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「「地球のからくり」に挑む(大河内直彦)」という本はとてもオススメ!

2013年03月08日 01時00分00秒 | 
<金曜は本の紹介>

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 「「地球のからくり」に挑む」という本は、地球の営みと私たちの暮らしがどのような原理で結びついているのかをエネルギーを軸にして書かれたものです。

 太陽のエネルギーや、農耕に必要な肥料のための窒素固定法の開発、石油、石炭、天然ガス、光合成、原子力などについてその歴史も踏まえて興味深く説明があります。

 特に、石油が、白亜紀のシアノバクテリアによる赤潮によって作られた大量のヘドロが変質したものとは知りませんでしたね。ということは、昔は海だったところであれば世界中で石油が産出されるかもしれませんね。日本にもたくさん石油はあるのかもしれません。

 また、首都圏一帯の地下に、日本における天然ガス消費量のおよそ5年分の大量の天然ガスが眠っているとは知りませんでしたね。
ただ、地盤沈下が懸念されるのでこの天然ガスの採掘は法律で禁じられているようです。

 ちなみに石炭は、湿原に繁茂した植物が枯れた後に湿原に埋もれて泥炭となったものが、さらに変質したものとのことです。

 そのほか、窒素に水素を反応させてアンモニアを合成することで肥料を作れ、また火薬を合成することができるようになって戦争が起こったというのも興味深かったですね。

 「「地球のからくり」に挑む」という本は、エネルギーや地球のからくりについて考えさせられる良書で、とてもオススメです!

 以下はこの本のポイント等です。

・原始的な暮らしを営んでいた1万年前の人類は、世界で300万~400万人程度だった。ちょうど横浜市の人口くらいで、現在の2000分の1にすぎなかった。つまり、自然な姿の生態系においては、この数字が動物としてのヒトの妥当な個体数(人口)ということになろう。ところが、転機が訪れた。1万年ほど前に、人類が発明したすばらしいシステムが、そのきっかけだった。農耕である。農耕とは早い話が、人類が大地の一部を切り分けて「特別仕様」にし、自分たちだけの食糧を育てることだ。人類は、自然のつながりだけに頼った太陽エネルギーの利用法から手を切ったのである。人類だけが(皆で自然エネルギーを分かち合うという)自然界のルールに縛られずに抜け駆けできるようなからくりを生み出したとも言える。その意味で、農耕の始まりは人類の歴史にとて大きな転機となった。おかげで人口は徐々に増えはじめ、古代ギリシャ・ローマ時代になると2~3億人にまでなっていた。人類だけのために切り分けられた土地では、天から降り注ぐ太陽エネルギーを最大限化学エネルギー(つまり食料)に変換させる努力が払われ、人類の食物(と、結局は人間の食物になる家畜の食物)が効率よく育てられている。

・生き物は、化学的に見ると数十種類の元素から成り立っている「物質」でもある。植物の場合、その平均的な化学組成を多いほうから順番に挙げていくと、炭素・水素・酸素・窒素・硫黄・リンとなる。もっとも多い炭素は大気中に二酸化炭素として含まれているし、水素は水に含まれている。そして、酸素は大気と水の両者にたっぷり含まれている。そのため、多い方から3つの元素については、材料に事欠くことはない。ところが、4番目以降の元素、つまり窒素、硫黄、リンなどについては全て、もともと土の中に含まれていたものを吸収している。窒素は大気中に含まれているとはいえ、窒素ガスという、ほとんどの植物が利用できない物質だ。つまり作物を育てれば育てるだけ、土の中から窒素、硫黄、リンが消費され抜けていくことになる。土壌は徐々に痩せていき、いずれこれらの元素は枯渇する。こういった元素の行き着く先は、とりあえずは人類や家畜の胃袋である。

・農作物の生育にともなって耕作地から欠けやすい順に、窒素・リン・カリウムという3つの元素であることを明らかにしたのは、19世紀半ばのドイツの化学者ユストゥス・リービッヒである。それ以来、田畑から収穫量を上げるためには、まずは窒素肥料が必須であることは広く知られるようになった。それから1世紀近く後の話だが、海でも同様に、窒素がもっとも早く枯渇する栄養であることが明らかにされた。だから窒素は、この地球上に繁茂するあらゆる植物の量を決める元素といえる。先にも触れたように、植物の量は食物連鎖を経て私たち動物にとって使用可能なエネルギーを決める。つまり、窒素こそが地球の定員を決めている元素なのである。

