【U.F.O.CLUB 17周年記念 風狂と夜の会】
LIVE; 宍戸幸司(割礼), 犬風(大阪), 壊れかけのテープレコーダーズ, 余命百年, 晩餐
1月27日をもちましてufoclubは17周年を迎えます。誠にありがとうございます!
それを記念致しまして、1月は特にスペシャルな内容のイベントを企画致しまして皆様のご来場をお待ちしております。
何卒、よろしくお願い致します!!!
(UFO CLUB Homepageより)
UFO CLUB....アンダーグラウンド・ロックの総本山として全国からの注目を集め続けている、東京・東高円寺のライブ・バー。赤と黒を基調としたサイケデリックな内装は「ゆらゆら帝国」の坂本慎太郎氏が手がけました。タイムトリップ感覚を満喫できることうけあい。豊富なドリンクメニューも自慢。
(LiveWalkerより)
UFO CLUBに初めて行ったのは2001年光束夜と割礼の2マンだった。出演者もそうだがお客さんが皆70年代風ファッションで高円寺らしい不思議空間というのが第一印象だった。高円寺には学生時代から度々訪れており今の円盤の辺りにあった雑誌DOLL経営のパンク・バー、火災で閉店したライヴハウス20000V(移転して二万電圧となる)、マニアックな品揃えの貸レコード屋パラレルハウス、南口徒歩3分の中古楽器屋、ビルの地下のインド料理屋など懐かしい風景が蘇ってくる。80年代当時高円寺はパンクスの街と呼ばれ貧乏学生や売れない芸術家・作家が多く住んでいた。家賃や物価が安かったこともあるがむしろ彼らは好んでこの街を根城にしていたのは間違いない。
OTHER ROOMのパートナーの高島君も高円寺から歩いて15分くらいのアパートに一人暮らしをしていた。大正の香り濃い古風な建築で風呂トイレ共同、部屋は8畳くらいの1Kで今でいえばワンルームマンションだが朝のテレビ連続小説に出てくる下宿屋そのものだった。高島君はその一室に古道具屋で買った机と棚だけを置きジャンゴ・ラインハルトのLPとコクトーやセリーヌの小説を友に暮らしていた。時々泊まりに行ったが布団一枚敷けば一杯の部屋にどうやって二人寝たのか覚えていない。
当時国分寺に古着屋や古道具屋がたくさんあり月に1回は買い出しに行った。今ではプレミア付きのテスコやグヤトーンなど60年代のビザールギターが2万円前後で投げ売りされていた。高島君に「国分寺にギターを買いに行く」と言ったら「青いテスコは僕が買うからダメだよ」と言われ仕方なく茶色の4ピックアップのグヤトーンを購入した覚えがある。あるとき高島君が見たことのないセミアコギターを持ってきたので何処で手に入れたか聞いたら高円寺北口の質屋と教えられ早速探しに行ったが見つからず、売ってくれと交渉したら5万円と言われ諦めた。多分彼は2万円くらいで購入したのだと思う。
OTHER ROOMは2年くらいで活動停止したが高島君との付き合いは続いた。就職してからも時々連絡を取り「AVの音楽制作をしている」とのことだったが間もなく音信不通になった。90年代半ば別のバンドで20000Vに出演した時表の商店街でばったり彼と会った。綺麗な女性と一緒だった。5年以上の付き合いの間お互い女の子の話をしたことはなかったのでちょっと意外だった。どうしてる?と聞いたら相変わらずとの返事。立ち話だったので挨拶程度だった。以来彼とは連絡を取っていないない。
高円寺といえばどうしても高島君のことを思い出す。仙台出身だから故郷へ帰って家を継いでるかもと思うがもし高円寺に住んでいたらUFO CLUBは恰好の遊び場だっただろう。ここには時代を超越した独特の空気と新たな発見が満ちている。恐らく私も一番多く通うライヴハウスだろう。ここで出会って名前も知らぬまま知り合いになる場合も多い。
