することで、犯罪を生み出す土壌を作り変えていくもの。荒廃地の改善や、1970年代にアメリカのオスカー・ニューマンらによって確立された環境設計による防犯まち作りなど。
これら8種の基本型を踏まえ、それぞれの地域の特性や文化、行政(自治体)の熱意、市民の集まりと関心、基礎的な素材(音や光を出す物)、すなわち人と物とを適正に組み合わせることで犯罪を「やりにくくする」ことができる。
・どんな人が狙われやすいのか。元犯罪者たちと被害者(児童含む)への調査から6つのタイプが抽出される。
①襲うだけの価値がある者
・襲うだけの魅力を身に備えている
・襲うこと自体が、自分や周囲を納得させる
②無防備である者
・何の警戒も備えもしていない
・他のことに注意をそがれている(携帯電話など)
・その環境が危険だということに無知である
③体力がない者
・小柄で体力が劣ると見られがち
・小児や女性、高齢者、肉体的・精神的ハンディキャップがある(犯罪弱者)
・大人であっても実年齢や男性性を感じさせない様相である
・抵抗力が弱い(力がない)と見られがち
④心理的強度が弱い者。
・ウロウロ、キョロキョロ、チョロチョロ、オドオドしている
・大人びた格好をしたがる、カッコつけたがる、可愛い
・服装がだらしない、服や靴、帽子をダラリと身につけている
・きっぱりとしていない、体に締まりがなくダラダラしている
・すぐ相手につきあってしまう、嫌なことをイヤとキッパリ言えない
・なぜ、どうして?と聞けない、すぐに黙り込んでしまう
・危ないと言われているのに、自ら興味本位に立ち入る
⑤孤立している者
・一人だけいる
・一人だけになる
・大勢の中にいても疎外され孤立している
⑥襲いやすい環境下にいる者(その中でも特に注意を要する環境)
・灯りのない、あるいは遠くに灯りが見える夜道を歩いている
・灯りがあっても、「ぽつん」と灯りのある夜道を歩いている
・樹木が覆い被さるように繁茂している道路や広場を利用している
・大小の道路が幾つも交差している道を利用している
・裏道を利用している
・直線でその前後が曲線、あるいは交差点の道路を利用している
・頻発するひったくり事犯に遭遇しないための心得と不幸にして遭遇した場合における防止である。ひったくり事犯は、歩行者自身にスキが多いことが第1の欠点で、賊にとって、スキ多い歩行者は「カモ」となる。第2は、人通りの極端に少ない場所や道路。第3は、視界が薄らぐ時間帯。第4は、極端に年齢が高い老人、もしくは低い子ども。第5は女性。第6は歩車道の区別のない道路。第7は裏通りで広くもなく狭くもないといった普通路
・犯罪者は、被害者の死角(隙)を突いて襲いかかる。路上では前後に気を配りなgら、しっかり歩くことだ。では、どれくらい前後に気を配ればいいのか。路上犯は被害者との間を電信柱の間隔ぐらい置きながら歩く。この距離は、襲撃行動を起こす際に、犯罪者全般に共通する長さでもある。つまり一般行動原理である。おもしろいことに、イギリスに長く住む日本人女性に話を聞いたところ、彼女も20m前を意識して歩くと言っていた。襲いかかられてからでは遅い。雑踏であろうと一人の時だろうと、明るいうちでも薄暗がりでも、日本の電信柱の間ぶんの距離は意識して歩くことだ。
・最近特に増えているのが、スマートフォンなど携帯電話を使用しながらの歩行である。これは非常に危険だ。