・窒素という元素は「腕」を3本もっている。窒素ガスとは、2つの窒素原子が互いに3本の腕でがっちり結合した分子なのである。2つの窒素原子が結合する力はきわめて強力で、そう簡単に切断することはできない。だから窒素ガスは、自然界で起こるほとんどの化学反応に参加しない。極めて安定だからこそ、46億歳にもなった地球の大気の主成分となりえたとも言える。

・文字通り、煮ても焼いても食えない窒素ガスを、窒素肥料に変換するすばらしい方法が開発されたのは20世紀初頭のことである。そのころ、化学の分野で世界の最先端を走っていたドイツでは、人々の生活に役立つ物質を人工的に大量に作り出す近代的な化学工業がすでに芽生え始めていた。

・安価な窒素肥料合成の要となるアンモニア合成に初めて成功したのは、ドイツ西部の中堅大学カルスルーエ工科大学のフリッツ・ハーバーだった。アンモニアは、身近なところでは私たちの尿に含まれている「ちょっと臭う」物質で、植物にとって簡単に(つまり大したエネルギーを使わずに)アミノ酸やたんぱく質に変化させることができる。ハーバーが開発したアンモニア合成法とは、窒素ガスに水素を反応させるというきわめて単純なものだ。アンモニア(NH3)は、窒素原子1個に水素原子3個が結びついた分子だ。だから窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)をうまく反応させれば、アンモニアを作ることができる。窒素ガスは大気中にほぼ無尽蔵にあるし、水素ガスは石炭と水を高温で反応させることによって得ることができる。材料に事欠くことはない。

・人工的な窒素固定法が開発されたおかげで、ドイツはもはやチリ硝石に頼る必要はなくなった。さらに合成したアンモニアからは、火薬を合成することもできた。肥料と同時に爆薬をも手にしたドイツは、脆弱な国家基盤から解放されることになる。

・天文学者や化学者が宇宙の炭素について研究する重要な動機のひとつは、宇宙空間において生命が存在する可能性について探ることだ。これまでの成果によると、私たちの身体を形作るアミノ酸をはじめ、多種多様な有機分子が隕石中から見出されてきた。その中に、石油の主成分である炭化水素も含まれている。ゴールドに言わせれば、宇宙空間からやってきた炭化水素こそが石油の起源だ。

・1億年のタイムカプセルを開けて私たちが手にした結果は、驚くべきことに、現代の天然の赤潮そのものだった。大量のヘドロを作りだしたのは、紅海の赤潮と同じシアノバクテリアだったのである。シアノバクテリアは、白亜紀には世界中の海で、何度も「赤潮」を引き起こし、大暴れしていた。しかも桁違いに大きな規模で。一度の赤潮は数十万年にわたって続いていた。海を汚す人類もおらず、栄養に乏しい大海原で、どうして大規模な赤潮が起きるのだろう?その答えは、「シアノバクテリア」という生き物の中に隠されている。シアノバクテリアは、「窒素固定」と呼ばれる特殊な能力をもっている。大気や海水中に溶けている窒素ガスを体内に取り込んで、アンモニアやアミノ酸などに換えることができるのだ。つまり、ハーバー・ボッシュ法とまったく同じことを、わずか一つの細胞しかもたないこの小さな生き物が、いとも簡単にやり遂げてしまうのである。特大の規模をもつ赤潮によって海は広範囲にわたって酸欠状態になり、海底には大量のヘドロが溜まった。そして一部のヘドロが、現在までの1億年の間に地熱で熟成され、石油へと変質したのである。現在、ベネズエラのオリノコ川流域やカナダ・アルバータ州で採掘されている「オイル・サンド」や、アメリカ・コロラド州などで採掘されている「オイル・シェール」とは、まさしく白亜紀の赤潮で作られたヘドロそのものなのである。19世紀末以降、人類の発展を根本で支え続けてきた石油は、かつて地球規模で起きた赤潮が元になっている。悪霊に祟られた海は死の海と化し、当時海に暮らしていた多くの生き物が絶滅においやられた。

・現代文明を支えてきた石油は、シアノバクテリアという目にも見えない小さな生き物たちを起源としている。現代人は、太古の昔にシアノバクテリアが数百万年にわたって大繁殖し、せっせと貯め続けた太陽エネルギーの恩恵にあずかって暮らしている。そして、その小さな生き物を形作る炭素は、地球という星の内部に長らく閉じこめられていた宇宙のかけらだった。