余命百年の山入端佳太との出会いもUFO CLUBだった。彼が高校生だった頃知り合い好みが似ていてUFO CLUB以外にも色んなライヴ会場で遭遇した。大学生になりライヴ活動していると聞いていたがこの日やっと観ることが出来た。アグレッシヴなヘヴィサイケと瑞々しいポップナンバーを行き来し最後に眩い輝きに至る。今まで体験した数多くのライヴを吸収し咀嚼して自分たちの世界を産み出している。こうして新世代が育って行くのだろう。荒削りながらダイヤの原石の煌めきが感じられた。
(撮影・掲載に関しては出演者の許可を得ています。以下同)
2番手は犬風。大阪出身という予備知識しかなかったが開始前に女性客が多数ステージ前に座り込む。バンドかと思ったらアコギの弾き語り。いきなりハイトーンヴォイスのシャウトで心を掴む。か細い囁き声と清志郎を思わせる高音の叫唱。普段弾き語り系は余り聴かないが犬風の演奏にはそれだけじゃない独特のアシッド感があり魅惑的。昨年下山(GEZAN)と共にツアーをした時のライヴを収録した5枚組CDRが販売されていた。
3番目はお馴染み壊れかけのテープレコーダーズ。コモリ(vo.g)と遊佐(org)も相当のライヴ好きで様々な会場で姿を見かける。毎回終演後に外でフライヤー配りをして数多いライヴの告知をする。そのフットワークの軽さが演奏にも反映されている。メジャーでも通用しそうなポップセンスが光る楽曲と裸足で時に激しく爆発するパフォーマンスを見せるコモリ+紅一点の清楚な存在感が心を奪う遊佐+変幻自在なリズムセクションはアンダーグラウンド界に輝く太陽のような存在。ニューシングル「踊り場から、ずっと/羽があれば」が完成、2月28日のワンマン・ライヴ「夢で逢いましょうVol.12~羽のない歌」で販売開始とのこと。
ライヴハウスで知り合った人の中には割礼好きが多い。かくいう私も2001年初UFO CLUBで観て以来年に最低2回は観ているが、今年結成30周年を迎えるベテランでありながら結成当時同様小規模のライヴハウス廻る地に足がついた活動は本来の"インディペンデント"を象徴する希有な存在である。宍戸幸司のソロを観るのは初めて。物販で販売されているソロCDRで演奏自体は聴いたがUFOのステージにひとり佇みバンドと全く変わらない大らかでゆったりした歌を聴くのは至福体験だった。ギターソロがない分楽曲の骨格が剥き出しになり「歌」の持つ無尽蔵のパワーが実感出来た40分だった。2月20日に高円寺HIGHでBorisと下山(GEZAN)をゲストに"割礼 結成30周年・「ネイルフラン」「ゆれつづける」リイシュー盤発売記念ライブ"が開催される。宍戸も高円寺に魅せられたひとりに違いない。
対バン形式のライヴだと目当のバンドが終わると帰る客が多い。この日も宍戸が終わると客席が淋しくなった。しかし私はイベントは可能な限り最後まで観ることにしている。未知のバンドやミュージシャンに出会えるチャンスを逃したくないから。特にUFO CLUBの企画は一見脈絡がない組み合わせでもUFOならではの厳選されたブッキングでハズレがない。晩餐は何の事前知識もなかったが「出会えてよかった」と心から思える素晴らしいバンドだった。サウンドチェックでドカドカ叩きまくるドラムとディストーション・ギターが響いて来たので喧しいバンドかなと想像していた。カーテンが開き轟音のハードロックが鳴り響く。ギターが速弾きしまくりベースは重低音をうねうね這い回る。何よりもドラマーが凄い。ボンゾやイアン・ペイス等70年代ハードロックそのままの手数が多い超迫力の演奏に呆気にとられる。それをヘヴィメタ系ではなく中央線住人風トリオがやるのが面白い。メタルは様式美に囚われがちだが晩餐はオリジナル・ハードロック本来の自由度と柔軟性を発揮する。ラリーズ風に深いリバーヴをかけたヴォーカルも味わい深い。ドラムソロをフィーチャーした10分に亘るインストはベック・ボガート&アピスを彷彿させた。オヤジロックに新たな命が吹き込まれ進化しているのに感動する。
高円寺
ディープな香り
魅せられて
これだけユニークなライヴハウスが17年も変わらぬ個性を保ったまま存在していることが高円寺マジックなのかも知れない。