「新時代の江戸前鮨がわかる本 訪れるべき本当の名店」という本は、2021年4月発行で、著者はBS放送「早川光の最高に旨い寿司」のナビゲーターを務め、江戸前寿司に関する著書が多い早川光さんで、以下について書かれています♪
・江戸前鮨がこの10年で変わった内容
・赤酢のシャリ
・最近の鮨だね
・新時代の鮨屋選び方法
・おまかせ1万8千円以下の現代の名店
1椎名町 松野寿し
2高円寺 鮨時成
3白銀高輪 鮨まつうら
4神楽坂 鮓家一
5千歳烏山 鮨いち伍
6赤坂 すし晴
7東銀座 鮨おちあい
8浅草 鮓かね庄
9西麻布 西麻布鮨いち
10人形町 㐂寿司
特にこの10年で江戸前鮨が変わった内容は興味深く、ポイントは以下とのことで、その理由も分かりやすく説明がありましたね♪
・おまかせの注文が当たり前になった
・おつまみの比重が大きくなった
・お好みで注文できる店が減った
・ランチ、昼営業をする店が減った
・魚の値段が高騰し値上げする店が増えた
・鮨バブルが起きた
・赤酢のシャリが普通になった
また最近の鮨だねも興味深く、そして本書で紹介されているおまかせ1万8千円以下の現代の名店は、どれもまだ行ったことがないし、写真で紹介されている鮨がどれも光り輝いていて美味しそうなため、ぜひ今後行ってみたいと思いましたね♪
「新時代の江戸前鮨がわかる本 訪れるべき本当の名店」という本は、最近の江戸前鮨のことがよく分かり、そしてコスパ良い名店の紹介もありとてもオススメです!
以下は本書のポイント等です♪
・ウニもまたここ10年の間にすごく変わった鮨だねの一つです。10年前に全国のウニの中でナンバーワンの評価を受けていたのは北海道の利尻島、礼文島で獲れるキタムラサキウニ、エゾバフンウニでした。どちらも夏に漁期を迎えるウニなので、ウニの旬は夏というイメージが浸透していました。ところが今は利尻島といった特定の産地ではなく、技術が高い加工業者が手掛けた箱ウニが人気です。こうした加工業者は北海道のさまざまな地域から上質なウニを取り寄せ、それをさらに選別して極上のウニを集めた箱ウニを作ります。言うなれば、北海道ウニのオールスター選別という感じです。
・その中で特に人気を集めているのが、北海道江差町の羽立水産、知内町の東沢水産、そして函館市の橘水産という3つの加工業者。誰が名付けたのか知りませんが、ウニの3大ブランドと呼ばれています。この3つの会社に共通しているのがミョウバンの使い方の巧さ。ウニの味に影響を与えない程度のミョウバンで、型崩れしない箱ウニを作ります。もともと房が大きく粒がしっかりしたウニを選抜しているので、箱に均一に揃えて盛りつけるとすごく迫力がある。それが「インスタ映え」すると話題になりました。
・3大ブランドのウニは見栄えがいいだけではなく、味も抜群に旨い。ミョウバンの渋みを感じることはないし、クリーミーな味わいと甘みを存分に味わえます。しかも房がしっかりしてるから従来の軍艦巻きではなく、そのまま握ることもできる。本当に素晴らしいんだけど値段も高い。とりわけ「金ラベル」と呼ばれる豊洲市場で最初に競りにかけられるトップクラスのウニは、ひと箱10万円なんて値段がつくこともあります。
・僕が注目しているのが、青森県風間浦村のダイセン駒嶺水産という加工業者です。ここは北海道ではなく青森で獲れるウニを加工してるんですけど、その中に通称「ねずみ」と呼ばれる色が少しくすんだキタムラサキウニがあるんです。これ、見た目はよくないんだけど、味はめちゃめちゃ旨くて、3大ブランドと比べてもまったく遜色ありません。それなのに値段はそこまで高くない。
・長い間、キタムラサキウニは北海道のものというイメージがありましたが、実は東北地方でもまったく負けないものが獲れます。先に挙げた青森のウニもそうですし、御岩手や宮城のウニもレベルが高い。その中で特に上質なキタムラサキウニを提供しているのが、岩手県の洋野町の「ウニ牧場」です。洋野町は外洋に面していて、浅瀬の部分に十数キロくらいの岩盤が広がっている。その岩盤を削って幅3メートルくらいの溝を無数に堀り、そこで天然の昆布を増殖させて、ウニの生息地を作った。これが「ウニ牧場」です。牧場というと養殖のイメージだと思いますが、実は相当な手間をかけている。まず別の場所で稚ウニを育成して、それからいったん海の沖の方に移し、天然の漁場で2年くらい育ててから牧場に放つんです。そこから昆布だけをエサにして出荷基準のサイズになるまで大きくする。だから合計4年半ぐらいかかるのだとか。ウニというおは雑食性で何を食べたかによって味が変わる。利尻島、日高、羅臼といった昆布の名産地のウニは、いい昆布を食べているから旨いわけです。そこに着目して天然の昆布だけを食べさせるというアイデアは凄い。それでも最初はやはり半信半疑でした。確かに手間と時間はかかっているけど、本当の天然物とは差があるんじゃないかと。ところがそうじゃなかった。昆布以外の餌を食べてないから、すごくピュアな味なんです。旨味の純度が高くて、まったく雑味を感じない。まさに澄み切った味です。僕がいいと思うのは漁期を限定していることです。5月から8月の3~4ヶ月しかウニを獲らないから、常に品質が安定している。そして何より北海道のブランドウニみたいに高くない。東京の鮨屋でも使うところがこれからどんどん増えるのではないでしょうか。
