A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ザ・バースデイ@日本武道館 2012.12.19 (wed)

2012年12月21日 00時22分22秒 | ロッケンロール万歳!


The Birthday  
TOUR 2012 "VISION" FINAL
NIPPON BUDOKAN

ミッシェル・ガン・エレファント(以下TMGE)はフジロックをはじめ何回か観たが、一番印象に残っているのはMTV JAPAN主催の野外イベントである。何処か忘れたが湾岸方面の開発途中の空き地で開催された。野外なのにアルコール禁止で、我々の仲間が何処かからビールを1ダース仕入れてきて救われたが、他の来場者は不満たらたらの様子だった。いくつかバンドが出演したが目当てはシャーラタンズだった。トリのシャーラタンズの前にTMGEが登場、その途端にそれまで酒抜きで盛り上がらず大人しかった観客が一斉に前方へ殺到し猛烈なモッシュが始まった。3rdアルバム「チキン・ゾンビーズ」がブレイク中だったがこれほど熱狂的人気だとは想像していなかったので驚いた。客のノリの凄まじさに肝心の演奏は覚えていない。TMGEが終わると一気に観客が掃けてシャーラタンズは最前列でゆっくり観ることが出来た。

その後豊洲で開催された第2回フジロック・フェスティバルにも出演。彼らの出演は比較的早い時間だったので会場へ向かって歩きながら音だけ聴いた。あとで聞くとモッシュ過多による圧死危険のために何度か演奏が中断されたとのこと。そのフジロックにはブランキー・ジェット・シティ(以下BJC)も出演していた。TMGEとBJCはデビューが同時期だったこともあり比較されることも多くファンが共通していてメンバー同士も仲が良かった。TMGEのチバユウスケとBJCのベンジー=浅井健一はしゃがれ声とハイトーン・ヴォイスと声質は違うがどちらも男っぽい硬派ロッケンローラーの両巨頭だった。同じロッケンロールでも1980年代にデビューしたヒロト&マーシー(当時ザ・ハイロウズ)のサービス精神旺盛なパフォーマンスとは一味違うストイック&クールな佇まいがバブル崩壊後に表舞台に登場したこの2者の特徴である。

両者が共に「タンバリン好き」であることは特筆すべきであろう。

▼TMGEは衣装と同じ黒。



▼BJCは情熱の赤。



▼チバが元BJCの照井利幸と結成したROSSOでも。かなりのタンバリン・フェチである。



他にも歌詞の世界に相似性があり、革ジャン好きでバイクの歌を唄っているというのも共通している。またバンド解散後に元メンバーも交えいくつものバンドの集合離散を経て現在もロケンローの第一線で活躍中、チバがRockin’Blues、ベンジーがSexy Stonesとそれぞれ自主レーベルを立ち上げ、どちらもグレッチのギターを愛用しているという異母兄弟のような二人。奇しくもThe Birthdayの最新アルバムに「PINK PANTHER」という曲があり、ベンジーのシャーベッツの最新作のタイトル&オープニング・ナンバーは「STRIPE PANTHER」という偶然にしては出来過ぎの事実に瞠目。

チバが2006年にTMGEの盟友クハラカズユキらと結成したThe Birthdayは今までザ・クロマニヨンズ、浅井健一、ギターウルフ、モーサム・トーンベンダー、ストレイテナー等との対バンで観たことがある。イカしたロケンロー野郎ばかりの個性派揃いの中でも、チバを核にしたThe Birthdayの縦横無人なロック魂はあたかも黒いダイヤモンドのように燻し銀の輝きを放っていた。

ほぼ1年に1作のペースで順調にアルバムをリリースし、2010年にギタリストの交代はあったもののツイン・ギター4人組の編成は崩していない。作詞はすべてチバが手がけており最新作「VISION」のタイトル通り日常をクールな視点で映像化した世界を描き出す。

『見えてるものはヴィジョンだけど、でも、見えてないものもヴィジョンだから。そこにすごく意味があると思ったからだね。何秒か前に見えてたこともヴィジョンだし、見えないものもヴィジョン。どんどんヴィジョンが増えてくんだよ。そう俺は思ってる。』(NEXUS WEB インタビュー by 鹿野淳より)

個人的に特に好きなのはこのフレーズ♪1984年に何があったんだっけ 俺は忘れちゃったけど それで何か変わったかい?♪from「Kicking You」。チバも40代半ば、ノスタルジーには意味がないと看破しつつも浸ってしまう矛盾。当ブログのように。

『俺が思うには、昔を振り返って「この時代はよかった」って言う人もいるかもしれないけど、その人もその時点では「嫌だ」って言ってたと思うんだよね。みんな嫌いなんだよ、その時その時が。でも、それって、自分を時代に投影しているだけなんだよ。「こんなクソみたいな時代に生まれて」って思ってる人は、自分がクソみたいなことになってるからそう思うだけ。時代なんて、一人一人の考え方次第だと思うよ。』(同上)

全国28ヵ所を廻った「VISION」レコ発ツアーの最終公演は5年ぶりの日本武道館。客層は20~30代中心で革ジャン男子が目につく。ベンジーの客層と似ているがより硬派な印象。武道館クラスだと大抵設置されるスクリーンヴィジョンがない。ステージ真ん中にシンプルな機材が固まって設置されておりライヴハウスのセッティングそのまま。オープニングSEは♪Happy Birthday~♪で始まる60年代USドゥワップグループThe Crestsの「Sixtenn Candles」。ふらっと登場し楽器を構えるとそのまま殆ど定位置から動かずひたすら演奏に没入するステージングに派手さはないが、音が目の前で鳴っているかのようなリアルさで迫ってきてクラブクアトロと違いがない。客が振りを揃える訳でもなく思い思いにノッているのも自由度が高くていい。私の右の若者グループは激しく踊り狂い声援を送っているのに、左のバンドマン風の4人組は腕組みして微動だにせずステージに見入っている。チバもMCで煽るでもなく淡々と歌い続ける。ヒット・ナンバー3連発で締めた100分の本編のあと2度のアンコール。最後になってコール&レスポンスで盛り上げる演出が憎い。25曲2時間半に亘るロケンロー・パーティーで真っ白な灰になれた。エンディングSEはエルヴィス・プレスリー「Love Me Tender」だった。



<Set List>
1. 黒いレディー
2. ゲリラ
3. Buddy
4. ROKA
5. Riot Night Serenade
6. KICKING YOU
7. ホロスコープ
8. YUYAKE
9. SHINE
10. 爪痕
11. Red Eye
12. LOOSE MEN
13. PINK PANTHER
14. SPACIA
15. LOVE SICK BABY LOVE SICK
16. カレンダーガール
17. OUTLAW II
18. なぜか今日は
19. さよなら最終兵器
20. BECAUSE

-encore1-
21. STORM
22. 涙がこぼれそう

-encore2-
23. 泥棒サンタ天国
24. ローリン
25. Ready Steady Go

バースデイ
これが男の
ロケンロー

来年早々ベンジーとザ・クロマニヨンズのニュー・アルバムがリリースされツアーも始まる。このままのスピードでハッピー・ロケンロー・イヤーと行こうか。


コメント (3)
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