・襲ってきた場合は、何m逃げればよいのだろうか。犯罪者が標的を襲う際の心理的変化を見る実験で、彼らの「やる気」がなくなるまでの距離を測定してみた。結果は20m。これは襲いかかる時、犯罪者の緊張感が高まっていくのと同じ距離である。「子どもを襲う場合」も想定して実験を行ってみたが、「やる気」の変化は対象が大人でも子どもでも違いはなかった。つまり、被害に遭遇した(あるいはしかけた)場合は、ともかく20mを全力で走り抜ける気持ちと馬力を持たねばならない。わずか20mと侮ってはいけない。実際に走ってみれば分かるが、20mは考えるよりも長い。それでも危機から脱出するには、それだけの体力は必要なのだ。少なくとも誰かが助けてくれるのでは、という甘えは許されない。
・多くの人は、20m逃げるより先に悲鳴をあげるだろう。これは他人の関心を引くのにきわめて有効だ。とっさのキャー!でも効果は十分ある。「助けてぇ!」「人殺しぃ!」はなおよい。しかし、大声には二つ問題がある。一つは、自分では大声を出したつもりでも、えてして最大の大声にはなっていないこと。一度あらんかぎりの大声を出す経験を、誰でも持つべきである。目安は腹がひっこみ、背中が折れ曲がるほどの声である。二つ目は、「助けてぇ!」と叫んでも、ややもすると、ふざけて遊んでいるととられかねないことだ。被害者が子どもの場合に多い。そう見られないために、叫ぶと同時に手ぶりと足ぶりをまじえる。耳で分からせ、目でも知らせることである。
・口を塞がれるのは、生命の危機に直結する重大な事態だ。できるかぎりの、最大の抵抗を瞬時にとらなくてはならない。ずっとやりやすいのは「かみつく」ことだ。人間のかみつく力には凄いものがある。成人の男女では80kg近くに達し、ラブラドールの57kgをゆうに上回る。ライオンや虎の300kg前後の4分の1の力だが、肉は食いちぎれる。顔や体にまとわりつく、むきだしの腕や手にかみつくのだ。それなら襲撃者に、いかに非力な女性や子どもでも十分立ち向かえる。イギリスの安全体験施設では、かみつくことを真剣に子どもに教えている。大切なのは、実際にかみつくことだ(それも素早く)。そしてかみついたら、相手が悲鳴をあげるまで離さない。この間に襲撃者は「ぶっ殺すぞ」と脅したり、顔を無茶苦茶に殴ったりするかもしれない。しかし、こうした言葉を吐かれても実際に殺された例はこれまでにない。だから、心を決めて思い切りかみつくことだ。弱者を無法に襲う者は、肉を食いちぎられることぐらい罰として当然である。ライオンがそうするように、かみついたまま頭を大きく振って引き回す。そして機会をうかがい、大声をあげて逃げるのだ。
・日常生活で注意すべき「情報管理」は他にもある。「家にいる人数」がその代表であろう。犯罪者は、ねらった家にいのが一人かどうかを非常に気にする。だから電気メーターの回転や郵便受けを見る。窓ガラスに小石を投げてみる。あるいは電話をかける。それに対して「今は誰もいなくて、6時過ぎにならないと帰ってきません」などと答えてはならない。今から数時間は一人、という貴重な情報を犯罪者に与えてしまう。そう答えたのは幼児や高齢の女性なら、犯罪にはもってこいである。新聞や訪問販売を装った問いかけに、「今から出かけるので後にしてください」と言うのも駄目だ。さらに宅配便や届け物があるというので、判子や現金を置いている場所に直行してはんあい。特に子どもはそうだが、それら貴重品を置いている場所の情報を与えてしまう。
