A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ユミ・ハラ・コークウェル+浅野淳+吉田達也+鬼怒無月@荻窪ルースター 2012.12.11 (tue)

2012年12月13日 00時42分55秒 | 素晴らしき変態音楽


現代音楽の夕べ
ユミ・ハラ・コークウェル(pf) 浅野淳(b) 吉田達也(ds)/鬼怒無月(g)

"吉田達也をドラムスとヴォーカルに迎えて制作したユミのソロアルバム「ステートメント・ヒールズ」のなんと全曲!プラス、アルバムに収録しきれなかった未発表曲までをもおおくりする怒涛のライヴ、しかもアルバムでは吉田パート以外全部ユミが多重録音した上物の一部を鬼怒無月が演奏!! 鬼怒ソロコーナーもあります。"
ユミ・ハラ・コークウェル ブログより)

今年6月に初来日したアルトー・ビーツ(元ヘンリー・カウ)のユミ・ハラ・コークウェルさんの12/7~25に亘る単独来日ツアー。東京ではワークショップを含め7公演行われる。どれに行くか考え、アルトー・ビーツのワークショップに参加した思い出の荻窪ルースターで是巨人の2/3=吉田+鬼怒との共演、しかも即興ではなく作曲された作品を演奏するというので興味が惹かれ予約した。そしたらまさかのマサカー(しつこい)来日発表の日と重なった。吉田達也氏はフリス、ラズウェル、ヘイワードとそれぞれ共演歴がある。この偶然に痺れたのは昨日書いた通り。半年ぶりに訪れたルースターの入口には写真の通り「現代音楽の夕べ」とのイベント・タイトルが。バルトーク弦楽四重奏団じゃないんだけどなぁと思ったが、この店のスケジュール表には「70年代昭和歌謡の夕べ」「ラテンジャズナイト」「BLUES大回転NIGHT」「ジョン・レノン・トリビュート・ナイト」といったタイトルが付いている。ルースターの流儀なのだと納得。でもせめて「プログレ殺戮ナイト」とでもして欲しかったところ。謎のベーシスト浅野氏は前回のワークショップで共演した方だった。20人くらいの客席には同じくワークショップで知り合ったギタリスト吉本裕美子嬢もいたし、隣の男性はお客さんで観に来ていて私のことを覚えていた。常連でもないのに何だかアットホームな雰囲気。マサカー来日のニュースは吉田氏も鬼怒氏も知らなかった。

前回同様、生データをユミさんに提供することとの条件付きで録音撮影OK(シャッター音のするカメラは禁止)という方針。「どうせなら隠し撮りの悪い音・画質ではなく堂々と奇麗に録音・撮影してもらった方がいい」というユミさんの考えは正に理に適っている。そうやって6月の来日時に各地で録音・録画された素材から50セット限定CDR+DVD12枚組「アルトー・ビーツJapan Tour 2012 Archive Box」を制作・販売。この売り上げが来年のアルトー・ビーツの来日資金になるというからバンドにとってもファンにとっても一石二鳥。


二部構成の最初は鬼怒無月氏のギターソロ。ソロは久々だと言う。私も鬼怒氏の演奏を観るのは5年前の灰野さんとのデュオ以来。1曲目はディレイを活かしたアンビエントなナンバー、2曲目はディストーションを深くかけたハードロック風ソロ。よくあるメタル系のライトハンド奏法を一切なしに全てピッキングする速弾きが素晴らしい。30分のソロの後、4人で「ステートメント・ヒールズ」再現ライヴ。いきなりサムラ・ママス・マンナ風の激烈変拍子ナンバーに驚愕。ユミさんらしい大らかなヴォーカルと吉田氏のオペラチック・ヴォイスの絡むナンバーやアルバムでは12声重ねたという曲を披露。このアルバムは1999~2006年主にクラシックのアーティストに提供した曲を吉田氏のドラムとヴォイス以外の全楽器とヴォーカルをユミさんの多重録音で演奏したものだが、それをバンドで生演奏するのだから原曲とは全く違うものに生まれ変わっている。

▼この曲を演奏する前に衣装を着替えるという凝りよう。



後半はユミさんと吉田氏のデュオ~ソロ~カルテットで1時間たっぷりYumi’s Worldに浸る。吉田氏のプレイは何度も観ているがRUINS Alone以外は殆どが即興に近いセッションだったので、譜面のある曲をバンドで演奏するのを観るのは初めてかもしれない。ドラムの傍の席だったせいもあるがその凄まじいドラミングに打ちのめされた。鬼怒氏はストラトなのにフリップ風のサスティーンの効いた音を出すので不思議だったが、ギターのピックアップはハムバッカーだった。デヴィッド・クロス(元キング・クリムゾン)、ヒュー・ホッパー(元ソフト・マシーン)、ジェフ・リー(元ヘンリー・カウ)、スティーブ・ハウ(イエス、エイジア)と共演してきたユミさんの作る曲だから本質的にプログレッシヴ・ロックの芳醇な香りが滲み出てきて、2時間の間荻窪がカンタベリーにワープした。

▼アンコール・ナンバー。ソロ・アルバムのタイトル曲で元は2台のピアノのために書かれた曲。2006年British Composer Awards最終候補曲でもある。



▼2007年ヒュー・ホッパーとのデュオHUMIの映像



溢れ出る
詩情に染まる
サテンの夜

マサカーとアルトー・ビーツ両方が来日することになったら2013年は面白い。
コメント
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