・泥炭とは、湿原に繁茂する植物が枯れた後、そのまま湿原に埋もれて変質したものだ。石炭とは一言でいうと、その泥炭がさらに変質したものである。陸上植物は、海の植物プランクトンとは違い、樹皮や細胞壁、それに繊維成分などといった分解され(腐り)にくい成分を多く含んでいる。実際に石炭を顕微鏡で覗いてみると、植物細胞の組織が観察できることが多い。湿原の泥炭の中は酸素が枯渇し、最近による分解がゆっくりとしか進まない。こういった条件のもとで、泥炭の中に埋没した有機物が、圧力と地熱の影響を受けてじっくり熟成されたものが石炭なのである。

・地球史で言うと、今から3億年ほど遡った時代にもっとも多くの石炭が作られた。当時は、大陸の広い範囲がうっそうとした森林に覆われていたのである。「石炭紀」という時代が示すとおり、世界的に見れば、現代の石炭はこの時代の堆積物から見いだされることが多い。残念ながら、我が国には石炭紀の地層はほとんどなく、採掘される石炭は、数千万年前の小規模な湿原が元になっている場合が多い。そのため埋蔵量はそれほど大きくなく、個々の炭田の規模も小さい。

・ここ数年、エネルギー業界で大きな脚光を浴びているのが「シェール・ガス」と呼ばれる天然ガスである。シェール・ガスとは、石油の根源岩である黒色頁岩(ブラック・シェール)層から採れる天然ガスのことである。コスト効率の高い採掘技術が最近になって進展したおかげで、採掘が採算に合うようになった。その埋蔵量は現在、中国やアメリカなどに大量に確認されているが、今後調査が進むにつれその埋蔵量はさらに増加していくものと考えられている。アメリカでは、東海岸のペンシルバニア州などでここ数年、実際にシェール・ガスが採掘され始めており、エネルギー業界ではゴールドラッシュさながらの様相を呈しつつある。おかげで、長らくロシアや中東で採れる天然ガスに大きく依存していた世界の天然ガス市場のバランスが、現在少しずつ変わり始めている。

・地中で作られたメタンは、岩石のわずかな隙間や堆積物の粒子の間をすり抜けて、地表面や海底へ向かって少しずつ移動する。しかし、その途中で罠が待ち受けている。地下2km付近から地表面近くにかけて、メタンと水が出会うと「メタン・ハイドレート」の安定領域が広がっているのだ。メタン・ハイドレートは、低温で高圧という条件に限って安定に存在する。1気圧0~30℃という地表面の環境にさらすと、間もなく溶けてしまい、水とメタンに分離する。たとえば水深2000mの海域では、海底面から海底下500m付近までが安定領域である。地下や海底下に広がるハイドレートの安定領域には、多量の水が存在している。そのためこういったところでは、メタン・ハイドレートは自然に形成される。日本近海では、静岡県沖から高知県沖に広がる「南海トラフ」と呼ばれる海域に、多量に存在していることが知られてきた。また新潟沖では、メタン・ハイドレートが海底にまで顔を出し、そこから融けだしたメタンの泡の柱が海底から立ち上がっていることが観察されている。

・陸上においては、地表面から直接大気中に放出されるメタンは、私たちにとって危険かつ迷惑なものである。なぜなら大気中のメタンは、しばしば森林火災を引き起こすうえ、地球温暖化ガスとして悪名高いものでもある。現在、大気中のメタン濃度はおよそ1.8ppmで、二酸化炭素より二桁以上も少ない。しかしメタン1分子あたりの温暖化効率は、二酸化炭素分子の20倍以上にも及び、温室効果への貢献度は二酸化炭素のおよそ1/3にも達している。ハイドレートには思いがけない長所もある。温度と圧力をうまく調節すれば、常温、1気圧中では気体のメタンを固体に変えることができる。こうすれば、天然ガスの貯蔵に必要な場所を、1/160に減らすことができる。