・赤ウニの産地としては九州が有名で、長崎県の平戸や壱岐、熊本県の天草、佐賀県の唐津、鹿児島の阿久根がよく知られていますが、僕がこれまで食べてきた中で旨いと思ったのは山口県の北浦と兵庫県淡路島の由良。とりわけ由良の赤ウニは絶品です。正直に言って、鮮度と状態のいいものなら味は北海道のブランドウニを超えます。ウニは食べる餌によって味が変わると書きましたが、由良のウニには他の産地とはまったく違う風味があります。上品な甘みがあり、食べた後も深い余韻が残ります。それはおそらくいろんな種類の海藻を食べているから。実はこの由良のあたりの海は海草類の多様性が高いことで知られていて、研究対象にもなっているようです。何度食べても不思議なのはライムのような柑橘類の香りがすることでこれは由良のウニだけの特徴です。漁期は7月中旬から9月下旬までの2ヶ月余りしかなく、もともと希少なウニなのでコンスタントには入ってきません。しかも品質が安定しているのは8月の間だけ。
・アワビについては産地や漁法の新しい情報はありません。でもここ数年すごく話題になっていることがあります。それはアワビの蒸し方です。これは石川県野々市にある「すし処めくみ」という鮨屋の親方、山口尚亨さんが考え出した方法。わかりやすく説明すると、アワビを蒸し器に入れ85度以下の温度をキープしながら約5時間半蒸し、火を止めゆっくり温度を下げながら1時間半蒸らします。時間の長さはアワビの大きさや状態によっても異なるのですが、一般的な蒸し時間は2~3時間くらいなので、これがいかに長いかがわかります。素人考えでは、アワビを7時間前後も蒸し器に入れていたら味が抜けてしまうんじゃないかと思うのですが、それはむしろ正反対。長時間かけて蒸すことでアワビに含まれるコラーゲンがグルタミン酸、グリシン、アスパラギン酸などの遊離アミノ酸、つまり旨味物質に変化するんです。7時間前後というのはその旨味物質の量がピークに達するタイミングなのだとか。山口さんは大学の研究論文などを参考に試行錯誤を重ねて、この調理法にたどり着いたと聞きました。僕が「すし処めくみ」でこのアワビを初めて食べたのは5年くらい前のこと。その時は本当にびっくりしました。まず香りが凄い。包丁を入れただけで芳しい香りが店中に広がるんです。そして味。これがまるで旨味の塊。アワビを数ミリの厚さに薄く切りつけ5枚くらい重ねて握るのですが、舌に触れる面積が大きいので、噛みしめるほどに旨味があふれ、波のように押し寄せてくる感じがしました。まさにこれまでの常識を打ち破る調理法なのですが、まねをしようとしてもなかなかできない。そもそも蒸し器にいれて「85℃の温度をキープする」っていうのが至難の業だと思います。だからいろんな人が試みてはいるけれど「すし処めくみ」の味に到達している店は今のところありません。「すし処めくみ」の山口さんは本当に面白い人で、他にも誰も思いつかないような画期的なことに挑戦しています。今僕が全国で一番注目している鮨職人です。
・ブリの中で最も評価が高いのは、厳冬期に日本海で獲れる寒ブリ。中でも富山県氷見の氷見ブリが有名です。冬に北陸を旅すると鮨屋で必ずといっていいほど出てくるのですが、やっぱり握りだとシャリが負けてしまう。刺身で食べたほうが旨いし、塩焼きやブリしゃぶにした方がもっと旨い。そんなわけで、ブリにはさほど関心を持たないまま過ごしてきたのですが、あるとき、握りに合うブリに出会いました。それが北海道余市の「天上ブリ」です。ブリは季節によって生息海域を変える回遊魚で、春から夏にかけて日本近海を北上し、秋口に北海道にやってきます。そしてこのうち余市沖の定置網で獲れたものを天上ぶりと読んでいます。北海道の北端近くまで到達したブリだから天上というわけです。天上ブリの良さは脂がのりすぎていないこと。南下して寒ブリになる前のブリなので、脂のバランスがちょうどいいんです。しかもその脂は重くない。甘く、口どけがよく、さらりとしてクセがありません。近い海域にいて同じような餌を食べているからか、津軽海峡のマグロの脂によく似ています。目を閉じて食べたら大間のマグロのトロと錯覚してしまうかもしれません。例年9月中旬くらいから市場に出回りますが、僕が旨いと思うのは10月。食べたらきっとそれまでのブリのイメージが変わると思います。
