A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

百鬼夜行の回想録~フリージャズ編:ICP BOXとICP オーケストラ

2012年12月18日 00時33分22秒 | 素晴らしき変態音楽


オランダのICP=Instant Composers Poolの45周年記念BOXがリリースされた。1967年にミシャ・メンゲルベルク、ハン・ベニンク、ウィレム・ブロイカーにより結成された即興音楽集団である。1969年にジョスト・ゲバーズ、ペーター・ブロッツマン、ペーター・コヴァルト、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハが設立したドイツのFMP Free Music Production、1970年にデレク・ベイリー、エヴァン・パーカー、トニー・オクスリーにより設立されたイギリスのIncus Recordsと並びヨーロッパ・フリーミュージック・シーンを牽引してきた組織/レーベルである。ICP全カタログと未発表音源52CD+2DVD、ポスター、分厚い写真集が入った重厚なBOXはハン・ベニンク自身のペイントが施された限定盤。死ぬまでに全部聴き通せるかどうか判らないが、一家に1セット家宝にすべき歴史的集大成である。しかしFMP BOX、Incus BOXがリリースされたらどうするんだろう.......。




初めて観た洋楽アーティストは誰だろう。中学の時金沢市観光会館で観たアメリカン・ミュージック・レビューとかいうミュージカルを除けば再結成キング・クリムゾンかアート・アンサンブル・オブ・シカゴかと思っていたがこれらは1984年であり、1982年5月のICPオーケストラが最初かもしれない。「地球を吹く」で幅広く知られるトランぺッターの近藤等則は当時世界的に活躍するバリバリの即興音楽家で欧米の前衛ミュージシャンの招聘を熱心に行っていた。

▼デレク・ベイリー&カンパニー@東京増上寺 with 近藤等則、高木元輝、吉沢元治、土取利行
Derek Bailey company Tokyo1981


近藤が手がけた最大のプロジェクトがミシャ・ベンゲルベルクとICPオーケストラの初来日ツアーである。ミシャ・メンゲルベルグ(p)、ハン・ベニンク(ds)、ペーター・ブロッツマン(sax)、マイケル・ムーア(sax)、ケシャバン・マスラク(sax)、ユープ・マーセン(tb)、ウォルター・ビアボス(tb)、ラリー・フィシュキン(tuba)、モーリス・ホルストハウス(viola)、近藤等則(tp)の総勢10名からなるビッグバンド。最初の3人と近藤以外は初めて聞く名前だった。会場は日本教育会館一ツ橋ホール。超満席だった。それまでレコードやテープでフリージャズやインプロを聴いてきて、シリアスで冷徹な世界こそ「前衛」であると思い込んでいたがそれを見事なまでにぶち壊す衝(笑)撃的な演奏だった。テクニックや音のでかさも凄いが何よりも視覚的に面白い。何度も会場が爆笑の渦に巻き込まれた。



ベニンクの床叩きとおもちゃパフォーマンス、常軌を逸した酸素欠乏ロングトーン、犬の遠吠えとへんてこアカペラコーラス、スタンダード~激烈インプロ~ワルツ~パンクと猫の目のように変化する曲調。聴いて楽しい観て楽しい最高のエンターテイメント。「前衛=難解」である必要はないということを実感し目から鱗の体験だった。大学の軽音研でフリージャズ好きが高じて村八分状態だった私に勇気と希望を与えてくれた記念碑的コンサートだった。

▼2009年制作ICPオーケストラのPV。ミュージシャン総出演のドラマ仕立ての展開が楽しい。



それ以降即興演奏する時は常にエンターテイメント性に則りを突飛なパフォーマンスやガラクタ演奏をするようになったのには彼らの影響が多大にあるのは間違いない。その精神は現在極たまに演奏するときにも変わっていない。

▼1982年に結成したインプロユニットOTHER ROOMの吉祥寺Gattyでのライヴ音源。



▼今年参加したセッションライヴ音源。



ICPオーケストラ2006年2008年に再来日公演を行っている。何故観に行かなかったのか誠に悔やまれる。

ICP
AEOC
ECM

坂田明がCMに出演し話題になったのも1982年だった。フリージャズがお茶の間に最接近した幸福な季節だった。

コメント
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