・天然中に分布するメタン・ハイドレートが、エネルギー資源としての重要性が認識されはじめたのは、二度のオイルショックに見舞われた1970年代以降のことである。南海トラフをはじめ、日本近海に分布するメタン・ハイドレートだけをとっても、その存在量は数兆立方メートルにも達する。これは、我が国で消費される全一次エネルギーの数十年分という莫大なエネルギー量に相当する。ただし最大の問題は、回収に高い技術を要することや、それにともなう高いコストである。この潜在的に豊かなエネルギー源の将来は、海底掘削技術や回収技術の今後の発展如何である。

・東京都、埼玉県南部、千葉県のほぼ全域といういわゆる首都圏一帯の地下に、大量の天然ガスが眠っていることをご存知だろうか。広い関東平野の南部に広がる「南関東ガス田」である。エネルギーの一大消費地の地下には、巨大なエネルギー源が眠っているというわけである。こんな好都合なことはない。推定埋蔵量は4000億立方メートル近くにも達し、日本における天然ガス消費量のおよそ5年分、20兆円分以上に相当する。この「お宝」を掘り出して使いたいところだが、実のところそうは簡単にいかない。地下から「ガス抜き」をするとその分だけ地盤が沈下してしまうからだ。残念ながら、このガスの採掘は法律によって基本的に禁じられている。例外のひとつが、千葉県九十九里浜南部に近い茂原市で採掘されている天然ガスである。この辺り一帯に広がる水田では激しく泡立つ様子が当たり前のように見られる。地中から大量のメタンが噴き出しているのである。茂原では地下水をくみ上げて、その中に溶けているメタンを分離している。茂原付近では、1立方メートルの地下水の中に3立方メートル分ものメタンが溶けている。濃度が高いうえに、地下の浅い部分にまで地下水が上がってきていて、比較的簡単に採取することができるのだ。現在、年間生産量はおよそ5億立方メートルで、地盤沈下を防ぐために、天然ガスを抜いた地下水は再び地下に戻されている。メタン自体は人体には無害なのだが、空気中の濃度が5%くらいになると、爆発の危険がある。実際この地方では、昔から爆発事故は絶えない。長らく閉じたままになっていた地下室や倉庫で電気をつけたり、たばこを吸うためにライターに点火したとたんにドカンという事故が数多く起きている。無色無臭のメタンが、知らず知らずのうちに充満していたのだ。地下からもたらされるメタンは、付近一帯では昔から「野ガス」として恐れられてきた。メタン1リットルの重さは0.7グラム程度なので、空気(1リットル1.3グラム)よりもかなり軽い。だから部屋の中など閉じた空間では、上の方に溜まる。茂原に限らず南関東ガス田が広がる南関東では、そこここでメタンが少しずつ漏れだしていて、東京近郊でも地下施設で爆発が起きることがある。

・21世紀の今、人類は石油や石炭、天然ガスといった化石燃料からエネルギーを取り出す際に生み出される副産物に悩まされている。二酸化炭素である。大気中に年々蓄積する二酸化炭素が、地表面から放射され、本来はそのまま宇宙空間に散逸していくはずの赤外線をいったん吸収してしまう。これによって、大気が暖まるのである。産業革命以降、これまで大気中に吐き出された大量の二酸化炭素のうち、6000億トン以上が現在の大気中に蓄積している。大気中に蓄積した二酸化炭素などによって、地球の平均気温はこれまで0.7℃ほど上昇した。そしてこのままいけば、今世紀末にはさらに3℃ほどの温暖化が予測されている。化石燃料からエネルギーを得れば得るだけ、私たちの暮らしは物質的に豊かになれる。その一方で、私たちの暮らしを陰で支えてきた安定した気候や地球環境は脅かされる。まるで二面性をもつ1枚のカードのようだ。

・光合成とは、植物が太陽エネルギーを用いて、二酸化炭素から自らの体(有機物)を作り出す化学反応だ。葉緑体によって捕らえられた太陽の電磁波エネルギーは、二酸化炭素と水という二つの材料から有機物を作り出すことに費やされる。化学式で表すと、次のようになる。
CO2+H2O→CH2O+O2
この式の「CH2O」とは有機物のことで、そのおおざっぱな化学組成を表している。代謝の重要産物であるブドウ糖の化学組成は「C6H12O6」だから、ちょうど6倍したものに等しい。この反応式は、途中の複雑なプロセスを省略して、反応の最初と最後だけを示したものだ。それに、窒素やリンなど他の必須の元素についても省略されている。とはいえ、地球上における炭素の動きを考えるうえで役に立つ近似式だ。生命が溢れる地球という星にとって、光合成ほど根源的なプロセスは他にない。このことは、光合成が地球上からなくなってしまったら、いったいどんなことが起きるのかを想像することによって理解できる。草を食むシマウマは飢えて死に絶え、それを餌にしていたライオンたちも後を追って死に至る。海でh、植物プランクトンを食べる動物プランクトンがまず死に絶える。さらにそれを餌にしている小魚、そしてさらに大きな魚へと影響は連鎖反応的にあっという間に広がっていくだろう。雑食である私たちヒトも、間もなく食物に枯渇して絶滅してしまう。結局、光合成がなくなれば、地球上に見られるほとんどの生き物は絶えてしまう。