・穴子の味を意識しつつ1年間かけて食べ比べてみると、脂がのってくるのは夏場あたりから。そして秋口からゼラチン質が多くなってきます。江戸前鮨の場合、焼き穴子ではなく煮穴子にしますから、ゼラチン質が多い方がふっくらとした食感になります。そして味のピークを迎えるのは秋。10月から12月初旬まではずっと美味しい。この頃の対馬穴子は旨味も脂の甘みも強く、ふっくらとした食感に加えて身の処理が細かく舌に絡みつくような感じがします。思うに、穴子はマグロのような回遊魚とは違って、冬にたっぷり餌を食べて脂肪を貯めるのではなく、行動が活発になる夏から秋にかけて、たっぷり餌を食べる魚なのではないでしょうか。なので江戸前鮨における対馬穴子の旬は秋から晩秋。中でも10月がベスト。それが僕の結論です。
・極小サイズのシンコは10尾重ねた10枚漬けにしたりするわけですが、本当に食べて美味しいのは4枚漬けのサイズから。この大きさになるとシンコならではの食感の軽さに加え、コハダらしい旨味や脂の甘みも楽しめるからです。もっと言えば、一番旨いのは2枚漬け。これが本来の江戸前鮨のシンコです。4枚漬けサイズのシンコが出回るのは、例年7月中旬あたり。バカ高い初物に群がったりせず、夏まで待ってシンコを楽しむ。それが粋というものだと思います。
・はっきり書きますが、おまかせ3万円超の店なら常に最高クラスの魚ばかりが出てくるというのは思い込みです。もちろん中にはそういう店もありますが、僕の知る限り、それはほんの数軒だけです。鮨屋の経費は食材の仕入れだけではなく、店の家賃とスタッフの人件費も大きな割合を占めます。つまり家賃相場が高い場所に広い店を構え、サービスを充実させるためスタッフを多く雇っている店は、魚ばかりにお金をかけるというわけにはいきません。そしてここが大事なポイントですが、最高クラスの魚はお金さえ出せば買えるというものではありません。そもそも最高クラスの魚を扱う業者は限られていて、買うことができるのはその業者が認めた店だけです。特に不漁などの理由で高騰した場合、つまり市場に品物が少ない時は、買えるのは業者との信頼関係が厚い店に限定されます。単純に大金を積んだからといって買うことはできないのです。中には、マグロとウニだけ高価なものを仕入れて他を抑えるという所もあります。市場で高値をつけるのはマグロとウニだけではなく、シラカワ(シロアマダイ)やホシガレイ、そして水管の部分しか使わない本ミル貝(ミルクイ)なども、握り1貫あたりの値段に換算すればほとんど同じレベルです。その味を知る人には垂涎の高級食材ですが、一般的にはそこまで高価であるとは知られていない。そこでこうした魚をあえて使わない事で全体の値段を調整するというわけです。
・僕が初めての鮨屋に行った時、そこがどんな店かを知るために必ずすることがあります。それは店内の掃除をチェックすること。職人の包丁を見ること、そして働くスタッフの動きを観察することです。店内の掃除を見ればいろんなことがわかります。掃除が行き届いていない店は魚の仕込みも手を抜いていることが多い。魚の下ごしらえをする時には血が飛び散ったり床に落ちたりしますから、汚れが見えなくてもこまめに掃除を擦るのが常識。それなのに見て分かる汚れがあるということは、他の作業もきちんとしていない可能性が高いのです。包丁を見るのはそこに職人の性格や修業経験が表れるから。たとえば魚を切った後、すぐにきれいな布巾で包丁を拭うのを見たらちゃんと修業した人だとわかります。反対に使った包丁を放置したままにしていたら、この店はダメだと思います。そして一番注意深く見るのはスタッフの動きです。これは新時代の鮨屋を見極める上で最も大事なポイントかもしれません。具体的には、店に入ってまず人数を確認します。複数いる場合は役割分担を見ます。そしてその役割にふさわしい動きをしているか、目配りができているかを観察します。それはあくまで観察するだけで声をかけたりはしません。なぜこんなことをするのかと言うと、今の時代、たった1人でも優秀なスタッフがいる店はほぼ確実に美味しいからです。もう何年も前から、鮨屋は有名店も人気店も関係なく慢性的な人手不足に悩まされています。つまり鮨職人を目指す人は自分から店を選べる状況にあります。そんな中、優秀な人材が修業先として選んだ店は間違いなく魅力のある店と言えるのです。掃除や包丁を見るのは慣れない人には難しいと思いますが、スタッフの動きなら誰でもわかるはず。優秀な人材の中には、数年後には店を出す人もいるわけですから、チェックしておいて損はありません。今まで親方の顔しか見ていなかったという人は、次からはスタッフの動きにも注目してみてほしいと思います。
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