A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

K2/CARRE@幡ヶ谷 FORESTLIMIT 2013.1.5 (sat)

2013年01月07日 01時32分28秒 | 素晴らしき変態音楽


【Spilit Alive vol.2】
” electron metals crush !!! “
【LIVE】K2/CARRE【DJ】SUNGA/napalm kataoka

forestlimitが運営するDIYメディアレーベル”grayfield”第一弾リリースアーティスト”K2″をお招きしてリリースパーティを開催します!!!! K2はKING OF METAL JUNKと評される激ラウドなハーシュノイズ。スプリットライブのもう一翼は日本のインダストリアルミュージックの急先鋒”CARRE”。DJにベース ミュージックを独自な世界観で拡大していくsunga (corehead)を配し、電子と金属が衝突し、唸り、捻れ、フロアに音となり響き渡る様をぜひ体験下さい!!!(FORESTLIMIT HPより)

このライヴに参戦できたのは阿木譲のお陰という新年早々偶然の賜物だった。

アナログ盤が聴けるようになったので早速レコ屋巡りを始め、先日の新宿MARZでのいずこねこのライヴが昼の部だったのでそのあと10数年ぶりに西新宿を探索してみた。Vinyl Japanは来日アーティストのチケットを買いに行くので営業しているのを知っていたが昔通った無数のレコ屋がどうなっているか期待と不安を胸に記憶を便りに彷徨った。まず創業40数年の老舗新宿レコードへ行くときちんと営業していた。しかも名物店長マダム藤原さんと旦那さんがカウンターにいらっしゃたのに感動。在庫はさすがにCDが90%になったが欧米のレアなプログレ/ハードロックの並ぶ品揃えは昔のまま。アナログしかも日本のインディーズ目当なので4列しかないアナログ盤エサ箱の端の一列の邦楽コーナーを期待せずチェック。どこにでもありそうなJ-Rockやメタル系が並びこんなものかなーと思いつつレコヲタの本能で直感的に最後の10数枚に何かあると感じた。手にした茶色封筒の重量のある2枚組LP。むむこれは2年前に初CD化されたオムニバス「沫 FOAM」のオリジナル盤の未開封新品。価格は\2000。LPもCDも持っているがこの値段で入手出来るとはラッキーと喜んだのも束の間、次のLPが昔吉祥寺ジョージアの壁に飾ってあった緑ジャケと同じく灰色ジャケ。何とヴァニティ・レコードのオリジナル盤が2枚も!価格はどちらも2000円。これも未使用新品だった。

▼BGM「Background Music」vanity 0008 (1980)


▼TOLERANCE「DIVINE」vanity 0012 (1981)


以前特集したようにヴァニティ・レコードは大阪の先鋭的音楽雑誌「Rock Magazine」編集長の音楽評論家阿木譲主宰の自主レーベルで1978~82年の間にアーント・サリーの唯一のLPを始めLP11枚、EP3枚、カセット6本、雑誌付録ソノシート12枚リリース。アーント・サリー以外は匿名性の高いテクノ/エレクトロ/アヴァンギャルド系ユニットでプレス枚数は数百枚、アーント・サリー以外は再発されておらず中古市場で高値で取引されている。それが新品で眠っていたとは驚きである。果たして30年間エサ箱で無視されてきたのかデッドストックが発見されたのか判らないが奇蹟としか言いようがない。

感激のあまりツイッターで呟いたら「それは欲しい」と返信が来たのがK2=草深公秀氏だった。ツイッター上で何度かやり取りしたこともあり、最近Facebookでも友達になっていたので「在庫がまだあるか新宿レコードに確認します」と返して翌日新宿レコードに電話。残念ながら在庫はないとの返事を草深氏に伝えたら「今日のライヴ来ますか?」とのメッセージ。草深氏は現在静岡がんセンターの医長で三島市在住なので東京でライヴを観る機会は滅多にない。対バンは注目のテクノイズユニットCARRE。これは阿木譲のお導きだ、行くしかないと急遽参戦することになった次第。ちなみにどちらも今年のノイズ福袋に入れたのも何かの縁か。

