A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

静寂@秋葉原 Club Goodman 2012.12.24 (mon)

2012年12月26日 00時20分32秒 | 灰野敬二さんのこと


この日はお気に入りのガールズバンドSilent Siren(サイサイ)のクリスマス・コンサートと灰野さんのライヴの2回目のハシゴ。



Silent Siren
サイサイ祭 2012 冬
原宿アストロホール
第1部~今夜はサイレンナイト、サイサイサンタがやってくる。~

サイサイの初ワンマン参戦。1部14時START "~今夜はサイレンナイト、サイサイサンタがやってくる。~"/2部19時START "~2012年感謝祭 これだからバンドはやめらんねぇ~よライブ。~"の昼夜2回公演である。前回観たのが対バン・イベントだったので正直どれほどの人気なのかわからなかったが前売りは2回ともSold Out。クリスマスの原宿の人ゴミを掻き分けてアストロホールに着くと長い列。会場内は女性優先エリアが設けられており、客席の左半分が女性オンリー、右半分が男性中心と明確に分かれている。不失者や八十八ヶ所巡礼と同じ右高左低型(夜の2部は左右が逆だった)。男性ファンの多くは首にタオルを巻いたスタイルでアイドル系ともパンク系ともいえる雰囲気。他の客の会話を小耳にはさむ。「1年前読モイベントで観た時は客が10人くらいしかいなかったのにね~」「メンバーが変わったのを知らなかったよ」「メジャーデビューしたんだってね」。きゃりーぱみゅぱみゅと同様この1年で人気が急上昇したことが分かる。

メンバーがシンボルカラーのピンクのサンタ衣装で登場。メジャーデビュー曲「Sweet Pop!」でスタート。ピョンピョン跳ねたり腕を振って煽るキーボードのゆかるんに合わせて観客も盛り上がる。アイドルっぽいノリだが、アイドルのライヴでは憚られるがバンドなので一緒に振りを真似ても違和感がない。OiOiという掛け声はロリータ18号と同じだ。何かの取材でドラムのひなんちゅがロリータ18号のドラムのTo-Buにドラムを教わるシーンがあったな~。クリスマスソングを挟みビンゴ大会。賞品がメンバーの私物おしゃれグッズというのが読モならでは。男性が当たったらどうするんだろ。来年2月20日リリースの新曲「stella☆」を初披露。サイサイならではのポップンロールが炸裂する爽快なナンバー。終演後スクリーンで披露されたPVが翌日にYouTubeで公開された。何と粋なクリスマスプレゼント!。アンコールを含め100分のステージを堪能し今回は握手会にも参加できた。きゃりーぱみゅぱみゅ同様小さくて華奢な女の子たちだった。



重大発表!サイサイ2013年春全国ツアー決定!として「Silent Siren Live Tour 2013」の日程が発表されたが東京公演@渋谷AXが何と5月3日。灰野さんの誕生日で生誕記念ライヴの日である。2度あることは3度あるというが、ここまでスケジュールが重なるとは偶然ではなく神の悪意としか言いようがない。こうなったら灰野さんじゃないが「運命よ、かかって来い!」である。

<Set List>
M1.Sweet Pop!
M2.サイレン
M3.LOVEのしるし
M4.クリスマスソングメドレー:きよしこの夜~赤鼻のトナカイ~恋人はサンタクロース
M5.いつかのメリークリスマス
M6.セピア
M7.Crazy Lady
M8.stella☆
M9.ランジェリー
~アンコール~
M10.Sweet Pop!
M11.All Right ~”今”を懸ける~




<静寂 ラスト ワンマンライブ>
【出演】静寂 [灰野敬二(guitar, vocal, etc.)/ ナスノミツル(bass)/ 一楽儀光(drums)]
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最後のステージへ向けて
ちょうど一年前パリの美術館でマシントラブルの為ライブが中断しアンコールに応えられないまま終わってしまった。
お客さんや関係者へのすまない気持ちと自分への不甲斐なさとでとても落ち込み大変悔しい思いをした。そしてそのまま帰国し病院にてこのまま続けると車椅子の生活に成ると診断されドラマー引退を余儀なくされた。それから釈然としないままスティックを握る事も無く1年が過ぎた。今だあのパリでの悔しさが心の片隅に残っている。いやそれどころか日に日に大きくなって行く様な気がしていた。
そしていつの日からか35年間のドラム人生をキッチリ終わらせて次のステップに行く為にもケジメを付けたいと思い始めていた、、、、
色々と考え抜いた末私の最も信頼し尊敬している音楽家と共にドラマーとしての最後のステージを迎えようと思った。

12月22日自身の53回目の誕生日[筆者注:その後日程変更]に秋葉原グッドマンにて「静寂」(灰野敬二、ナスノミツル、一楽儀光)一夜限り復活致します。是非!!
(ドラびでおオフィシャルブログ DORAVIDEO FREAKTONEFREAK’S 2012年9月1日 掲載記事より)
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今年1月に持病の腰痛の悪化でドラマー引退を表明した一楽儀光のドラマーとしてのラスト・ライヴは同時にバンド静寂の終焉を意味する。"灰野敬二Blues Band"として2009年8月15日名古屋Tokuzoにてデビューし、静寂と名乗ったトリオのライヴは今回を含め全8回。2011年3月11日高円寺Highでの東京初ワンマン公演が震災で中止になって以来、彼らの演奏活動にその影響が顕著に反映されることになった。震災直後に灰野さんが「何があっても生き抜く覚悟をしようよ! 国は作り直せる。あらゆるものの、ひとつの命は決して作り直せない。」というメッセージを発信。5月12日のリベンジ公演ではメンバー3人が「いらない!」と叫ぶ曲を披露。8月15日フェスティバルFUKUSHIMAに出演「最近の祭りには祈りが足りない」というMCでスタートした演奏には言葉通り祈りが漲っていた。同時期に不失者が始動したため静寂としての活動が途絶えていたところへ一楽の引退宣言。そのままフェイドアウトかと思っていたら一楽のドラマー引退公演として一夜限りの復活劇となった。