・深夜一人で寝入っていて、別の部屋あるいは庭先で物音がした時ほど背筋が凍ることはない。頭では考えても、身動きできない金縛り状態となる。手の先を布団の外にちょっと出すことさえもできなくなる。こうした時に備えて、防犯ブザーを毎晩布団の中に入れて寝るよう、習慣づけることをおすすめする。犯罪者は音・光・モノ(人や物)を嫌う。犯罪者自身、忍び込んだ家で何が起こるか分からないと恐れている。忍び込んだ先が警察官の家かもしれないのだ。隣室や庭で変な物音を耳にし、どうにも怖い、不安だとなったら、布団の中で防犯ブザーの栓を引き抜き、部屋の遠方に投げる。できれば、音を出すのと同時に発光するタイプのブザーが望ましい。そして布団を被り、耳をそばだてる。すぐ動けるように膝は折っておく。防犯ブザーは布団の中だけでなく、自分の家の廊下、さらに旅先でもこの対策は有効である。人が通らないベランダの下や家の間の通路にひもを引っ張っておいて、鳴るようにしておくのもいい。
・侵入盗は、家屋の外観の何に注目し、どれほど家の内部情報を読みとるのか。以下は、猿の義ちゃんが、ある家の周りを2周する間に読みとった箇所である。隣家との距離、隣家の窓の位置、塀の状態、道路を挟んで向かいの家の窓の位置、狙った家の前の道路の汚れ具合、衛星TVアンテナの有無、狙った家の二階の有無、屋根周り、小庇の幅・長さ・取り付け状態、家の樋の位置、郵便ポストの位置、ゴミの量と入っているモノ、警備会社のステッカー、犬・防犯カメラ、フラッシュライトの有無、停めてある車の種類・台数と駐車場の位置、屋根瓦の色と厚さ、敷地に置かれた物とその利用法、雑草の伸び具合、塀あるいは生け垣の状態、門柱・表札に書かれた名前、煙突の位置と高さ、庭木の位置と繁り具合、芝生のすり減り状態、干し物の順番と色、建物自体の広さや古さ、建物のペンキの色、ベランダの位置と形状、電気・ガスのメーター、玄関・裏戸・窓の錠の状態、裏戸の出入り口の汚れ、およその間取り、炊事場と風呂場の位置、玄関とそこへのアプローチ、窓の大きさ・窓枠の材料・位置・窓格子の種類、部屋のカーテンの色や柄。
これだけのものをちらと見ただけで覚え、その意味を読み、分析する作業をわずか2周、長くても5分程度で終えてしまう。プロの侵入盗の知能の高さが分かる。彼らの「頭の良さ」は生半可ではないのである。
・精神は形に、形は精神に反映する。物が秩序立っていることは、その社会や個人がそれなりに秩序だっていることを表す。だから犯罪者は、塀の落書き、散らかったゴミ、捨て置かれたような自転車を見て、その家の心の緩み(緊張の弛緩)、隙を読みとる。「この町でやる」という品定めの決め手となるのも、駅前と町中の落書き、ゴミ(汚れてはげかけたポスターは落書きやゴミに等しい)、放置自転車の三大汚れだという。屋根の連なり(スカイライン)が凸凹していないかどうかも、判断の要素になる。そして「この家をやる」という決定には、三大汚れに加えて、家の庭木の手入れの状態が大きく作用する、と犯罪者は言う。枝葉が繁り放題の庭木は視界を遮るばかりか、家人の心の荒びと規範の崩れを体現している。きれいは安全に直結するのだ。
・昔から「ワンドア・ツーロック」(一つのドアに二つの錠)という。金言である。家屋にかぎらず、「一つだけの防御」は強固な意思を持った犯罪者には通用しない。最近は、二重ではなく三重の備えが必要とさえいわれる。これからは、ドアだけでなく、家の守りを担うあらゆる箇所で「ワンドア・スリーロック」の時代であることを強調しておきたい。
・プロの侵入盗は古い家は狙い目と考え、新しい家を避ける傾向にある。新しい家は防犯対策が進み、それなりに強固な素材を使用しているからだ。その上、見てくれはいいが中に金を置いていない。比較的若年層の家族が住んでいて金目の物がない、と言う。これに対し積極的に古い家を狙う理由として、「プロ中のプロ」の侵入盗23人のうち21人までが、「家の作りから見て逃げやすいから」だと答えた。防犯に無頓着でよかった時代に建てられ、家の前後左右、どこからでも出入りが可能な穴(便所や勝手口の上部の小窓など)が設けられていることも多い。「いざとなれば、体当たり一発で突き破れる壁」で、中には金目の物もほどほどに置いている。彼ら侵入盗の7割が「昭和45(1970)年までに建てられたかどうか」によって、家の素材や部材、家の設計までが強固に変わったという。