先着20人限定でK2のCDRプレゼントとあるので早めにFORESTLIMITへ。10人くらい客がいた。顔見知りのCARREのMTR氏に挨拶するとヴァニティLPの件をツイッターでチェックして気になっていたとのことでここでも阿木譲の影が。ヴァニティ・レコードのSympathy Nervousが現在も活動中で最近海外のレーベルから初期未発表音源LPをリリースしたことを教えてもらう。発売元がクラブDJ向けレーベルなのでノイズ/アヴァンギャルド系しショップ&ファンには全く知られていない。これまたいい情報をゲット。阿木さん、ありがとー!

DJのSUNAGA氏がプレイする先鋭的な音響の中CARREからライヴ開始。NAGとMTRの二人組で初めて観たのはヘア・スタイリスティックスのイベントだった。最初の印象はノイズというよりテクノだったがヘアスタとの共演や映像とのコラボなど何度も観るうちにこれが新世代のノイズ・ミュージックの在り方だと確信するようになった。オールドスクール・ノイジシャンのようにエフェクターを並べるのではなくヴィンテージEMSシンセとギターというアナログ楽器と最新デジタル機器を組み合わせたサウンドは単なるテクノイズではなくノイズの伝統を新世代の感性で活かした独自のもの。暗闇に近い照明の中淡々と雑音をクリエイトするスタイルは美川俊治氏が言う「ノイズ高齢化問題」に対するひとつの回答だと言えよう。


(撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)



そのままK2のライヴ。1981年から活動するベテランで故MSBR田野幸治氏主宰のノイズ専門誌「電子雑音」の編集・寄稿者として名が知られている。電雑で本格的にノイズの世界に足を踏み入れた私には良き旅先案内人であり素晴らしきノイジシャンであった。ノイズの意味についてはいつか別項で考察したいと思うが、所謂ジャパノイズのルーツはメルツバウ=秋田昌美氏に集約されると思う。ひとり(最初は水谷聖氏とのデュオ)で大量の機材を繋ぎ騒音を創造するスタイルを世界で最初に知らしめたのはメルツバウではなかろうか。そのスタイルに倣って全国各地に有象無象のノイジシャンが生まれたのが世界に誇るジャパノイズの特異性だと思う。時と共に自然淘汰されたので現在活動している人たちは間違いなく本物だといえる。

K2のサウンドは無数のおもちゃ箱をビルの上から投げ落とすように雑多な音響が盛り込まれた目紛しい展開が特徴で俗にハーシュノイズと呼ばれるジャンルの中でも喧しさと過激さでは群を抜いている。自らのレーベルKINKY MUSIC INSTITUTEから大量の作品をリリースしているがおススメはCD4枚組「Sexencyclopedia」(2001)。ドクターK2による雑音治療の特効薬は余りの喧噪故にiPodなどで聴くと逆効果で事故ること請け合い。ヘッドフォンで安静の上診療を受けるべし。初めて経験する生演奏は20近いエフェクターを並べたまさにオールドスクール・スタイルで大音量の電子雑音コラージュを展開。一見ユーモラスなずんぐりした姿体を揺すって繰り出すアクション・ノイズにはとても安静にしていられない。超多忙な医師なので年2回しかライヴができないという草深氏の貴重な生演奏を体験出来たのはホントに幸運だった。





最後にK2+CARREのセッション。CARREは自前の巨大ウーハースピーカーを持ち込み地響きする重低音を出す。K2の過激なサウンドに普段はクールなCARREの二人が珍しく激しいアクションを見せる。ノイズ×2=10000くらいの壮絶で芳醇な空間に溺れた。





中原昌也氏も観に来ていたので新年の挨拶。今年は暮らしが楽になればいいね。

阿木譲
逮捕されても
福の神

帰宅してK2のCDRをかけたら突然パソコンがフリーズした。まさに執念の籠ったサウンドである。

ちなみに西新宿はVinyl Japanと新宿レコード以外はヴィジュアル系とブート屋ばかりだった。
コメント
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