開場30分前にClub Goodmanへ行くと階段まで列が出来ていた。この会場でこの行列は初めて。3日前の不失者のライヴが盛況だったので静寂の動員に影響するかと思ったが杞憂に終わった。ナスノ&一楽というベテランを擁するためか客層は不失者よりも年齢が高め。ジャズ/プログレ系ライヴ会場で目にする顔が多い。灰野さんのファンの中にはナスノを敬遠する人もいると聞く。曰く「ナスノは小手先のテクニックに走る」。しかし2004年のサンヘドリン以来静寂~不失者と灰野さんが彼を信頼し共演を繰り返していること、そして何よりも実際の演奏を観ればナスノが演奏行為に関して深い洞察と鍛錬を欠かさないことが分かる筈。テクニックがあるのは決して悪いことじゃないしその上で技を超えたより高い次元の演奏に挑むナスノの姿勢は灰野さんにとって理想的なパートナーなのである。終演後に灰野さんが「ナスノ君とはこれからも続くからね」と語っていた程である。

静寂を初めて観た時、まだ不失者が再始動する前だったこともあり「静寂は新たな不失者か」という趣旨の記事を書いたら灰野さんから誤解だと諭されたことがある。その違いは実際に工藤冬里+高橋幾郎との新生不失者を観た時に明確に理解できた。静寂は本質的に「ブルース(=哀歌)バンド」であり、(これも誤解だと言われるかもしれないが)灰野さんのロックの理想型の実践としての不失者よりも演奏者の自由度が高いといえる。アルバート・キング、ザ・ドアーズ、ステッペンウルフに捧げられたアルバム「You Should Prepare To Survive Through Even Anything Happens」で判る通りレパートリーは多彩である。この日のライヴでも「青い眼の人形」「昭和ブルース」「若者たち」「ダイナマイトが百五十屯」「あっち側からこっちを見ろ(ザ・ドアーズ)」「始まりに還りたい(ステッペンウルフ)」が演奏された。かつての哀秘謡のようにカヴァーでもコピーでもない。元の歌詞がいわばジャズにおけるテーマのように「素材」として使われるだけである。特にザ・ドアーズ、ステッペンウルフに関してはオリジナル歌詞を灰野さんが咀嚼し独自に解釈した歌詩(歌"詞"ではなく)で唄われる完全なオリジナル楽曲である。

演奏は正に「Blues」としか言いようがない。ここでの「Blues」は12小節ブルーノート・スケールという形式ではないしクラプトンのウーマントーンやサンタナの泣き顔では勿論ない。アフリカから連れてこられた黒人たちが日常の幸せや憂鬱を実直に歌で表現したというルーツ通り「心の底からの感情表現」という意識上での「Blues」なのである。深いリバーヴに沈み込む演奏は本当に泣き濡れている。哀感の発露たる楽器の響き合いと祈りを捧げ続ける歌。平易な言葉を使いつつ独特の言い回しが抽象性を併せ持つ灰野さんの歌詩だが、静寂の歌は驚くほど具体性と直情性を発揮する。その最たるものが「いらない!」であり、今回は「バカヤロー!」という激情直裁的な言葉が灰野さんの口から発せられ驚いた。「いらない!」は一歩進んで「もういい!」となった。それは諦観ではなく否定を超えて能動への前進であり主体としての静寂=我々の独立宣言である。

後半一楽の表情がかなり苦しそうになり演奏途中でドラムが中断する。灰野さんはチラッと様子を伺い「まだ行けるか?」とアイコンタクトして次の曲へ突入。"お前がここにいたことを 明らかにしておこう"という歌が一楽に向けられていたのは明らかだ。アンコールで「始まりに還りたい」を演奏。"何があっても 生き抜く 覚悟の 用意をしよう"という言葉も暗示的で一楽に捧げられたかのよう。実は2008年8月岡山ペパーランドで一楽と共演しこの曲を演奏した後に一楽が「ブルース・バンドをやりたい」と言い出したのが静寂の始まりだったという。「始まりに還りたい」で始まりその曲で終わるというのも(灰野さんは嫌うだろうが)「運命的」でありドラマティックな幕切れである。見事に生み落とされたことへの責任を果たした訳だ。演奏終了後灰野さんが「一楽に拍手を」とMCしたのも極めて異例で印象的だった。


(撮影・掲載に関しては出演者の許可を得ています)

ドラマー一楽儀光の有終の美を飾った2時間半の演奏は慈愛に満ちた魂の輝きに彩られていた。

静寂が
輝いたまま
幕下ろす

ドラムは引退したが一楽は自ら考案開発したオリジナル楽器"ドラノーム"で演奏活動を続けて行く。

<灰野敬二ライヴ情報>
12.30(月) 高円寺ShowBoat 灰野敬二 ワンマンライブ
2013年
1.19 (土) 中目黒solfa "und so weiter 1st anniversary" DJ 灰野敬二他
1.27 (日) 東高円寺U.F.O. CLUB U.F.O.CLUB 17周年記念 灰野敬二ワンマンライブ
LIVE:灰野敬二 [ゲストミュージシャン; 菊地成孔, やくしまるえつこ]
3.17 (日) 六本木SuperDeluxe 灰野敬二+ジム・オルーク+オーレン・アンバーチ



コメント (1)
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