・番犬は役立つだろうか。実は、侵入盗のうち飼い犬が嫌がるのは3割にすぎず、6割は気にしないと答えている。防犯対策として番犬を敷地の中で放し飼いにするのは良策だ。しかし、犬に手馴れた泥棒もいることを忘れてはいけない。敷地内に放たれた犬には、ドッグフードを投げ与えさえすればいい。餌をくれる人に噛みつく犬はいない。それから犬と戯れ、喉から腹の辺りをさすると犬はたちまちお友だちになる。そうならないよう、ふだんのしつけが大切である。ふだんからキャンキャン鳴くような犬は、夜中でも「また鳴いてるな」で見過ごされることが多い。泥棒に入られた後で「そういえば、ずいぶん鳴いていたな」と、被害に呆然とする家人がぼやくのは珍しいことではないのだ。一方、夜間は家の中で放し飼いにする家庭も多い。犯罪者たちは「その方が嫌だ」という。場合によっては走り回るからだ。そういう意味では、意外に犬より猫の方がやっかいだ、と彼らは共通して言う。猫は手なずけにくく、しかも走りまわるからだ。
・侵入盗の9割が「望ましい」という庭は、次のような状態である。「無秩序に庭木が多数植えられている」「庭園灯がある」「芝生がはげている」「敷地がアスファルト(かコンクリート)」繁茂した庭木と庭園灯は、その光の後ろに濃い影を作りだす。芝生は足音を消すという点で都合がよい。逆に砂利は音を立てるので嫌いだという。犯罪者というのはまことにわがままである。すべての侵入盗は敷地内に侵入した時、音を出さないよう病的なほど気を遣う。敷地内を歩く音、侵入口に近寄る足音、窓を開ける音、ガラスを割る音、物色している小物入れを開閉する音、服がすれる音、自分が発する押し殺した吐息までも気にする。嘘みたいな話だが、彼らは目玉を動かしても音を感じるという。音を出さないための手足の使い方、腰のひねり方、呼吸の仕方まである。逆に言えば、守る側はそういう音が出るように敷地周りを工夫すればいい。自分でできる工夫は幾つも考えられる。代表例が砂利を敷くことだが、「釣り糸センサー」(防犯ブザーに釣り糸を付けて張り巡らす)を張る。空き瓶や空き缶を、普段は人が通らない横手・裏手の通路隙間に並べる、などだ。
・実は、クレセント錠は何の破壊をせずとも、工夫をすればひとりでに上下するようにできる。さらにクレセント錠が掛かっているかどうかは、窓ガラスを通して確認もできる。掛かっていなければ、普通に窓を開けて侵入できてしまう。この盲点を知らずにいるせいで、何人もが犠牲になっている。盲点は他にも幾つもある。アルミサッシの上の天窓(人間の体は楽に通る)、風呂場によくあるガラス製ルーバー窓(ガラス板を一枚ずつ外して侵入できる)、アルミ製の格子(もぎ取り、へし曲げて枠ごとすぐに外せる)、オートロック式の玄関ドア(紙1枚あれば開けられる)、外見から判別できる古いタイプの錠前、すりガラス(見通せるようにできる)、ガラスの一点を熱し、一気に切り取るーんなど。家屋には、普段意識しない死角があふれている。築年の古い家ほど盲点は多い。不安を感じるなら、特に女性や高齢者は一度、防犯専門家の診断を受ける必要がある。