・光合成によって植物に変身する二酸化炭素は、毎年4400億トンにも達している。そもそも、大気中に含まれている二酸化炭素の総量がおよそ2兆トンだから、大気中に存在する二酸化炭素の1/5が毎年有機物に変換されていることになる。光合成では大気中から二酸化炭素が失われると同時に、どんどん酸素が排出されている。新緑の季節は、大気中の二酸化炭素が減ると同時に、酸素がわずかに増えているのだ。

・自然界で生み出された有機物は、いずれ微生物や動物に食べられて、再び二酸化炭素と水に戻る。化学式で表すと次のようになる。
CH2O+O2→CO2+H2O
先ほどの光合成の式と見比べてみよ。この式は、光合成の式を単に逆向きにしたものにすぎない。つまり炭素は、二酸化炭素と有機物の間を行ったり来たりしているのである。これが「炭素サイクル」と呼ばれるものである。有機物が分解する式は、石油の燃焼の式ともきわめてにていることを付け加えておこう。

・大気中の二酸化炭素が増加している裏側で、大変なことが進行していることはあまり知られていない。大気中の酸素濃度が徐々に減っているのだ。私たち動物を含め地球上の多くの生き物は、その生命装置を動かすために酸素を必要とする。息を止めてみるまでもない。酸素なしでは、私たちは10分と生きることはできない。研究者の間で長らく予想はされていたものの、私たちにとって不可欠な酸素が大気中から徐々に失われているというショッキングなデータが現実に示されたのは、1992年のことだった。その後のデータも併せると、大気中の酸素濃度は年間3ppm、つまり0.0003%の割合で毎年減少し続けている。なぜ酸素濃度は減少しえいるのだろうか?化石燃料を燃やしてエネルギーを得ることは、二酸化炭素を放出するという一面ばかり注目されがちだ。しかし炭素サイクルには、化石燃料を燃焼すれば、酸素を消費するという別の側面もある。酸素濃度の減少は、二酸化炭素濃度の上昇と表裏一体なのである。人間は、環境中の酸素濃度が18%を下回ると、酸素欠乏症になって脳の機能低下を引き起こし、命を落とす危険にさらされる。現在の酸素濃度の減少速度を、そのまま延長していくと、いつ人類が絶滅するかがわかる。およそ1万5000年後だ。もっとも、酸素は水を電気分解すれば簡単に得られるから、実際そんなことにはならないだろうが、これも結局はエネルギー頼みだ。この星に生まれた植物が、何十億年もかけて大気中に蓄積してきた酸素を、私たち人類はわずか数万年で食い潰そうとしているのである。

・海の中をゆっくりと沈んでいくマリンスノーは、プランクトンの死骸などが凝集したものだ。まさしく海の藻屑である。マリンスノーが海底に到着すると、その大部分は海底で分解してしまう。再び二酸化炭素や水ちった、光合成の原料に戻るのだ。しかし、ごく一部は分解を免れて海底の泥の中に紛れ込んでしまう。海底堆積物の中にはわずかとはいえ必ず有機物が含まれている。海底堆積物を1mも掘り返すと、そこには酸素が枯渇した還元的な世界が広がっている。そんな堆積物中では多くの微生物は元気がなく、有機物は分解されにくい。分解されない有機物は、悠久の時を堆積物の中で過ごすことになる。現代の海洋においてその量は、光合成で生み出される有機物全体の0.4%を推定されている。つまり炭素の輪廻転生から抜け落ちるものが、炭素サイクル1回転につき0.4%、炭素量として2億トンほどあるのだ。つまり地球上を巡る炭素はどんどん先細っていく。炭素の輪廻転生は1年1回転だから、1500年もしないうちに、輪廻転生のサイクルを回る炭素は枯渇してしまう計算だ。しかし、実際はそんなことにはならない。地球の歴史がそれを証明している。地球が生まれてから46億年経った今でも炭素サイクルは回り続けている。サイクルから抜けていった炭素を、しっかり補充するからくりがあるからだ。火山活動である。火山から噴出するガスの中には0.01%ほどの二酸化炭素が含まれている。地球全体では、毎年2億トンの二酸化炭素が火山から大気中へと放出されている。当然のことだが、この数字は輪廻転生から毎年抜け落ちる二酸化炭素量とぴったり一致している。

・46億年前、隕石や小さな惑星がいくつも衝突して、地球という星は出来上がった。その際、衝突した物体がもっていた運動エネルギーの多くは、衝突とともに熱エネルギーに変わった。生まれたばかりの地球は、この熱エネルギーのおかげでどろどろに融けていたのである。その後表面から熱エネルギーが少しずつ宇宙空間に散逸し、徐々に冷えて現在に至っている。しかし、衝突天体に由来する熱エネルギーは、46億年後の今でも地球内部にいくらか残されている。地球の中心部はいまだに融けたままだ。地球内部に由来するエネルギーにはもう一種類ある。放射性物質から放出される核エネルギーである。地球という星を形作っている物質は元来、ウランやトリウム、カリウムなどの多種多様な放射性核種を含んでいる。そういった放射性核種が壊変する際に、エネルギーが生み出されるのだ。ニュートリノを用いた最近の研究成果によって、地球全体でその量が200億キロワットに達することが明らかになった。地球内部から地表面にもたらされるエネルギーのうち、半分が核エネルギーで、残りの半分が地球形成時の熱エネルギーなのである。

<目次>

まえがき
第1章 地球の定員
 ◆30人の奴隷たち
 ◆エネルギー連鎖
 ◆太陽の恵み
 ◆人類に必要なエネルギー量
 ◆地球家族の「ピラミッド」
 ◆地球のからくり
 ◆農耕文明の歪み
第2章 窒素固定の魔術
 ◆「グアノ」奇談
 ◆「ハーバー・ボッシュ法」の登場
 ◆第一次世界大戦とアンモニア合成
 ◆「毒ガス」科学者の功績
第3章 エネルギーの現実
 ◆世界を動かす源
 ◆さまざまな形のエネルギー
 ◆エネルギーを取り出す方法
 ◆開いた「パンドラの箱」
第4章 化石燃料と文明
 ◆文明の夜明け
 ◆日本史の脇役、化石燃料
 ◆鯨油争奪戦と黒船来航
 ◆金の噴き出す孔
 ◆漱石が見た「産業革命」その後
第5章 人工燃料の時代
 ◆石炭から石油を作る方法
 ◆石炭をガス化する
 ◆ナチスとポルシェ
 ◆第二次世界大戦と人工燃料
 ◆「人造石油」秘史
 ◆新たな潮流
第6章 大論争の果て
 ◆石油の無機成因説
 ◆隕石から知る地球
 ◆ダイヤモンドのメッセージ
 ◆「地球深層ガス」の秘密
 ◆「シリヤン・リング」
第7章 赤潮の地球
 ◆ミクロに見た石油
 ◆石油はヘドロの生まれ変わり
 ◆想像を超えた自然
 ◆赤潮「シアノバクテリア」の謎
 ◆宇宙のかけら
第8章 石炭が輝いた時代
 ◆石炭の成因
 ◆北海道の開拓と燃料
 ◆石炭と蒸気機関車
 ◆三池炭田の盛衰
第9章 燃える氷
 ◆地球は巨大な発酵槽
 ◆「天然ガス」利用の歩み
 ◆燃える氷の正体
 ◆「ハイドレート」の歴史
 ◆バミューダ・トライアングルの謎
 ◆「南関東ガス田」秘話
第10章 炭素は巡る
 ◆裏と表
 ◆植物が固定する炭素
 ◆分解と呼吸
 ◆減りゆく酸素
 ◆不完全なリサイクル工場
第11章 第三の火
 ◆地底のエネルギー
 ◆原子核に秘められたパワー
 ◆原子爆弾への道
 ◆原子力発電の時代へ
 ◆天然原子炉「オクロ」
 ◆事故が落とす暗い影
第12章 おわりに
あとがき
主要参考文献


面白かった本まとめ(2012年下半期)

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