・筆者がおすすめする侵入者を阻止するための秘策は「釣り糸センサー」だ。センサーというと普通は高価で専門家に設置を頼まねばならないが、この装置は自分で作ることができ経費は千円足らず、所要時間は1時間あれば充分である。用意した防犯ブザーの一端に釣り糸(透明なテグス)をつけ、反対側にも長めにつける。その両端をどこかに貼り付ける。防犯ブザーや糸の端を貼り付ける際は、瞬間接着剤などで外れないようにしっかり付ける。場合によっては結びつけてもいい。コツは糸が弛まないようにピンと張ることだ。設置が簡単、何より安くて済む。張る高さと長さは自分で調整できる。雨対策はビニール袋でブザーを包めばよい。長所は、一度鳴り始めたら誰かが止めないかぎり、鳴り響くことだ。侵入盗を含む犯罪者にとって、鳴り続ける不意の音ほど嫌なモノはない。音だけでなく光も出るものを使うのもよい。
・ーやりたくない都市について、もう少し教えてほしいが。
「一番目に、町の作りがしっかりしているかどうか、道路の作りを見る。しっかり作られている。それと家々の軒の線を見る。軒というか、屋根の線が凸凹していない。で、家と家の隙間がピッタリと収まっている。二番目は、警官がしっかりしている。目をしっかり開いて、周りを見回している。交番のお巡りの立ち方はどうk、パトロールをこまめにしているか、住人に話しかけるか。その点では、東京の警視庁巡査はしっかりしつけられてる。三番目は、町のみんながだらけてないか。自動車や自転車の停め方は、大阪なんかデタラメでしょ。それから落書きやゴミ、家の前の掃除や挨拶、近所で何か買ったときの店員の受け答え、とか。四番目は、最近よくある「私たちの町の何とか条例」、つまり安全・安心条例とか協議会とか、市役所が音頭をとって町ごと取り組んでいます、という看板でもあると厳しい。市民と町が一緒になってやってる、ということだから」
・我が国で最初に犯罪からの安全・安心条例が定められたのは、1979年、京都府長岡京市であった。埋もれかけた時期もあったが、その後条例は都道府県から市区町村まで、全国に広がっていった。条例はそれなりの効果をもたらした。犯罪者は幾らか、怯みを見せるようになった。しかし、彼らの現実の行動を見ていくと、実行地の決定と条例の有無は関係がない。最終的には獲物から半径20mほどの空間が、彼ら犯罪者から見て「近づきやすく、逃げやすい」か、イメージがいいマチであるかどうか、に左右される。つまり、被害者になるのを避けたいなら、その空間、自分を中心として20mの広がりをしっかり固めることだ。そのためには、近隣関係が隙間のない、住み続けたいと思うようなマチであることが望まれる。市区町村という自治体単位である必要はない。都市の住宅密集地においては16戸を1つの単位として、自分たちの「町内条例」なり「町内定め」を決めて実行することで、犯罪に強い近隣作りが可能である。
・犯罪者は、基本的に家の横手・裏手から家の中に侵入しようとする。であるならば、隣家との通路、通り道、隙間等を塞ぐことである。通路が塀で囲われているなら、塀の上に植木鉢か、何か障害になる物を置くことだ。「釣り糸センサー」というトラップを仕掛け、音を出させるのもいいだろう。それに掛かった犯罪者を町内みんなで追いかける、ということがあれば、その後4年間は大丈夫だ。家を建てる際には、隣家と話し合って「壁面の線を揃える」ことも大切である。家の凸凹を極力なくすのである。
・街が汚れている。挨拶されない。視線を投げかけられない。住人の間に「みんなで気持ちのいい町を作ろう」という絆がない。すると犯罪者は「この町でやろう」と決意する。
・犯罪者が最も恐れるのは捕まることだ。その可能性が目に見えて高ければ、割に合わないから犯罪者はその場を離れる。防犯ポスターは「戸締まり用心」「窓には二つの鍵を」といった受け身のものから、「絶対に逃さない」「犯人を捕まえました。みなさんありがとうございます」など威嚇を込めた攻撃的なものにあらためる。電力会社にことわって防犯ブザーを電信柱にセットし、何かあったら紐を引けるようにしておけば簡便な街頭緊急発信器になる。ブザーの目的を書いた警告文、電柱の防犯ブザーを見上げた犯罪者はウンザリするはずだ。
<目次>
まえがき
第1章 犯罪予防の基礎知識
基礎知識その1・実学としての犯罪予防
「はずがない」を把握する
動物行動生態学の視線
現場300回という「気」の持続
基礎知識その2・2000年の自治法改正
古典的犯罪発生観=犯罪は異質な者が起こす
現代的犯罪発生観=割れ目が犯罪を生む
基礎知識その3・犯罪は「線」である
一般行動原理と特殊行動原理
二つの行動原理の有効範囲
基礎知識その4・犯罪行動は空間距離によって変化する
「やりやすさ」と「勘」の構造
基礎知識その5・不審者の見分け方
変な人は「似合わない」
怪しい人は「コンタクトを取ろうとする」
危ない人は「迫って来る」
警察官の見る七つの像
基礎知識その6・「やりにくくする」8つの基本手法
周縁、端が危ない
犯行地は「やりやすさ」のモデル
第2章 体の守り
基本は「自分で守る」
狙われやすい6つのタイプ
ひったくりの「カモ」
不連続な灯りは危ない
駐車場・裏通り・前兆
「たった1分」は充分な時間
20m前を意識せよ
「すれ違い」には相手の身長×0.8以上の間を
全力で20m、全身で大声を
人間の噛む力はそこらの犬より凄い
家の中での一人の守り
一人でいるという情報は出さない
無駄な暴力的抵抗は控える
一人寝に防犯ブザーを
第3章 家の守り
犯罪者は下絵師である
外観から家の内を読む力
きれいは安全に直結する
ロックは二重以上に
横手・裏手を固めよ
入りを制して出を許さず
塀から3~5m前で判定
塀の効果は限定的
古い家は要注意
犬は友だち、猫はやっかい
「パピプペト」の音が大嫌い
家の囲みを守る
隅を固めよ
生け垣も「守りは二重」に
家屋本体を守る
大泥棒が線を引くと・・・
樋は手動式エレベータ
クレセント錠が盲点に
シャッターは裏切る
玄関と「ちょい出」のスキ
屋内を守る・泥棒を騙すのは3日が限度
隠し場所はどこか
盗られて絶望する物は家に置かない
「5分」を耐える
釣り糸センサーの効能
第4章 近隣の守り
孤塁死守型と共同防御型
防犯コミュニティとは何か
防犯コミュニティの基本単位
計画的住宅街ゆえの弱点も
故郷とコミュニティの違い
ゲーテッド・コミュニティという性善空間
有責感の譲り合いが生む死角
近隣の守り・実践編
マチの守り学・Q&A
防犯カメラ、センサー、パトロールの効力
第5章 都市の守り
なぜ「都市の守り」か
平成大合併で揺らぐ都市像
全国化する都市の病理
犯罪の大都市圏集中
犯罪者は都市とその周縁を好む
狙い目は大通りから入った「四つ角・三叉路」
犯罪者が嫌う4つの理由
「都市という家」を経営する
犯罪ゼロを達成するには
科学的な犯罪管理の4課題
第6章 明日の犯罪予防へ、8つの提案
1 防犯は自分自身が主役という強い覚悟を
2 危機を乗り越える安全教育を
3 犯罪に強い市民作りを
4 犯罪に強い近隣作りを
5 犯罪者が嫌うマチ作りを
6 全国的な「防犯ボランティア資料センター」の設立を
7 安全神話を復活させるため「防犯基本法」の検討を
8 防犯対策費の目的税化を
あとがき
面白かった本まとめ(2012年下半期)
<今日の独り言>
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